映画『爆弾』を観た元刑事に聞いてみた「犯人と取調室での頭脳戦って本当にある?」
2026.01.21
本稿は、Webメディア「KAI-YOU」にて2026年5月22日に公開された記事を再構成したものです。
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この記事の制作者たち
白昼のファミレスを襲った無差別大量殺人事件。防犯カメラに残された容疑者の凶行──人々を切りつけるその右手には、あるはずの凶器が映っていなかった。
5月22日(金)から公開の映画『名無し』は、冒頭から過激な暴力表現が飛び込んでくるサイコバイオレンスムービーだ。その内容の特殊性から一度は封印されかけた物語を生み出したのは、映画『爆弾』での怪演も記憶に新しい佐藤二朗さん。
自ら漫画原作を手がけて映画化にこぎつけ、原作/脚本/主演を兼任。あらゆる命に死をもたらす狂気の中年男性・山田太郎を演じた。
『名無し』というタイトルの映画の主題歌として楽曲「名前」を書き下ろしたのはNovel Coreさん。日本武道館での単独公演も成功させた気鋭のアーティストは、脚本を10回以上も読み込み、自身初の映画主題歌に挑んだ。
楽曲制作にあたって作品への思いを何度もメールで交換したという両者が初対談。はじめて対面するとは思えない深さと密度で語り合う二人によって、作品の核となる「名前をつける」という行為の意味が浮かび上がっていった。
取材/文:フガクラ 編集/撮影:恩田雄多(KAI-YOU)
佐藤二朗/スタイリスト:鬼塚美代子(Ange) ヘアメイク:今野亜季(A.m Lab)
Novel Core/スタイリング:Novel Core ヘアメイク:原野麻美
目次
- 佐藤二朗が思い描いた「神の存在」を巡る物語
- Novel Coreが主題歌「名前」で表現した“繋がり”
- 「名前をつける」行為は、カルマを背負うこと
- 二子玉川の公園で思いついた凄惨なシーン
- “諦めること”には意味がある 『名無し』で山田太郎が手放したもの
──佐藤さんは、ご自身の強迫性障害の体験をもとにした映画『memo』や、置屋で生きる3兄妹を描いた『はるヲうるひと』など、困難を抱えた人々が「負を力に変えて生きる」というモチーフを通底して描いてきました。対して、『名無し』の主人公・山田太郎は、「右手で触れたものを消すことができる」特殊能力を使って殺人事件を起こしてしまいます。いわば「負を力に変えられなかった」人の物語のように感じました。
佐藤二朗 おっしゃる通り『名無し』は、僕が今まで手がけた過去作とは明確に違いますね。
丸山隆平(警察官・照夫役)は、映画へのコメントで「人間としての欠陥を象徴するかのような特殊性」という言葉を書いていた。それからMEGUMIちゃん(花子役)は「『自分の持つ傷の行方』ということを考えながら、今回の役に真摯に向き合いたいと思います」と言っている。
要するに山田太郎というのは、傷や欠陥を抱えた、異物のような存在なんだよね。人間はみんな神様から与えられたカードで人生の勝負をするけれど、残念ながら挽回不可能じゃないか、という限られたカードしか与えられない人も、やっぱり居る。
その絶対的な不条理、もっとベタに言うなら「神の存在」を巡る物語を描きたかったんです。
佐藤二朗さん演じる山田太郎
──Novel Coreさんは、そんな作品のテーマをどのように受け止め、主題歌の「名前」を制作したのでしょうか?
Novel Core 最初に脚本を読んだ時、僕は主人公に救いがあるかどうかは重要ではないのかもしれない、と感じたんです。それよりも、たとえ救いがなかったとしても、それでも“手を伸ばしてしまう”という人間の性というか、根本的な部分を描こうとしている作品なんじゃないか? と思いました。
伸ばした手は届かない、跳ね除けられてしまうかもしれない。それでも、もしかしたら伸ばし続けていたら誰かが手を掴んでくれるかもしれない──そんな希望を、人はどうしても信じてしまう。そこに向き合って楽曲を書いてみようというのが最初の着想でした。
Novel Coreさん
──楽曲で印象的だったのが、後半部にコーラスが入る点です。『名無し』という映画の主題歌をつくるにあたって、独唱ではなく様々な人の声を重ねられた理由を教えてください。
Novel Core 楽曲の構成は、制作段階で非常に悩んだところでした。イントロはドライな、冷たい質感のピアノと僕の声だけからはじまって、その後に鳥のささやきや子供たちの笑い声、街の音といった環境音が遠くから少しだけ聞こえてくるようになっています。
僕たちが過ごしている平和な日常と、山田太郎が生きている孤独な諦めの世界とのギャップを表現したかったんです。ただ、2つの世界が平行線のまま続くのではなく、どこかで交わる瞬間をどうしてもつくりたかった。
それはほんの一瞬の出来事でしかないかもしれないけれど、孤独な人生と世界が確実に接触する瞬間があるはずだと思って、それを音楽で表現したかったんです。
──その2つの世界が交差する瞬間を、ボーカルとコーラスが混ざり合う部分で表現したということでしょうか?
Novel Core ええ。僕の声だけではなく、他の声が入ることで楽曲に大きなドラマが生まれたと思います。それから、コーラスを歌ってくれる方は、僕のことを大切に思ってくれている人たちに頼んだんです。
特に、メインのパートを歌ってくださっているメグさんはボイストレーニングの先生で、アーティストとしての僕を強く理解してくれている方なんです。それからバンドメンバーやスタッフさんの声だったり、僕を信頼してくれている人の声を歌声に重ねていて。
そうやって、自分が本当に繋がりを感じられる声でなければ、「名前」のコーラスには意味が生まれないと思ったし、おかげで楽曲全体に特有の温かみが宿ったと思います。
山田太郎とMEGUMIさん演じる花子
佐藤二朗 楽曲を聴いた瞬間「楽曲が作品に寄り添っている」という言葉では生ぬるいぐらい、映画の内容と曲のメッセージが生き物のように、グッと一体化していると感じました。
世界と山田太郎が交わる一点があるはずだ、というNovel Coreさんのお話は面白いね。
作中では結局、MEGUMIちゃん演じる山田花子は、山田太郎と繋がることができたかもしれないのに、結局は未来を諦めて、破滅してしまう。つまり、彼女は山田太郎と世界の橋渡し役になり得なかった。
それでも「名前」という曲が、山田太郎と世界を一瞬でも繋いでくれた気がした。エンドロールで流れた時、まるで映画と楽曲が一つの生き物のように一体化していたように感じたのは、それが理由なんだと思った。
Novel Coreさんと佐藤二朗さん
Novel Core ありがとうございます。『名無し』という作品のことを深く理解するために、脚本を合計で10回以上は通して読ませてもらいました。
それから、一緒に楽曲制作を行っているハウスバンドのTHE WILL RABBITSのメンバーや、スタッフの皆さんにも「絶対に脚本を読んでくれ」と伝えました。1ミリでも制作に携わるのであれば、同じものが見えていないと良い曲には絶対にならないので。
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