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  • 2023.04.29

「VTuberは社会に認められてない」花譜プロデューサーが考える唯一の攻略法

キャラクターでもあり、人間でもあるVTuber。

バーチャルなアーティストを阻む壁を突破するための手段とは──

「VTuberは社会に認められてない」花譜プロデューサーが考える唯一の攻略法

バーチャルYouTuber(VTuber)シーンの中で独特な空気感を放つレーベル・KAMITSUBAKI STUDIO

その要となっている存在が、プロデューサー・PIEDPIPERだ。

前編では「KAMITSUBAKI DAO」や新会社・深化の話題を軸に、クリエイターへの還元率の低さ、そしてファンの負担が大きい収益モデルといった業界の構造についての意見と、自身の構想をうかがった。

現在、多数のタレントが所属するに至ったKAMITSUBAKI STUDIO。後編ではマネジメント論や、プロデューサー・クリエイターとしてのバランス感覚などの話題を通じて、KAMITSUBAKI STUDIOの運営方針や、事務所運営に必要なこと、見据える未来について話は及んだ。

目次

  1. 間違ってることは「間違っている」と言わなきゃならない
  2. THINKRが社名を出すようになった2つの理由
  3. バーチャルだからこそできないことも、たくさんある
  4. マネジメントがVTuberに提供すべきもの
  5. キャラクターでもあり人間でもある、VTuberマネジメントの難しさ
  6. プロデューサーとしてクリエイターとして、PIEDPIPERのバランス感覚

間違ってることは「間違っている」と言わなきゃならない

──2022年9月に春猿火さんの件でnoteに投稿された記事では、マネジメント業務の大変さ、作業量の多さの話が連ねられていました。こういった裏方の話を公開するのは難しい判断だと思います。

PIEDPIPER 僕は、こういう話こそ、ある程度ぶっちゃけた方が信頼性が上がると考えています。ちゃんと説明を尽くした方が、僕らのスタンスも伝わるしユーザーが安心してくれる。逆に言わないと不安が出てきてしまいます。

KAMITSUBAKI STUDIOにおいては、最初はファンの人達も中高生がメイン層で若かった。けれど、4年経って今は大学生や社会人になってきて、徐々に(運営の立場も)理解してくれるようになりましたね。

それでも、プロジェクトやアーティストについて何かわからないことがあるとコミュニティが荒れてしまうこともあって、なるべく丁寧に説明していくのを意識しています。

ただ、現在はプロジェクトが増えすぎて、全部に対して説明ができない。印象的なものを中心に、記事を書くように心がけています。

──プロデューサーがここまで前に出てきて説明をするというのも珍しいように思いますが、その初期から、運営の顔が覗くような場面もありました。例えば花譜さんに関しても当初ソニーによる再生数工作などといった噂が飛び交い、単に否定するだけではなく内情や思いを明かされていたのを覚えています。

PIEDPIPER 当時はKAMITSUBAKI STUDIOを発足する前で、花譜のプロデュースと並行して輝夜月さんの運営さんのお手伝いを少しだけしていました。

彼らとアーティストが炎上したときの適切な対応について話をしたことがあって、その中には「何も言わない方がいいんじゃないか」という意見もありました

それもとてもわかるんだけど、僕は声明を出した方がいいと思ったんです。自分に責任がなくても、黙っていれば、後々になって世間では悪者にされることがある

これは花譜の一件だけに学んだというわけではないです。バーチャルをやる以前に説明をしなかったことで、自分たちの落ち度がなくても責任を全部かぶせられて、こちらが悪いという認識が業界に広まってしまった苦い経験があったからです。

間違っていることは「間違っている」と言わなきゃならないし、謝罪するべきことは謝罪しなきゃいけない。いろいろ経験してきた結果、その都度精算していく方が良いと考えています。

VTuber業界はそういうのが下手というか、ちゃんと説明しない人たちが当時多かった。もちろん世間で悪く言われている方々が実際に責任があったこともあると思うんですけど、何かが起こった時に、誰かが100%悪いということはそうそうない。

むしろそういう内情を明らかにしていかないと、所属しているタレントも心配になるし、応援している人も素直に応援できなくなってしまう。

別に自分たちが悪い/悪くないに限らず、タレントのため、コミュニティのため、自分たちのためにも、「今何が起きているのか?」をちゃんと説明する必要があるということです。

THINKRが社名を出すようになった2つの理由

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PIEDPIPER

──THINKRはかつて、KAMITSUBAKI STUDIOを運営する上で社名を出してきませんでした。それを出すことにしたのも、今の「正直に話そう」という考えに繋がるのでしょうか?

PIEDPIPER それには2つの側面がありました。まず、運営母体を伏せた時に、運営スタッフ達のモチベーションを長く保てなかったんです。

ファンにとっては運営がどこだろうが気にならなかったとしても、運営スタッフ達にはしっかりとモチベーションを持ってもらいたい。そしてタレント自身にも、その会社に所属しているということにある種の誇りを持ってもらいたいと考えました。

もう一つは、ブランディング的な観点からです。例えばアーティストやタレント、アイドルなど、クライアントワークをベースにしたクリエイティブプロダクションが「ヒットしていないプロジェクトを運営している」と公表することには正直リスクがあります。

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