チャート席巻のMrs. GREEN APPLEが背負うもの──Billboard運営が分析する2025年の音楽業界
2025.12.15
クリエイター
この記事の制作者たち
『GeoGuessr(ジオゲッサー)』という、Googleストリートビューを使ったブラウザゲームをご存じだろうか。プレイヤーは世界中のどこかにランダムに飛ばされ、画面に映る風景のヒントを頼りに、自分が今いる“場所”を当てていく。
地理の知識はもちろん、道路のペイントや電柱、植生、建物の雰囲気──そんな一見「取るに足らない」風景の要素までも読み解いていくゲーム性が、多くのプレイヤーを夢中にさせている。
遊びながら自然と地形や建築、言語、文化といった知識が身につき、“世界の見え方”が変わっていくのも『GeoGuessr』の大きな魅力。
今回は、『GeoGuessr』の公認プレイヤーとして伝道師的な活動を展開するDaig_Oさんと、慶應義塾大学SFC教授として「地上学」を提唱し、ランドスケープデザインや地理学を探求する石川初さんを迎え、『GeoGuessr』が変える世界の見方、地図の遊びの可能性についてお話を伺った。
この画期的なゲームが、私たちの認知や学習、そして日常の風景に対する感性をどのように刺激しているのか。地上学、認知科学、そして熱狂的なゲームプレイの視点から、その核心に迫っていく。
目次
- 地上を歩いて見えるものを探求する「地上学」と『GeoGuessr』
- 『GeoGuessr』を実際にプレイ 重要なのは「最初の印象」
- 『GeoGuessr』的思考で世界の見え方が変化する
- 「取るに足らないもの」で光景を捉える
- Googleが生み出す「つまらない風景の連鎖」だからこそ学ぶものがある
- 地上の身体(虫の目)と地図(鳥の目)が結びつく瞬間
──まずは、お二人のプロフィールや『GeoGuessr』に興味を持ったきっかけについて伺えればと思います。石川さんからお願いできますでしょうか。
石川初 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)で教育と研究に携わり、研究室を持っています。
もともと大学では造園学を学び、卒業後にはゼネコンの設計部で建築の外部空間や公園などのランドスケープデザイン、都市の緑地やオープンスペースの計画・設計の仕事を行っていました。その後、ご縁があり10年前から慶應に移り、今に至ります。
──石川さんの専門分野として「地上学」を掲げていらっしゃるかと思いますが、この地上学について、説明をお願いできますでしょうか。
石川初 SFCに着任する際、私の興味が建築や造園といった分野に収まらないと感じました。地理学など既存の分野はありますが、それらに限定せずに、この地上を歩いて見えるものを探求しようという思いで「地上学」を掲げたんです。
ただし、地上学という学問があるわけではなく、研究室の名前は「地上学への研究」としています。
とはいえ、ゼミ生の研究テーマはバラバラです。地図のデザインの研究をしている学生もいれば、ダンスの動きを利用して子どもたちを公園でより遊ばせるための研究をしている学生もいます。他にも「世界の中華街がなぜ中華街に見えるのか」を研究した学生や、ガソリンスタンドやロードサイドの風景が自分にとって癒やされる風景だと主張し、その特徴を分析する学生もいましたね。
──かなり多様なんですね。ありがとうございます。続いてDaig_Oさん、自己紹介をお願いします。
Daig_O はい、Daig_Oと申します。僕は『GeoGuessr』の公認プレイヤークリエイターという肩書で活動させていただいています。普段は社会人です。
『GeoGuessr』と出会ったのは6年ほど前に偶然このゲームを見つけてからです。もともと世界の景色に興味はありましたが、さらにそれらがランダムに現れ、ゲーム性が追加されている点に強く惹かれ、あっという間に熱中してしまって。
──Daig_Oさんがはじめた当時は、まだまだ無名のゲームだったんですよね。
Daig_O そうです。特に日本ではほぼ誰もやっていない状況だったから「こんな面白いゲームが流行らないはずがない!」と思ってYouTubeをはじめました。その時からずっと、伝道師として活動していきたいという思いで続けています。
最近はコミュニティも大きくなって、公式世界大会の解説をしたり、地方イベントに参加したりと、多方面から楽しさを伝えられるようになりました。
──Daig_Oさんは『GeoGuessr』をはじめる前から地理や地図に興味があったのでしょうか?
