孤独でばかりいたら、良い作品は生まれない

Interview

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  • 2020.02.19 19:00:00

2010年代の終わり、VTuberの勃興や歌い手のメジャーシーンへの台頭など、ネット発の文化がさらに勢いを増した。

同時に、かつてニコニコ動画で一世を風靡した、ボーカロイドを用いたクリエイターたちも新たな才能が登場していくこととなる。

孤独でばかりいたら、良い作品は生まれない

カンザキイオリは、次世代のボカロPとしてカリスマ的な支持を集める存在だ。

だが、その特徴的なバンドサウンドと研ぎ澄まされた、ともすれば過激な歌詞はシーンの「中心」というよりも、さらに尖った場所にいたアーティストのように映る。

その才能が多くの人に発見されるまで時間はあまり要さなかった。VTuber「花譜」のメインコンポーザーに起用されるほか、彼女と共にクリエイティブチーム「KAMITSUBAKI STUDIO」への所属も次々と発表。

また渋谷にある「3.5D by KAMITSUBAKISTUDIO×PARCO」にて2020年2月8日より「カンザキイオリ展」を開催中。さらに、音楽だけでなく小説『』を敢行するなど、その活動は多岐にわたる。

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カンザキイオリ展

活躍と知名度の一方で、その作品以外、彼のパーソナリティはほとんど明かされていない。KAI-YOU Premiumでは、カンザキイオリに初のインタビューを敢行。

あらゆるものが匿名性に覆い隠された現代、一人の音楽家として、表現者として、カンザキイオリはどのように生きるか──。そこにはKAMITSUBAKI STUDIOの仲間、ライバルたちとの出会いがあった。

不登校だった中学時代

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カンザキイオリさん

──カンザキイオリさんはニコニコ動画での活動が知られていますが、いつごろから楽曲の投稿をはじめたのでしょうか?

カンザキイオリ(以下、カンザキ)  はじめてインターネット上に曲を投稿したのは、いまは終了してしまったTmBoxという自作音楽の共有サービスでした。UTAUという無料の歌唱合成ソフトを使って、オリジナルではなく、カバー曲を投稿していたんです。

中学二年生の頃、不登校だった時に、ボーカロイドや「歌ってみた」の文化にハマって、自分もネットのみんなと同じように曲をつくって投稿したいと思った。

そこから作詞や作曲をやり始めたのは、高校一年生の終わりごろだったと思います。

多分、音楽を通して、友達が欲しかったんです。実は当時いじめられていて、ここじゃない居場所が欲しくて。そうして何かを求めていたらボーカロイドにたどり着いたんです。最初は音楽をつくる機材もありませんでしたが、高校生になってからアルバイトをして、自由に使えるお金を手に入れて、実現できました。

──音楽をはじめる上で印象的だった、感銘を受けたアーティストや曲はございますか?

カンザキ 曲づくりをはじめたころに印象深かったのはamazarashiの「つじつま合わせに生まれた僕等」という曲です。歌詞がとても素晴らしいんです。情景が浮かんで、背中を押してくれる。ボーカルの秋田ひろむさんの紡ぐ優しい言葉にすごく感動して、「僕がつくりたいのはこういう曲だ」と強く思いました。

amazarashi 誦読『つじつま合わせに生まれた僕等』

カンザキ でも、その頃の曲を聴いてくれていたのは同じ高校生の友達くらいで(笑)。だんだんと反応が増えてきたぞ、と実感したのは2016年に投稿した「アダルトチルドレン」からだったと思います。曲づくりの面でも、そのあたりから自分の本当の苦しさを全力で歌詞に込め始めるようになりました。

──音楽をはじめたきっかけが「友達が欲しかった」という話ですが、ボーカロイドや「歌ってみた」といったネット上の音楽文化のどのような点に惹かれたのでしょうか。

カンザキ ネット上の音楽文化に惹かれたのは「自由」だったからなんです。

自分の好きなジャンルを好きなようにたくさんつくっても、同じような曲ばかりつくっても、暗い曲も、明るい曲も、何をつくっても誰からも怒られない。それが楽しくて。

音楽を続けていく中で、友達もできました。自分の曲を聞いてくれた人からアプローチしてくれることが多くて、嬉しいです。僕の曲を聞いた同級生が突然握手してくれた時は笑いました。

ネットシーンの代表曲となった「命に嫌われている。」

──最初は同級生しか聴いてなかったというカンザキさんの楽曲ですが、2017年に投稿された「命に嫌われている。」は現在のボーカロイドシーンを代表する、様々な形で話題となる楽曲でした。カンザキさんの名を世に知らしめた一曲だとも思います。カンザキさん自身は、これまでの楽曲とは違った手ごたえや感触のようなものを感じましたか?

命に嫌われている。/初音ミク

カンザキ 良い曲をつくったという手応えや感触、というのは確かに感じていました。だけどそれは「命に嫌われている。」に限った話ではなくて。新しくできる曲は全て、絶対に良い曲だという手応えと確信を持って向かっています。だから、これまでとは全然違うという感覚はありませんでしたね。

でも自分としては特別な実感があるわけではないんですが、神椿のプロデューサー・PIEDPIPERさんは「通常1分半であるアニメ尺の中に一番がきちんと完結されている」とか「題名のセンスが素晴らしい」とか、すごく褒めてくださったことがありますが(笑)。正直全くよくわかっていません。聴いてくれる人に、評価してくれる人に、感謝ばっかりです。

多くの人にカバーされているのも、純粋にとっても嬉しいです。自分も「歌ってみた」の文化に憧れを感じていて、だから自分の楽曲を歌ってもらうという形で、この文化に触れることができてとても嬉しいです。これからもいろんな人に歌ってほしいと感じています。

──現在のKAMITSUBAKI STUDIOに所属するまで、どのような生活を送っていたのでしょうか。

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