『ストII』だけを極めてきた格ゲーマーが語る「ゲーセンこそが真のオンライン」
2021.08.14
クリエイター
この記事の制作者たち
『ストリートファイターII』が社会現象を巻き起こした1990年代。薄暗いゲームセンターの熱気の中で、格闘ゲームは独自の進化を遂げてきた。そのシーンは今、ストリーマーやVTuberといった新たな熱源をも取り込み「格ゲー史に残るブーム」を迎えている。
その最前線に立ち続け、シーンの変遷を誰よりも生々しく見つめてきた男がいる。プロゲーミングチーム・Crazy Raccoon(CR)の「ストリートファイター」部門に所属するどぐら選手だ。
2023年、彼は長年籍を置いた大阪のチーム・CAG OSAKAから、東京・渋谷に拠点をおくCRへと電撃移籍を果たした。それは単なるチームの変更ではなく、格ゲーの火を大きく燃え上がらせるための人生を賭けた決断でもあった。
今回、自ら主催する若手プレイヤーの支援を目的としたアマチュア大会「D4CUP」の開催を機に、彼に改めて話を訊いた。
軽妙な語り口の裏側に秘められた、プロゲーマーとしての冷静な分析と、格闘ゲームの未来を想う義理と人情。彼が語る対人ゲームの本質と、死ぬまでに実現したいと願う「終生の夢」とは。
目次
- 人生を賭けた「CRカップ」直談判と移籍の舞台裏
- 歴代最高と呼ばれる『ストII』と比較した、『スト6』ブームの現在地
- ガラパゴス的な進化をした日本の『スト6』ブーム、鍵は配信人気と国民性?
- 入り口としての「SFL」と究極の出口「闘劇」──排他的なコミュニティを打破する“裾野”の広がり
- 格ゲーシーン衰退の正体は「熱源」の不在。有志にどぐらが抱く、頭の下がる思い
- ゲーセン全盛期に体感した「殴られる距離感」 オンラインで忘れがちな“相手への想像力”
- 「D4CUP」開催に込めた、先輩とゲーセンへの恩返し
- 「死ぬまでにもう一度、日本中にゲーセンをつくりたい」──39歳のどぐらが描く原風景の再構築
──現在の『ストリートファイター6』ブームを引き起こす大きな起爆剤になったのは、発売直後の2023年6月に開催された配信イベント「Crazy Raccoon Cup Street Fighter 6」(CRカップ スト6)だったと思います。同イベントはどぐらさん、同じくCR所属の立川さんが2人でチームのオーナー・CR.おじじさんへ開催を直談判されたそうですが、開催に至った経緯を教えていただけますか?
どぐら 『スト6』の発売が間近に迫っていた2023年の1月頃、僕はまだ大阪のCAGというチームにいて。当時配信されていたβ版を遊んでみたら「開発の本気度がこれまでと違うぞ」というのが伝わってきたんです。
実は『スト6』って、コロナ禍の影響で開発期間が予定より3年ほど延びたと言われていて。その分、初期状態からクオリティとつくり込みが凄まじかった。プロモーションの仕方も含めて「これはとんでもないブームが来るぞ」という確信がありました。
格ゲー界の「希望誕生」前夜を振り返るどぐらさん
──その確信が、「Crazy Raccoon Cup Street Fighter 6」開催の直談判へと繋がったのですね。
どぐら 当時、格ゲー界は30代以降が中心で、若い層が少なかったんです。FPSが全盛を横目に見ていて「格ゲーもなんとかその輪に入れてもらえないか」という思惑がありました。じゃあどうすればいいかと考えたとき、一番の近道は「CRカップをやってもらうことだ」という結論に至ったんです。
──「CRカップ」はコロナ禍において、それまで各ゲームジャンルなどでコミュニティが分かれていたストリーマー/VTuberたちが一堂に会する場として配信ブームを牽引していました。『Apex Legends』などで開催された際は、プロ選手がコーチを担当することで競技シーンと配信シーンの架け橋にもなっていた印象です。
どぐら ただ、当時の僕はおじじさんと面識がなくて……。誰かいないかと思ったら、当時はBurning Coreというチームに所属してた立川が何故かおじじさんと飲み友達だというので「つないでくれ!」と頼みまして。それで僕と立川、おじじさんの3人で飲むことになったんです。
そこで「『スト6』のCRカップをやるしかないです」って、半ば洗脳に近い勢いで説得し続けました。そしたら、おじじさんが「やるんだったら、うちでも格ゲー部門を持ちたいな」と。
──そこから移籍の話にも発展したのでしょうか。
どぐら その瞬間、立川が「どぐらさんほどの人材はいませんよ! CRのカラーにもぴったりだし!」って。人生で一番じゃないかってくらい僕を持ち上げてくれたんです(笑)。
ちょうど僕は『ストV』最後の世界大会※で優勝した直後で、プレイヤーとしての価値も高い時期でした。僕自身も「CRに入れてもらえるなら死ぬ気で頑張ります。もちろん、CRカップの調整も何でもやります」と伝えて。そこで「じゃあ、それでいきましょう」と決まったんです。
※プロリーグ「ストリートファイターリーグ(SFL)」のこと。どぐらさんは『ストV』最後となる2022年のSFLへチーム「Good 8 Squad」の一員として出場し、世界一に輝いた。
「SFL: ワールドチャンピオンシップ 2022」で世界一に輝いた「Good 8 Squad」/画像はCAPCOM eSports公式Xから
──第1回「CRカップ スト6」の熱狂を目の当たりにして、どのように感じましたか?
