“VRヒップホップ”を君は知っているか──VRChatで6年続くサイファーが生んだ新たなリアル
2025.07.21
プロゲーマー、ストリーマー、インフルエンサーなど、かつてはそれを仕事になど考えられなかったことを生業とする人々が増え、珍しくなくなった現代──しかし、いまだ人が踏み込むのを躊躇する未知の世界は存在するし、同時に、自らの才能を頼りに未開の大地を突き進む人もいる。
クリエイター
この記事の制作者たち
サーニーゴさんは『ポケモンカードゲーム』(ポケカ)のプロプレイヤーだ。しかし、それは一側面に過ぎない。
プロプレイヤーとして企業にスポンサードされ、競技大会を中心に活動しているだけでなく、『ポケモンカードゲーム』を中心に取り扱った自身のYouTubeチャンネルでは登録者14万人以上を集める、ポケカシーン屈指のインフルエンサーでもある。
世界大会2位の入賞をはじめとする数々の栄光を収め、公式の認定する強豪プレイヤーの証「ポケカ四天王」にも選ばれている、ポケカ界の顔の一人といえる存在だ。
サーニーゴさん
一時期のバブル的な盛り上がりを経て、いまや大人気カードゲームの一角に上り詰めた『ポケモンカードゲーム』。とはいえそれを仕事にするというのはいまだにイメージがつきづらい。たとえばKAI-YOUでもよく取り上げている『マジック:ザ・ギャザリング』は、賞金の獲得できる大会が短期間で世界中で開催されており、日本人にもプロと呼ばれるプレイヤーが何人もいる。
だが、『ポケモンカードゲーム』は国内の最も大きな大会で優勝した場合でも、直接的に賞金を得ることはできず、プロリーグのようなものも存在しない。
そうした状況下にあって、『ポケモンカードゲーム』で生きていくというのはどういうことなのか──シーンの最前線に立ち、今まで誰も成し得なかった『ポケカのプロ』としての生き様を体現し続けるサーニーゴさんの覚悟とは?
目次
- 地元には『ポケカ』で遊ぶ相手がいなかった
- 『ポケカ』と歩んだ、激動の半生──遊ぶ友だちがいなかった
- 未開の大地を突き進む、サーニーゴのモチベーション
- 「同じレベルで取り組んでいるプレイヤーは10人いるかどうか」
- 過熱的なバブルを経た『ポケモンカードゲーム』の現在地
- 強さだけでなく、品格も求められる「ポケカ四天王」
- ”ポケカのプロ”の境界線はどこから?
- “カードゲームが強い”とはなんなのか
- 「ファンがいるからこそ頑張れる」
- 『ポケモンカードゲーム』を競技にすることの難しさ
- 『ポケカ』は人生を賭けるに値する──会社まで設立したサーニーゴ
──『ポケカ』との出会いはいつ頃でしたか?
サーニーゴ 小さい頃からパックを買ってカードを集めてはいたんですが、しっかり遊び方を覚えたのは小学校3年生くらいの頃にルールを解説しているTV番組を見てでしたね。その後夏休みに大阪で大きなイベントがあったんですが、そこに連れていってもらったのをきっかけにハマっていきました。
でも地元の徳島には遊ぶ相手がいなかったので、対戦の仕方を覚えたものの基本的にはずっと1人で遊んでいたんです。
──競技として本格的に取り組むようになったタイミングはいつだったのでしょう?
サーニーゴ ハマるきっかけになったイベントが、今でいうところのCL(チャンピオンズリーグ)レベルの競技的なイベントだったんです。あの雰囲気を体験してからずっと競技の世界への憧れは持っていました。いつか自分もと思って大会に参加するようになったんですが、全国大会に進む為の都道府県予選に挑戦して、いきなり決勝まで進むことができたんです。
※CL ポケモンカードゲーム チャンピオンシップシリーズのこと。東京や大阪などの都市で開催される公式の大型大会。
サーニーゴ 結果的には決勝で負けて2位になってしまったんですけど、ものすごく悔しくて来年もチャレンジしようって燃えてました(笑)。でもそうやって意気込んだ次の年の予選でも決勝で負けてしまって、そういう悔しい思いを何度もするうちにもっとプレイする機会をつくって、もっと頑張りたいって思いはじめるようになったんです。
──負けてしまったとはいえ、2年連続決勝まで勝ち進むという経験の中で、自分の強さを実感することはあったのでは?
サーニーゴ むしろその逆で、「こんなに勝てないのか……」って記憶ばかりなんですよ。
当時の徳島の県予選は全体でも8人くらいしか参加していなかったんですけど決勝で戦った子は、その後世界大会にも出場した子で。その時も、対戦してみてすごく実力差があるのを感じたんです。でも同じ年齢くらいの子どもがこんなに強いなら、自分も頑張ったら同じくらい強くなれるかもって、漠然と思ったんですよね。
──2位という結果では満足できなかったんですね。その後はどのようにポケカに取り組まれたんでしょう?
