ホラーアニメ『アメイジング・デジタル・サーカス』が2.5億回再生される背景と凄さを解説
2023.12.17
近年の国内インディーゲームのヒットは、「小規模でも面白い作品が出てきた」という話ではない。
出版社や異業種パブリッシャーの参入、大手IPとインディースタジオの関係、そして旧フリーゲーム文化の再浮上まで、インディーゲームシーンの現在地を探る。
クリエイター
この記事の制作者たち
開発ツールの普及やPCゲーム市場の拡大により、ますます巨大化するインディーゲームシーン。
なかでも国内インディーゲームについては、『8番出口』(2023)の大ヒット以降、明らかに見られ方が変わったように感じる。個人や小規模チームが制作したゲームがSteamやNintendo Switchで話題を集め、配信者やVTuberの実況を通じて広がり、時には映画化やメディアミックスへと接続していく。
もちろん、面白いゲームが突然バズること自体は昔からあった。しかし近年の国内インディーゲームを眺めていると、単発のヒットだけでは説明しきれない変化も見えてくる。テキストADVの再浮上、配信文化を意識したゲーム設計、出版社や異業種パブリッシャーの参入、そしてフリーゲーム文化の再発見。
そこで今回は、近年登場した国内のインディーゲームのなかから話題作をピックアップ。『8番出口』以降の シーンで何が起きているのか、どんなタイトルが遊ばれているのかを、いくつかのトピックに分けて見ていきたい。
目次
- テキストアドベンチャーは何故、インディーゲームシーンで強さを取り戻したのか
- “配信で見られるゲーム”から、“配信後に買われるゲーム”へ
- 出版社発インディーゲームは、メディアミックスの夢を見る
- 『パルワールド』だけでは見えない、国産インディーの広がり
サウンドノベルやPCアダルトなど、昔から日本のゲームカルチャーにおいて、テキストアドベンチャー(ADV)は重要なポジションを担ってきた。
海外においてもフォロワーは存在し、『ドキドキ文芸部!』(2017)は明確にギャルゲーの文脈を逆手に取ったサイコホラーとして高い評価を得ているし、同じくカルト的な人気を誇るノベルゲーム『Milk inside a bag of milk inside a bag of milk』(2020)の開発者であるニキータ・クリュコフは東京に移住し、日本語を学びながらビジュアルノベルを制作している。
『Milk inside a bag of milk inside a bag of milk』
開発費用を抑えられるなどの理由から、インディーゲームシーンにおいてテキストADVは多くつくられてきた。近年の注目作を振り返りつつ、どういった傾向があるか見ていこう。
ひとまずヒット作を並べていくと『都市伝説解体センター』(2025)、『でびるコネクショん』(2025)、『ファミレスを享受せよ』(2023)などが思いつく。どれもかなり純粋な出来のテキストADVであり、ミニゲームやアクションといった要素は少ない(ポイントクリックや穴埋め問題といった多少の遊びは存在する)。
『都市伝説解体センター』は、往年の講談社ミステリの香りをまといながらも、SNSや都市伝説を題材にすることで、はじめてミステリに触れる世代にも訴求した。
『でびるコネクショん』はムチムチした外見の悪魔を"わからせる”というやや性的なモチーフを彷彿とさせつつも、縦横無尽に展開する骨太なストーリーテリングがウケており、発売前も後もインディゲーム展示会「東京ゲームダンジョン」の試遊台に長蛇の列ができている。
『ファミレスを享受せよ』は青と黄色を効果的に使った素敵な画面構成で、ファミレスでダラダラ過ごすという誰もが思いつくが着地が難しい設定にSFを盛り込むことで、納得感のある短編を構築した。
『でびるコネクショん』
また、これら3作のクリエイターは本作に取り掛かる以前から長く創作活動をし、少なからずファンダムを形成してきたという点が共通している。
他には『アクアリウムは踊らない』(2024)、『文字化化:Homicipher』(2024)、2026年に最新作『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』がリリースされた「パラノマサイト」シリーズなどにも注目しておきたい。
