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  • 2023.08.19

トレカバブルの裏側……闇オリパに価格吊り上げ「業界団体も存在しないからルール無用」

法律も業界団体も及ばない無法地帯 オリパは賭博罪に当たるか?

結果として、一部のレアカードが数十〜数百万、ときに一千万を超える値段で取引されるようになっているポケカだが、M氏は“吊り上げ師”とカードショップの結託についても指摘する。

「オープンチャット以外にも、カードショップの店長たちともつながりがあって話を聞くことが多いんですが、そういう人たちいわく、当然のように大規模なオープンチャットとつながっていて相場をつくるというのはよくあるそうです。

それこそPSA暴落騒動の前にPSAセールを行って抱えていた在庫を放出し、自分たちだけ売り抜こうとしていたショップもありました。ショップとつながりのある“吊り上げ師”が価格を上げてからカードを売りさばいて、暴落後に狼狽売りされたPSA10カードや素体を再び買い集めることで、放出したカードを回収しながら手元には差額の現金も残る。“吊り上げ師”から情報を仕入れていなかったところだけが高値で回収してしまって損をする。今はもう、そういう状況ができあがっています」(M氏)

つまり、扱っているのが株式といった金融商品であれば違法となる“相場操縦”のような行為が、カードゲーム界隈ではまかり通っているという。二次流通市場を通じてTCG文化を盛り上げていくべきカードショップが、もし本当に“吊り上げ師”と結託して高額カードの相場を操っているのだとしたら、それが道義にもとる行いであることは間違いない。

また、数多くのカードショップはもちろん、M氏のような個人でも販売しているオリパについては、その販売方法自体が賭博罪に該当する可能性も指摘されている。

22年2月には経済産業省が発表したNFTに関する資料の中で「(フィジカルな実態をもつ)トレーディングカード*のオリパ?」が「賭博罪該当?」とされるなど、まさに現状ではオリパの適法性が問われている。

購入額以上の封入物を保証する福袋形式を採用するなど、オリパを適法で販売する方法は存在している。しかし、実際には過剰にハイリスク・ハイリターンであったり、そもそも当たりが入っていない悪質なオリパの存在も指摘されている。S氏もそんな疑惑の色が濃いオリパを購入したことがあるという。

「確定ではありませんが、オリパについてはほぼ間違いなく詐欺行為が横行していると思っています。僕自身、少しだけしか回されていない状態でショップのオリパを買い占めたこともありますが、目玉となるレアカードが全然入っていなかったことが数回あって。Twitter上で個人が販売しているオリパも怪しいので、よほど信用できるお店や人でなければオリパは買わないほうがいい」(S氏)

オリパにまつわる詐欺まがいの行為は、ネット上でも多くの人から被害の声などがあがっている。

「YouTuberのヒカルさんが祭りクジを全部引いて当たりが入っていなかった動画でバズりましたが、オリパも同じようなもの。僕自身オリパ販売業をやっているけど、ほかが還元率30-40%が多い中、還元率50-70%に設定して販売すると良心的ということでお客さんからは好評だったりする。そもそも業界団体などが存在しないから、今はルール無用の状態です」(M氏)

M氏が言う還元率とは、1万円のオリパを100口販売した場合、還元率70%であれば100口全体で70万円相当のモノが入っていることを指す。当然100口の中には1口総額1000円にも満たないハズレもあれば、1口で5万円以上の相場のカードが入っている当たりも用意されている。販売者側は、販売額から還元率を引いた30%が利益となる(人件費や梱包・発送といった経費は除く)。

ただし、ルール無用だからと言って当然何をしてもいいわけでなく、先の賭博罪のように法律に抵触する懸念も大きい。

「面白いのは、大手全国チェーンのカードショップが販売するオリパを引いてみると、一番の大当たりがちゃんと販売額の20倍を超えないように調整されているんですよね。1000円のオリパだと大当たりのカードでも2万円以上の相場にならないようになってる。

これはあくまで予想ですが、違法性などを指摘された際に『うちはルールを守っている』ということで販売を継続するための理由づくりだと思うんです。もちろん、そんなの無視しているショップもたくさんありますが」(M氏)

M氏が言及しているのは、景品表示法に基づく景品規制での「一般懸賞における景品類の限度額」のことだ。同規制においては、5000円未満の懸賞で景品類限度額の最高額は取引価格の20倍まで、5000円以上の場合は10万円までと定められている。

しかし、前述の通りそもそも賭博罪該当が疑われ、10万円以上とされる高額カードが当たりに掲げられているオリパが世にあふれているのを見ると、それもまた一時的な苦肉の策である弥縫策(びほうさく)に過ぎないように感じられる。

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