中国発“パチモン遊戯王カード”の数奇な歴史──海賊版業者が「手描きでカードを製造」するまで
2024.11.09
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フジテレビ『ノイタミナ』枠で人気を博した伝説的アニメ『モノノ怪』が、令和のこの世に『劇場版モノノ怪 唐傘』として新生した。
シリーズの生みの親たる中村健治監督をはじめとした豪華スタッフ・キャストで描く物語の舞台は「大奥」。
様々な思惑と情念が渦巻く混沌の世界を、TVシリーズからさらにパワーアップした豪華絢爛なビジュアルで表現。そこに劇場版ならではの緻密でダイナミックな音響と、声優陣の命を削るかのような大熱演が息吹を宿らせた。
TVシリーズから15年以上の時を経て新たに描かれる『モノノ怪』の世界。技術の進歩は目覚ましいが、それが巻き起こす新たな騒乱と猜疑に満ちる現代にあって、人間の業と願いを描いてきた『モノノ怪』はいかに進化したのか。
実は、一時期アニメ業界から足を洗うつもりだったという中村監督。
『ガッチャマン クラウズ インサイト』以来9年ぶりの監督作品、さらに初の劇場監督として新たな地平へ臨む中村健治監督に、混沌の現代
目次
- 個人と集団は常にすれ違う──新たな『モノノ怪』
- 映画館に足を運ぶ理由をつくる
- 「世の中ってそもそもそんなに楽園じゃない」
- 「因習村」が流行するのは必然
- 辞めようとしてたのに……9年ぶりの監督作品、一社提供で切り拓く新たな地平
──17年ぶりの『モノノ怪』です。今作で、「大奥」を舞台に設定した理由をうかがえますか?
中村健治 初期の企画会議の段階で、自分が出したアイデアのひとつが大奥でした。
最初に公開したビジュアルのような、薬売りが大広間で女中たちに囲まれているレイアウトをホワイトボードにその場で描いて見せたところ、すごく好評だったのでそのままメインの舞台になったんです。
──そのテーマが「合成の誤謬」というものだとうかがいました。
中村健治 ちょっと難しく聞こえるかもしれませんが、「合成の誤謬」は元々は経済用語で、個人の利益と集団の利益が食い違うことを言います。
たとえば現代でも、不況の時、個人は出費を抑えるのが合理的ですが、社会全体としては出費が抑えられてしまうとより不況が進行してしまうので実はみんなが沢山出費するのが合理的です。そうやって個人と集団の正解は常にズレ続けるものだと思いますし、利益が一致するのは“幻想”とすら言えます。
個人と集団の正解はどうしてもズレてしまうけれど、個人としては自分の気持ちと集団の目指すものが一致していてほしい、でもそれは基本的に難しいので、そこで人々は病んでしまうんだと思うんです。個人の理想と集団の理想がズレた時に個人に生まれるモヤっとしたもの、その情念と妖が結びついたものが、今回のモノノ怪になってます。
──今のお話は現在の日本社会のようにも感じられますが、そうしたリンクは意識されたのでしょうか?
中村健治 そう見える部分もあるかもしれませんが、日本に限ったことではないと思います。あらゆる時代に滅びの前兆としてそういうことはあったと思うので、逆に言うとその兆候が見える現代は危ないのかもしれません。
TVシリーズ『モノノ怪』(2007年放送)の頃はまだiPhoneやTwitter(現X)もやっとできたくらいでしたから、個人の声を発表する場は多くありませんでした。でもスマホやSNSが普及した現代は、個人が立場に関係なく意見の鋭さで目立てる、バズれる時代になってますよね。
そうやって個人の声が大きくなったことで、個人と集団のズレに苦しんでいる人が発見されやすくなってきました。増えたわけではなく、昔からあったものが見えやすくなった。でも、それは悪い事ではないと思うんです。
今までは知らなかった人の苦しみを知れてしまうのは辛いことでもあるけど、知ることで救われることもあるかもしれない。
『モノノ怪』はそうした隠された声を掬い上げる物語でしたが、今作は可視化された暴れてしまっている感情を鎮める、落としどころを探す作品……になっているといいな(笑)。
──初の劇場監督作品ですが、劇場版ならではの苦労などはありましたか?
中村健治 なにより尺が長いのが、こんなに大変だとは正直思ってませんでした(笑)。
TVシリーズの場合は、20分くらいの中で起承転結をつけていけばよかったんです。だから全体の把握や先の想定として考えることはそんなに多くなかったんですが、尺が長くなったことで考える量が膨大になってしまいました。
将棋で言うと、今までは五手くらい先まで読んでればよかったのが、百手読まなくちゃいけなくなったみたいな感覚。時間が増えた分、大変さがただ増すどころではなく、指数関数的に大変さが上がってしまったんです。
一か所で不具合が起きると、かなり前の段階まで遡って修正しなくちゃいけなかったりしますし、それを一日に何回もやっているともう頭がパンクしそうでした。「映画といっても、TVが長くなっただけじゃん」くらいに思ってたんですが、まったくそんなことはなかった。これを普段からやっている劇場監督の方々を尊敬します(笑)。
──<逆に達成感や喜びを感じる部分はありますか?
中村健治 こんなに大人数というか大家族で作品をつくるというのも初めての経験だったのですが、日々みんなから小さな成果が上がってくる、「こんなのできました」って見せてくれるのがもう幸せでした。
それで十分楽しかったですし、今も公開へ向けての作業をウキウキしながらできていますね。
──大奥の中で「御水様」という水への信仰があるというのも特殊な設定でしたが、大奥にさらに宗教を絡めるというアイデアはどのように生まれたのでしょうか?
中村健治 確かプロデューサーの山本(幸治)さんが「宗教とかあったらどうだ」みたいなふわっとしたことを言っていたのがきっかけでした。
集団と個人を描く上で、集団のルールをどう表現するかを考えると、宗教と絡めるのはいい案だと思ったんです。集団におけるルールって宗教みたいなものですし、教祖とまではいかなくても、なんとなくこの人がルールの中心にいるみたいな人っていますよね。加えて元々の大奥を調べた時に、大奥の中だけで信仰されていた密教的なものがあったというのもヒントになりました。
水はわかりやすいモチーフであるとともに、身近で綺麗なものでもあるけど、ふとした瞬間に違うものにも見える。動くものなので、ある人からある人へプレッシャーがかかっている状況を、水を飲ませるという描き方で表現できるなど、いろんな描写に使えていいなとも思いました。雨とも相性が良いので、今回は全部水で綴(と)じていく感じにしています。
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