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  • 2025.05.29

ラッパーとなりシングルマザーとなったCharluが、音楽を失った日

ラッパーとなりシングルマザーとなったCharluが、音楽を失った日

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訪日観光客と近隣のオフィスで働く人たちで賑わう東京の恵比寿。地下にあるバーでメイクと衣装を整えたCharluは、インタビュー中、笑顔を浮かべながらも時折うつむき、どこまで過去のことについて語っていいのか逡巡しているように見えた。

その表情からは笑顔の裏にあるこれまでの苦悩と、そこから解き放たれ順風満帆な現在という両面を物語っているようにもうかがえた。

2024年6月29日、幕張メッセではひとりのラッパーが満面の笑みとパワーで会場内、そして画面越しで観る者を魅了していた。HIPHOPフェス「STARZ」でのことだった。

Kohjiyaの優勝で幕を閉じた「ラップスタア2024」。同シーズンに彩りと、もしやという期待感を抱かせたのは、敗者復活から見事に勝ち上がり、ファイナルでは惜しくも2位に終わったCharluだった。

【Charlu】RAPSTAR 2024 FINAL STAGE

20代前半のラッパーがファイナルステージの大半を占める中、29歳で、ふたりの子どもを持つシングルマザー。番組にかける意気込みは痛いほど伝わってきた。

聞こえてくるフロアからclap 愛を持つみんなにダブルtapCharlu「Lighter feat. Skaai & KM」

番組での反響が追い風となり、一躍シーンの最前線に躍り出た彼女は今、何を思うのか。

取材協力:AFTERLIFE 恵比寿

目次

  1. 血気盛んなMCバトルに単独訪れて、浴びた衝撃
  2. 音楽は常に、生活の中にあった
  3. 亡くなったおばあちゃんから教わった「四恩」
  4. 「サウンドは好きだったけど、不良っぽい子たちが苦手だった」
  5. シャルルがラッパーになった日
  6. MC正社員に誘われてバトルの世界へ
  7. 音楽を失っていった日々

血気盛んなMCバトルに単独訪れて、浴びた衝撃

Charluがラッパーとして活動し始めたのは、今では遅い部類に入る10代後半の時。

「カラオケでANARCHYさんの曲を歌ってた人がいて、カラオケだと歌詞が出てくるじゃないですか。それでかっこいいな、私もラップをやりたいなって思ったんです。それでANARCHYさんのライブをどうしても観たくなったけど、未成年だし、ツテもないからクラブには行けなくて……」

今でこそ当たり前になったが、10年前は未成年でも参加できる日中のヒップホップフェスは少なかった。ANARCHYのようなラッパーのライブを観たければ、深夜のクラブに行かなければならなかった。

「そしたら、昼間に『THE罵倒』が渋谷のWOMBで開かれて、そこでANARCHYさんのライブがあることがわかったんで、ひとりで行ったんです」

「THE罵倒」は、ボディタッチありというルールが物語っているようにMCバトルの中でも一際激しい闘いが繰り広げられる大会として有名だった。出場するラッパーの連れも多く、客席を巻き込んだ揉め事が起こったこともあるほど血気盛んなTHE罵倒、ひとりで観戦する未成年のCharluは相当浮いていただろう。しかし臆するどころか、その大会でラップにさらに興味を強めていく。

「それが年末で。初めて生でラップを観て、白熱してて面白かったんです。楽しい!って。それが2013年末のことで、年明けにラップってどうやったらできるんだろうって調べてたら、サイファーっていうのがあると知ったんです。私もやってみたいと思って行ってみました」

Charlu

当時、代々木公園で行われていた原宿サイファーに飛び込んだ。まだ地上波で『フリースタイルダンジョン』も始まる前の、アングラさの色濃い当時のヒップホップシーンにおいて、驚くような好奇心と行動力だ。

その根底にある音楽への強い希求は、彼女が幼い時分から育まれていったのだろう。

音楽は常に、生活の中にあった

ヒップホップと出会う以前、Charluには生まれた時から常に隣に音楽があった。

1995年、Charluは、東京は品川区で両親と7歳上の兄の4人家族のもとに生まれた。

幼い頃は、いわゆる天真爛漫な性格でしたね。従兄弟も含めて一番年下だからおばあちゃんに可愛がられて、フリフリがついた服を買ってもらってました。でも、私は男の子に憧れてたし、男の子になりたかったんですよね」

負けん気が強く、小学校に上がると休み時間には腕相撲をしたり、男の子と喧嘩ばかりしていたという。

もしかしたら、その跳ねっ返りは、幼いCharluが一方で抱いていた一抹の寂しさと全く無縁というわけではないのかもしれない

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