海外トップアニメYouTuberが語るアニメの現在地 「Shonen」ジャンルと日米ヒーロー比較論
2021.04.20
映画『ベスト・キッド』を原作に、当時のキャストたちそのままで大人になったその後を描く異色作『Cobra Kai (コブラ会)』。
単純明快な勧善懲悪ドラマが現代に蘇って、なぜ今注目を浴びているのか?
YouTube Premium(現在はNetflixでも配信)で第2シーズンまで配信中のオリジナルドラマ・シリーズ『Cobra Kai (コブラ会)』。
本シリーズは、すでに第1話の視聴数が約9700万回を記録し(2020年12月8日現在)、オリジナルの『ベスト・キッド』(原題:The Moment of Truth / The Karate Kid)を凌ぐほどの社会現象を巻き起こしています。
第2シーズンの配信開始からわずか1週間でシーズン3の制作決定が発表され、その配信前からシーズン4の制作も決定するほどで、Cobra Kai熱は世界中で高まり続けています。
原作の『ベスト・キッド』はアメリカ中で一大空手ブームを引き起こし、80年代を代表するポップカルチャー・アイコンとして君臨し続けてきました。
しかし、本作は過去の栄光や懐古に浸ることなく、『ベスト・キッド』という物語の根幹となる「いじめられっ子の復讐譚」、つまり「勧善懲悪」という部分に新たな光を当てています。『ベスト・キッド』の34年後が舞台となる『Cobra Kai』では、いじめられっこの主人公・ダニエルが自動車ディーラーを経営する成功者として描かれる一方、悪役のジョニーは酒に溺れる冴えない中年男として描かれています。
ジョニーは映画史に残る大悪役として観客の記憶に残っており、感情移入をする余地はあまり残されていません。それにも関わらず、本作の脚本家たちは悪役・ジョニーの視点から物語を紡ぐという大胆な転換を決断しました。
しかし、この無謀にも見える決断こそが、原作を知らない10代・20代の若者たちをも巻き込んだ『Cobra Kai』ブームの鍵となっているのです。
※本稿は、2019年に「KAI-YOU.net」で配信した記事を再構成したもの
目次
まずは原作『ベスト・キッド』の内容からおさらいしていきましょう。本作はいわゆるスポ根映画であり、そのストーリーは非常に明快な勧善懲悪ものです。前半部の大まかなあらすじを見ていきましょう。
母親の仕事の都合でロサンゼルスに引っ越してきたダニエルは、ひょんなことからCobra Kaiという空手道場の悪ガキたちの、いじめの標的となってしまう。少年空手選手権チャンピオンのジョニー率いるCobra Kaiに為す術もないダニエルだったが、ある日、不思議な老人ミヤギが凄腕の空手で彼らを蹴散らしてしまう。ミヤギに空手の教えを請うダニエルだったが、練習とは名ばかりの雑用を押し付けられてしまい…
もちろんこの後は、ダニエルが空手選手権でジョニーを破るという王道の展開が待っています。しかも彼女までゲットするというおまけ付き。しかし、この物語をジョニーの視点から見てみるとどうでしょうか。
俺はジョニー、少年空手選手権のチャンピオンだ。Cobra Kai道場で空手を始めてから、俺の人生は右肩上がり。もう悪いことはやめたし、残りの高校生活は空手に専念するつもりだ。だけど、ある日ダニエルとかいう奴が俺の元カノにちょっかいを掛けているところを目撃しちまった。俺は彼女と話がしたかっただけなのに、身の程知らずのあいつは俺に突っかかってきやがった。もちろん軽く捻ってやったけどな。それでも奴は懲りないらしく、ミヤギとかいう変なジジイを連れてCobra Kaiの道場に乗り込んできやがった。しかも、あろうことか、その二ヶ月後の空手選手権の決勝戦で俺はあいつに負けちまった。悔しいけど、俺は素直に負けを認めたよ。でもセンセイは納得が行かないらしく、俺を締め上げてきたんだ…
これは筆者の想像で補ったあらすじではなく、原作の映画内で描かれているジョニーの台詞や行動を元にまとめたものです。ダニエルとジョニーが初めて対峙するときに、先に手を出したのもまた主人公のダニエルなのです。
現在配信されている「Cobra Kai」シリーズでは、上述のジョニーの物語に加えて、彼の子供時代の悲惨な家庭状況や、そこから彼が空手に傾倒していった経緯が克明に描かれています。
続きを読むにはメンバーシップ登録が必要です
今すぐ10日間無料お試しを始めて記事の続きを読もう
400本以上のオリジナルコンテンツを読み放題
KAI-YOUすべてのサービスを広告なしで楽しめる
KAI-YOU Discordコミュニティへの参加
メンバー限定オンラインイベントや先行特典も
ポップなトピックを大解剖! 限定ラジオ番組の視聴
※初回登録の方に限り、無料お試し期間中に解約した場合、料金は一切かかりません。