Interview

  • 2025.07.21

“VRヒップホップ”を君は知っているか──VRChatで6年続くサイファーが生んだ新たなリアル

誕生して50年以上経ち、熟成を重ねて、国内でも新たな局面を迎えつつあるヒップホップシーン。目まぐるしく音楽トレンドが移り変わる中、ヒップホップコミュニティーがメタバース空間上にも広がっていることを知っているだろうか?

“VRヒップホップ”を君は知っているか──VRChatで6年続くサイファーが生んだ新たなリアル

ソーシャルVRサービスのひとつ「VRChat」では、毎週木曜の深夜にVR空間に集まってフリースタイルサイファーを実施しているコミュニティが存在する。その名は「Cipher Communication Circle(通称・C3サイファー」。

今回、VRChatを基点に精力的に活動するVRヒップホップユニット・CROWKのMCでもあり、日本のVRChatコミュニティ黎明期からC3サイファーを主宰してきたSeathree a.k.a. WisKさん(以下、WisKさん)に2時間におよぶインタビューを実施。

VRという新しい「地方」で芽吹くヒップホップの実像に迫る。

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「C3サイファー」主宰者のSeathree a.k.a. WisKさん。今回はインタビューもVRChat上で実施した。

目次

  1. VRChatのサイファーコミュニティ「C3」とは?
  2. 「俺、ヒップホップをろくに知らなかったんですよ」
  3. ゲーマーがヒップホップコミュニティを建てるまで
  4. C3サイファー誕生秘話「世界初 VR MCバトル主催」
  5. 6年続けた中で生まれたVRヒップホップシーン
  6. リアルのサイファーイベントからVRChatに来たケースも
  7. VRとリアルのフリースタイルの違い
  8. 「リアルはやっぱり憧れがある」現場で感じたVRとの違い
  9. VRヒップホップが「リアル」と認められる日は来るか?
  10. 目指すは10周年──VRChatという「地方」で待つ未来

VRChatのサイファーコミュニティ「C3」とは?

そもそも「C3サイファー」とはどんなコミュニティなのか。そこからお伝えしよう。

「Cipher Communication Circle(通称・C3サイファー)」は、VRChatで発足したヒップホップコミュニティである。主な活動は、毎週木曜の夜にVRChat上の専用ワールドでおこなうフリースタイルラップのサイファーイベント。現在コミュニティのDiscordサーバーには国内外問わず300人ほどの参加者がいる。

Youtubeのバトル用ビートやTypeビート音源を、ワールド内の動画再生プレイヤーで再生し、各自3-5人程度の輪をつくりフリースタイルラップをする。

入退場は自由。毎週20人から30人ほどのメンバーが、思い思いに自分のフロウを披露している。日付が変わる頃にはイベントはお開きだが、その後熱量高く深夜までサイファーを続ける者もいる。

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「C3サイファー」開催の様子。このように円となって現実のサイファー同様にフリースタイルを行う

現在、コミュニティ発足から6年目。ほぼ毎週続けているサイファーイベントの開催回数は300回を超えた。

他にもサイファーメンバーの1人であるryouryouさんが企画する「One Week Challenge」では指定のビートとお題で1週間以内に曲をつくり披露し、お互いのLyricやフロウに刺激を受け合う企画があったり、音源制作の機材相談に乗りあったり、Discordのボイスチャット機能を使ったサイファーをしたり、活動は多岐にわたる。

2024年秋には音楽即売会イベントM3に、有志メンバーでサークル出展を実施。活発にヒップホップを楽しんでいるコミュニティと言えるだろう。

OWC11視聴会

コミュニティが続く中で、実際にラッパーとして活動をはじめるメンバーも複数出てきた。

VR上でライブ活動や音源リリースをするユニットやラッパーは20組近く存在しており、主宰のWisKさんのVRヒップホップユニット・CROWKは結成5年目にして、川崎のCLUB CITTA'を中心に開催される音楽ライブイベント「Vの宴」に2回出演した実績を持っている。

もともと大阪・北海道で実際にMCバトルに参加していたゴンザレス下野など、リアルでラッパー活動をしていてVRChatに参入してきたメンバーも数割存在し、未経験からVRChatでラップをはじめたメンバーと切磋琢磨している。

VRというニッチな「地方」での局所的な盛り上がりを少しは感じてもらえたと思うが、次のセクションからはWisKさんに順を追って話を聞いていく。

「俺、ヒップホップをろくに知らなかったんですよ」

──「VRChat」でサイファーをはじめたのはどういった経緯だったのでしょうか?

WisK 俺、ヒップホップをろくに知らなかったんですよ。一時期、90年代後半から00年代くらいかな。日本でヒップホップが覇権を取るくらい流行った時代を通ってきたんですけど、俺は当時歌唱至上主義者の過激派だったので、ラップは全く聴かなかったんです。

──え、そうだったんですか!てっきりVRChatはじめる以前からヒップホップお好きなのかと思いました。

WisK だから、まずはVRChatをはじめたところから話しますね。

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