「パラノマサイト」はスクウェア・エニックスのタイトルであり、定義としては大手の作品に該当するだろうが、定価や制作スパンなどから見るに低予算プロジェクトであるため、本稿で取り扱うことに決めた。
『パラノマサイト FILE 23 本所七不思議』
ADVとは話が反れるが、近年は大手ゲーム会社の小規模開発部門がインディーサイズの作品を発表したり、インディークリエイターにIPを貸してゲーム開発を委託するケースも増えてきた。
『Blasphemous』で知られるインディースタジオのThe Game Kitchenが『ニンジャガイデン』シリーズのスピンオフである『NINJA GAIDEN:Ragebound』(2025)を開発したり、『Dead Cells』で知られるEvil EmpireとMotion TwinがKONAMIからIPを借り『Castlevania:Belmont's Curse』を開発している最中だ。
大手の人員を稼働させると予算観が合わずに頓挫するプロジェクトを国内外のインディースタジオに外注するというこの流れは、今後も増えていくことだろう。
『NINJA GAIDEN: Ragebound』
話を戻すが、大手の新作がオープンワールドや3Dアクションといったヒットが見込めるジャンルに移行した昨今、テキストアドベンチャーはむしろインディーから中堅クラスの創作にシフトしたように感じた。
また、そのなかでも純粋なテキストと画像のみのゲームに留まらず『Chill with You Lo-Fi Story』(2025)などの作業用アプリにも注目したい。こちらはサトネという女子大生と一緒に作業をするというゲームの皮を被った管理ツールなのだが、ご褒美としてストーリーテキストが読めるようになっている。
ここまで見ると、近年の国内インディーゲームのヒットは、単に「小規模でも面白い作品が出てきた」という話だけではないように思える。
では、その作品を誰が支え、どう売り、どの文化圏へ届けているのか。ここからは、出版社や異業種パブリッシャーの参入、大手IPとインディースタジオの関係、そして旧フリーゲーム文化の再浮上から、国内インディーゲームの現在地をもう少し掘り下げていく。
やはり国内においても、配信文化を意識し、ストリーマーのあいだで流行する仕掛けを盛り込んだタイトルは目立つ。
『めっちゃカメレオン』
この文脈での直近のヒット作と言えば『めっちゃカメレオン』(2026)だろう。
ここから先は、KAI-YOU Premium会員限定です
残り文字数
3,025 文字
残り画像枚数
16 枚
記事の続きでは、以下のトピックをお楽しみいただけます
※初回登録の方に限り、無料お試し期間中に解約した場合、料金は一切かかりません。
様々なジャンルの最前線で活躍するクリエイターや識者を中心に、思想や作品、実態に迫る取材をお届け
様々な記事の中から編集部で厳選したイチオシ作品をご紹介
「KAI-YOU Premium」 3代目編集長/ラッパー
現代の日本の音楽シーンを語るなら、ボカロ文化は不可欠。2020年代のボカロ曲において、音楽的な独自性はどこにあるのか? 柴那典さんが「MAJ2025」受賞候補曲から考えます。
ライター
『ブルーアーカイブ』の青い色彩設計、そしてエデン条約のストーリー。この2つを柱に日本のサブカルチャーがアジアにどんな影響を与えたか、韓国でどう花開いたかを紐解きます
ライター
ぶいすぽっ!所属の蝶屋はなびさん。普段から前向きな姿勢を崩さない彼女のひたむきさはどこから来ているのかうかがいました。格ゲートークも充実!
編集
語られざる、違法な海賊版トレーディングカードゲームの歴史。世界広しと言えども、この解像度でその歴史を紡げる人は、SF作家・ゲームコレクターである赤野工作氏しかいない。
編集
結局、同人誌って違法なの? 実在する「VTuber」の二次創作、もしかして肖像権侵害や侮辱罪に当たっちゃう? 令和版、同人文化への最新の法的動向を弁護士に根掘り葉掘り聞いてます。
編集
日本語ラップを、構造的に理解する──音楽としてでもライフスタイルとしてでもない、新しいヒップホップの解釈を提示してもらっています。
編集
オタク/ラップのトップランナーだからこそ語れる“ニコラップ”の世界。懐かしいだけじゃなく、今に接続される話になっています。
ライター・編集者
減らないVTuberの活動休止について、根本的な原因を九条林檎さんに聞きました。推しのVTuberがいる方は、ぜひ読んでもらいたい内容です。