サーニーゴ 中学生になってからは同い年でポケカをやってる友達に出会えて、一緒に遊ぶようになりました。それが今も一緒にYouTubeをやってるまほうじんです。
進学した高校の裏におもちゃ屋があったので、そこに頼んで大会を開催してもらって、毎週参加していました。ほとんど僕とまほうじんの2人しか参加しないのに、たまにその片方すら来なくて、大会が成立しないなんてこともありましたね(笑)。
高三の受験期に一度辞めたんですが、受験が終わったらすぐにまほうじんに連絡して、また遊びはじめました。物心がついてからしっかりと『ポケカ』を辞めた時期というのは、そこの1年くらいだと思います。
──本当にずっと続けられているんですね。
サーニーゴ 『ポケカ』に関してはそうですね。でも、大学は途中で辞めてるんですよ。福岡の大学に進学したんですが、1年で中退してしまったんです。受験もしたし、勉強自体は嫌いじゃなかったんですけど、この頑張りが何に繋がるのか、その先でなにを目指したいのかわからなくなってしまったんですよね……。なので一回休学して考え直したんですが、結局その流れで辞めてしまいました。
それからは地元に戻ってフリーターをしていました。そのあと兵庫の専門学校に通って、卒業するタイミングでYouTubeをはじめたんです。関西を拠点に5年ほど活動して、東京に出てきました。
──かなり激動の人生を歩まれてきたんですね。
サーニーゴ 振り返ってみると自分でもすごいことをしているなとは思います(笑)。
──競技プレイヤーでありながら、YouTube活動も活発に行われていますね。YouTubeをはじめるきっかけはなんでしたか?
サーニーゴ 元々noteなどで発信はしていましたし、YouTubeもよく見ていたので、いつかやりたいなとは考えていたんです。単純にYouTuberという存在への憧れもありましたし、動画編集とかコンテンツづくりも好きだったから。
──ロールモデルのような人はいたのでしょうか?
サーニーゴ 探したんですけど、いなかったんです。プロゲーマーやYouTuberはすでに当たり前の時代だったけど、『ポケカ』でそれをやってる人は一人もいなかったんです。人に相談しても「『ポケカ』でやってくのは無理なんじゃないか」と言われることが多くて──じゃあもう自分で頑張るしかないなという思いでした。
──YouTubeが軌道に乗ったタイミングはいつ頃でしたか?
サーニーゴ はじめてから2年くらい経ってからですね。楽しくて、続けることはできてはいたんですけど、実際の生活は結構苦しかったです。もちろん定期的にバイトもしながらでしたし、大会の遠征費が足りないから日雇いのバイトを増やしたり。
やっとYouTubeが軌道に乗ってきたというタイミングで、世界大会で2位にもなれたので、そこからいろいろと歯車が噛み合ってきたのかなと思います。
──現在のYouTube運営のチーム編成はどのようになっているのでしょう?
サーニーゴ 演者として動画に出ているのは、僕とまほうじんの二人ですが、カメラとか機材関係をやってくれてるのが一人と、メンバーシップの管理をしてくれるもう一人で現在は計4人のチームです。動画編集は外注したりもしていますね。
まほうじんには「世界大会で優勝したら一緒にやらないか?」って声をかけてたんですけど、その覚悟で臨んだ世界大会で2位だったんです。「2位か~」とは思ったんですけど、その結果を受けて、仕事を辞めてついてきてくれました──東京に出てきた今も一緒に頑張ってくれてます。
──自分だけでなく周りも巻き込んでいくすさまじいバイタリティを感じます。その情熱はどこから湧いてくるのでしょう?
サーニーゴ 本当に単純にポケカが好きだからですね。対戦するのも面白いし、ポケカを通じて友だちもできるし、もっと上手くなって上位にいきたいって気持ちも湧いてくる。ポケカに関わることなら、やりたいことがドンドン浮かぶんです。
──以前、「大会中はサインや写真撮影などの対応はできない」と伝える動画も出されていました。こうした喚起が必要なくらい声をかけられる?
サーニーゴ すごくありがたいことにたくさん声をかけてもらえるようになりました。本当に嬉しいんですが、一人にサインを書いたり写真を撮ったりするなら全員に同じように対応させてもらいたいと思ってしまうんですよね。
だから大会中はどうしても時間がなくなってしまうから、一律にそうした対応を控えさせてもらうことにしましたが、本当に心が痛いです……。
代わりにしっかりと時間をとって交流できるようなファンイベントを開催しているんですが、今後はもっと機会を増やせたらと思っています。
──ご自身のファン層についてはどのように分析されていますか?
サーニーゴ 大多数はカジュアルに『ポケカ』を楽しんでいる人だと思います。友だちとかと対戦はするけど、大型イベントに積極的に参加するほどではないくらいの。
もちろんガチで取り組んでる人たちにも見てもらってますし、イベントを開催すると「初めて人と対戦します!」って人も来てくれたりするんです。本当に幅広い人に見てもらえてます。年齢的には2~30台が半分くらいですが、子どもたちもお父さんやお母さんのアカウントで見てくれてるみたいですね。
──サーニーゴさんと同様のレベルで仕事として『ポケカ』に取り組んでいるプレイヤーは日本にどれくらいいると思いますか?
サーニーゴ これは思いのほか少なくて──たぶん10人いるかどうか。
ぼくみたいにYouTubeを中心に取り組むより、プレイヤーへのコーチングをメインにプロプレイヤー活動を行っている人が多い印象です。僕もYouTubeのメンバーシップ会員向けにコーチングをやったりもしていますが、一時間単位でより本格的にコーチングをして報酬を得ているプレイヤーもいます。
──コーチング文化も年々浸透してきている感じはありますよね。プレイヤーの中で注目している方や尊敬している方はいますか?
サーニーゴ サイトウコウセイさんはすごいと思いますね。ショップのオーナーをやりながら、しっかり大型大会でも結果を残している。ちょっと異次元だなと感じています。
ヤマグチヨシユキ選手とは今後のポケカはどうなっていくのかとか、人生について相談したりもします。僕は彼に負けて一度「ポケカ四天王」を剥奪されてしまったんですよ。でもその次の年に、また彼と入れ替わりで「ポケカ四天王」に返り咲いた──そんな経緯もあってか、ライバル的な存在でもあります(笑)。
──現在の『ポケカ』というコンテンツ全体については、どのような印象を持たれていますか?
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