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  • 2022.09.22

画像生成AIと著作権を弁護士が解説 Stable Diffusion流行やmimic炎上

Q3.画像生成AIでつくられた画像は、誰に著作権が発生する?

Q3.画像生成AIでつくられた画像に著作権は発生しますか? その場合、著作権者は誰ですか?

人間=利用者に「創作意図」と「創作的寄与」があったかによって判断されると考えられています。言い換えると、人間がAIを道具として利用したにすぎないのか、あるいはAIが自律的に生成したものか、です。

利用者に生成物の著作権が発生しやすいと考えられるのは、AIに具体的な指令を与えたり、出てきたものを加工したりした場合です。ただし、その利用者が「AIに描かせた」とは言わず、自分で描いたようにふるまえば、たとえそうではなくても利用者の著作物として扱われてしまうのではないか、という指摘はあります。

なお、画像生成AIの利用規約に「画像の著作権はツール開発者に移転する」といった記載があり、利用者が同意している場合は、それに従うかたちです。

Q4.画像生成AIでつくられた画像が、著作権侵害になる場合もある?

Q4.画像生成AIに出力された画像が、既存の著作物と同一だったり類似していたりする場合、著作権侵害に当たりますか? その場合は、誰が責任を負いますか?

画像生成AIで既存作品に似た生成物が出てきた場合であっても、それを生成するだけでは著作権侵害の問題が顕在化することは考えにくいです。実際上権利者の目にとまる可能性はほぼないためです。生成された画像を公表したり、商用利用したりした時に初めて著作権侵害が顕在化するでしょう(なお、刑事事件化するかについては、基本的にはいわゆる「親告罪」に当たり、著作権者の告訴が必要です)。

では、著作権侵害に当たる可能性があるのは、どういった場合なのか。それを判断するための論点は大きく2つあり、問われるのは「類似性」と「依拠性」です。

類似性は読んで字の通りで、法的には対象となるイラストの「特徴的表現」が似ているかどうかが論点になります。アイデアの類似は認められますし、「画風が似ている」や「あのキャラクターを意識している」とわかるだけでは侵害には当たりません。

特にイラストの類似性は個別判断の要素が強く、「Aという裁判で類似性ありと認められた」ことから、「Bという事例でも認められるだろう」とはっきりとは言えないのが、論点を難しくする理由の一つでもあります。

こと画像生成AIに関しては「依拠性」──他人の著作物に基づいて(依拠して)創作しているかどうかの判断が難しいところです。

たとえば「Stable Diffusion」では、学習した画像の一部が公表されているようですが、このような画像生成AIにおいて、利用者が該当する画像を認識していれば依拠性が肯定されるとも考えられそうです。ただ、学習データが膨大であればあるほど、該当する画像を認識していたと言えるかは難しくなりそうです。また、利用者自身がAIにデータを読み込ませていない場合は、どのような事情があれば元のデータへの依拠性があったと言えるのかは曖昧で、現状でも議論が詰まりきっていないところです。

ただ、開発者がAIを学習させてその利用を一般向けに解放している「Stable Diffusion」や「Midjourney」であっても、利用者が意図的に作者や作品を指名するコマンドを入力して画像を生成した場合はどうでしょうか。「尾田栄一郎、ワンピース」などのコマンドを入力したところ、ルフィそっくりの画像が出てきた場合、(どのイラストに依拠しているかの問題はあるにせよ)利用者に依拠性が認められる可能性はあるでしょう

また、mimicのように利用者が自ら画像を読み込ませ、その画像と類似するものが生成された場合には「依拠性あり」と言えそうです。

以上が画像を生成した利用者の責任です。これに対し、画像生成AIツールの開発者については、既存の作品に類似するものが出てくる確率が低いツール、言い変えると「たまたま似ているものが出てきてしまう」レベルであれば、責任を負う可能性は低いのではと考えられます。

ただ、いずれにしろ、著作権侵害の問題に関して、日本の裁判所が認める損害額は伝統的に低い水準であることは付記しておきます。たとえば、「Twitterへ不正に画像がアップロードされなければ、著作権者にはいくらの利益があったのか」といった実損をベースに考えることが一般的です。逆に言えば、「Twitterにアップロードさせるライセンス料を取るならいくらだったのか」と問われても、なかなか難しいでしょう。著作者の心理的な被害への賠償もありますが、数十万円など高額とならないことが多いです。

類似性と依拠性とは別のレイヤーでの議論として、日本のインターネット上で“許される模倣”と“許されない模倣”についてはまた少し話は変わってくるのですが……ここは前述の「フェアユース」的な概念が日本で採用されるかどうかという点とも関わってくると考えます。これは今後お話する機会もあると思います。

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