Daig_O もともと地理にはそんなに興味はなかったんです。海外旅行や世界の綺麗な景色は好きでしたが、学校でやる地理の勉強には「何が面白いんだろう」というくらい関心がありませんでした(笑)。
大学では神経科学や視覚情報処理のような、脳の研究をしていて。『GeoGuessr』に絡む要素は今までの人生では正直なかったんです。社会人になってから、こんなに人生がガラッと変わるとは思いませんでした。
──『GeoGuessr』のトピックについて深掘りしていきたいのですが、石川さんは対談のために、はじめてプレイされたそうですね!
石川初 はい、 独特のコツがいりそうでなかなか難しいですね(笑)。 ただ全く何も分からないわけでもなくて「これは東欧かな?」などと、なんとなくわかるような気がしました。
──『GeoGuessr』の魅力を知るには、一度Daig_Oさんに、どのように国を判別するのか思考プロセスを言語化していただくのが早いかと思います。デモンストレーションをお願いしてもよろしいでしょうか。
Daig_O はい、分かりました。僕がプレイ中に何を考えているのかをプレイしながら喋っていきますね。
『GeoGuessr』で今回出現した地点
Daig_O まずここは第一印象として寒そうですよね。雪があり、針葉樹が多く、赤い建築や白樺もあります。この木造の赤い建築は北欧、特にスウェーデンやフィンランドに多い印象です。
次に太陽の位置を確認します。コンパスを見ると太陽が南側にあるということが確認できるため、今いる場所が北半球であるとすぐにわかります。
少しトリッキーですけど「Gen4」という、Googleストリートビューにおいて一番綺麗な撮影世代で撮影されていますね。Googleストリートビューは1から4までの撮影世代があるんですけど、「Gen4」で撮影されていない国もあるので絞り込みのヒントに使えます。ここまでがパッと見た印象ですね。
次に、より細かく標識や道路などのインフラを確認します。この黄色と赤の標識は北欧の中でも特にスウェーデンとフィンランドで使われているデザインです。ノルウェーは赤と白なので除外できます。
黄色と赤の標識
Daig_O そして、道路の線に注目します。この外側の線が白い点線になっているのが見えます。スウェーデンは点線が多いですが、フィンランドは基本的に実線です。ノルウェーは白い線がもっと長いスパンで点線が書かれています。
この時点で、国はスウェーデンに確定できます。これら全ての情報は経験を積むと5秒ぐらいで頭の中で整理できるようになります。
石川初 めちゃくちゃすごい! 移動なしの最初の情報でそこまでわかるんですね!
Daig_O 移動ができるモードの場合は道路番号を探したりします。ここに看板があり、「ヨックモック(JOKKMOKK)」という地名と、45番の高速道路の番号が見えます。ヨックモックはスウェーデン北部の地名なので、この辺りで推測が完了しますね。
道路の線とヨックモック(JOKKMOKK)の標識
──ほんの数分でここまで特定していく姿は何度見ても凄まじいですね……。もう1ラウンドお願いしてもよろしいでしょうか。
新たに出現した地点
Daig_O やっていきましょう! 次の地点は暖かそうですね。ヤシの木はヨーロッパには基本的にはない植生です。あと屋根の造りを見ると伝統的な東南アジアっぽいですね。
これらの要素から東南アジアに絞られたところで注目するのは電柱のペイントです。電柱に黒いペイントがされているのが見えますね。
続きを読むにはメンバーシップ登録が必要です
今すぐ10日間無料お試しを始めて記事の続きを読もう
残り 7954文字 / 画像9枚
800本以上のオリジナルコンテンツを読み放題
KAI-YOU Discordコミュニティへの参加
メンバー限定イベントやラジオ配信、先行特典も
※初回登録の方に限り、無料お試し期間中に解約した場合、料金は一切かかりません。