どぐら 「やってよかった」という一心でしたね。傍観して後悔するより、自分が信じた「ゲームを流行らせるためのムーブ」に全力で従った結果だったので。
第1回は最初から同時視聴者数も凄かったですし、何よりウメハラさんが本当に、台本があるんじゃないかと錯覚するくらいの劇的な試合を見せてくれて。僕も見ていてジーンときました。
──今でも「あのCRカップを見て格ゲーをはじめた」という人は非常に多いですよね。
どぐら イベントなどでファンの方と接すると、今でもそう言ってくれる方が本当に多いんです。あの大会が持っていた影響力の大きさは、今も肌で実感しています。
──どぐらさんご自身は、どのように格ゲーをはじめられたのでしょうか?
どぐら 中学生くらいの頃、地元の友だちの家に集まって、みんなでゲームを遊ぶっていう……まあ、よくある光景ですよね。その時、一緒に遊んでいたのが8人くらいいたんですけど、僕を含めた4人で家庭用の『GUILTY GEAR XX(ギルティギア イグゼクス)』をやりはじめたんです。通称「無印」※と呼ばれるバージョンでしたね。
それでずっと遊んでたら、友だちの一人が「ゲーセンに行けば、これの新しいバージョンがあるらしい」と言い出して。それで、7km先にあるゲームセンターへ自転車を漕いで行ったんですよ。そこからですね、本格的に格ゲーにのめり込んだのは。
※:後にリリースされた同作の調整版『GUILTY GEAR XX #RELOAD』などと区別するための呼称。シリーズとしては3作目にあたる。
──2000年代前半は、格闘ゲーム自体の勢いは落ち着いていた時期だったかと思います。どぐらさんの体感として、その頃の格ゲーは流行っていたのでしょうか?
どぐら 僕の周りでは流行ってましたね。1990年代の前半に『ストリートファイターⅡ(以下、ストII)』、次に『バーチャファイター2(以下、バーチャ2)』の大きなブームがあって。僕がはじめた頃は、ちょうど「ギルティ」の熱量が高い時期だったんですよ。
ただ当時は子供だったので、世間的に何が流行っているかなんて客観的には分かってませんでしたね。
──今、まさに『スト6』が大きなブームになっています。過去の格ゲーブームを知るどぐらさんから見て、現在の盛り上がりはどの程度の規模だと感じていますか?
どぐら 格ゲー史上最大のブームといえば、やっぱり『ストⅡ』。当時両国国技館で行われた決勝大会には、約8000人が集まったと言われてます。しかもこれは決勝大会なので、全国に無数にあったゲーセンでの予選も含めれば、プレイヤーの数は計り知れません。
実際に『ストリートファイターⅡ』を触ってもらいながら、ブームを振り返ってもらう
どぐら 当時の『ストII』の熱量を100とするなら、その後の『バーチャファイター2(以下、バーチャ2)』も同じく100に達していたかもしれないですね。僕も人に聞いた話ですが、当時はクラブにまで『バーチャ2』が置いてあったらしいですから。どこへ行っても筐体があった時代。社会現象と呼べるのはその2作品だけでしょうね。
それらを100とするなら、今の『スト6』は、形こそ違えど80くらいまでは来ているんじゃないかと思います。かなりの流行り方ですよね。
──昔は様々なタイトルが乱立していたのに対し、今は『スト6』が抜きん出ているような印象も受けます。この「流行り方の違い」について、どぐらさんはどう分析されていますか?
どぐら 『ストII』の時代は格ゲー自体がまだ新しくて、純粋に「新しいおもちゃが出たから、みんなで体験してみよう」という物珍しさもあったんだと思います。でも今は娯楽が大量にあるし、ゲームの種類も膨大です。
その中でこれだけ流行ったのは、間違いなくストリーマーの方やVTuberさんが率先してプレイして、「このゲーム面白いよ」と発信してくれたから。インフルエンサーという先導者がいて、それに若者たちが続いていったイメージですね。
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