「自分はもうオワコンだ」やみえんがバーチャル化してVR空間で実現したかったこと
2024.10.06
クリエイター
この記事の制作者たち
連載企画「パラレル化するVRChat:白の章」の第一弾では、2024年にストリーマー・スタンミさんをきっかけにVRChatをはじめた人を「スタンミ世代」と名付け、スタート後の行動やプレイ環境などをアンケート形式で調査した。
グラフ化することで見えてくる傾向は、人口増加に大きく寄与したこの世代の足取りを示す、貴重な資料となった。しかし、それぞれの細かな足取りは見えにくい。どのようにVRChatを知り、どんなことにハマっていったのか――それを知る方法はシンプルだ。本人たちに直接聞けばよい。
本記事では、300人超のアンケート回答者に対し、VRChatを遊びはじめる前後のライフスタイルや、現在VRChatでどのようなことをしているか、個別にインタビューを実施した。本音を言えば、取材OKを出してくれた人全員にアタックしたかったが、今回は4名に絞らせてもらった。いずれも、バリエーション豊かな面々に取材のご協力をいただくことができた。
彼らがたどった道のりは、ともすれば2025年現在、そして2026年のVRChat新規プレイヤーにも、参考になるところがあるだろう。新たな局面を迎えつつある日本のVRChatコミュニティで、活き活きと暮らしている「スタンミ世代」のリアルな声をお聞きいただければ幸いだ。
目次
- イベントキャストとしてVRChatを楽しむ──ツクモシオさんの場合
- スタンミ愛用アバター「バメッサ」が生んだ繋がり──あめまるさんの場合
- クリエイターコミュニティとしてのVRChat──鴉屋ポテちさんの場合
- VTuberだからこそ気づいたVRChatの魅力──歌方こよいさんの場合
最初にご紹介するユーザーはツクモシオさん。2024年8月1日にVRChatをスタートした、「スタンミ世代」ド真ん中の一人だ。
メインアバターは、いわゆる「ケモノ系」のアバター「フォシュニア」(外部リンク)。VRChatで会った姿は、小さく愛らしいものだった。
ツクモシオさん
筆者が彼に話を聞きたいと思った理由は、エンタメイベント「Scream Garden」の配信をきっかけに、イベントキャスト活動をはじめた、という回答があったからだ。昨年、スタンミさんが弟者さんと共に訪れ、筆者も現地を取材し、KAI-YOUでレポート記事を執筆した思い出深いイベントだ。
ツクモシオさんはもともと、『Valorant』などのPCゲームを仲間内でプレイするのが趣味だったという。高校時代からの7年近い付き合いのあるネットの友人と共に遊んでいるとのこと。ストリーマーもある程度は認知していたが、スタンミさんは名前すら知らなかったと語る。
「スタンミさんとVRChatの存在を知ったのは、ショート動画がきっかけでした。『ボイチェン人狼』や、トコロバさんと遊ぶ配信の切り抜きが、当時ショートでとても流行っていたんですよね」
こうして興味を持ったツクモシオさんは、「Meta Quest 2」単騎でVRChatに飛び込んだ。もともと『ルインズメイガス』などのVRゲームに興味があり、「Meta Quest 2」は所持済みだったそうだ。
ホコリを被っていた「Meta Quest 2」を引っ張り出し、「日本人向け 1対1お話しワールド NAGiSA [JP]」も訪れたツクモシオさんが最初に感じた魅力は、「色々な人がわちゃわちゃしてて、すっごく楽しそうに過ごしているのを見て、このゲームなら続けられそう」という感慨だったという。
「もともと、自分は『荒野行動』などのスマホゲーからゲームを始めました。こうしたゲームはチームを組む必要がありますけど、基本的にメンツは固定化されます。楽しいけれど、仲違いが起きると面倒なことになるんですよね。それに、サービスが終了すると、つながりはほとんど自然消滅します」
「でも、VRChatは、どこかの場所に行けば誰かしらはいますし、友達の友達とも自然と仲良くなって、より大きな交友の輪が生まれる。もともと人と話すことが好きなので、そんな空気感がとても好きになりましたね」
ゲーム用チームのDiscordサーバーを管理し、そこでの揉め事の仲裁なども経験したこともあるツクモシオさんにとって、VRChatは「オープンな世界」として魅力的に映ったのだろう。当然ながら、音声コミュニケーションには抵抗がない。潜在的な相性の良さが光った事例と言えそうだ。
その後、ツクモシオさんは「日本語話者向け集会場「FUJIYAMA」JP」の訪問と、サンプルアバターの利用のために、ゲーミングPCと接続するPCVR環境へ移行した。その間、スタンミさんは様々なイベントを訪問し、その様子を配信で伝えていった。
「スタンミさんのイベント配信をきっかけに、イベントに興味を持ちはじめました。『電脳カルテ』の回では本職の栄養士さんが現れたりして、『イベントキャスト』ってすごいんだな」と感じたのが大きかったです。そして、『Scream Garden』の回を見て衝撃が走りました。圧倒的な演技とショーで、スタンミさんも含め、会場は拍手喝采……その光景を見て、『リアルとは違う自分になって、これからVRChatをはじめる人も含めて、いろんな人を楽しませられる存在になりたいな』って思ったんです」
こうして、イベントキャストへの憧れを抱いたツクモシオさんは、ほどなくして夢を叶える。イベント「VRCふれあい動物園」のキャストとしてデビューしたのだ。
動物や飼育員を演じるキャストとの交流を楽しめるこのイベントで、ツクモシオさんが任された配役は「水辺エリアの飼育員」。VRChat開始から1ヶ月ちょっとで、キャストとしての道を歩み始めたことになる。
ツクモシオさんのアバター。「VRCふれあい動物園」キャストの姿。
「どうすればキャストになれるかわからず、ぼんやりと過ごしていたある日、Xで新規キャスト募集のお知らせが流れてきて。『これだ!』と思って、真っ先に応募しました。もともと、動物園や水族館も好きだったので、本当に願ったり叶ったりな出会いでした。初心者にも関わらず、受け入れてくださった園長(編注:イベント主催者)には感謝です」
現在もツクモシオさんはこのイベントに所属しており、現在は「園長代理」としてキャストの相談事に乗るなど、イベント全体を支えるポジションにいるという。
さらに、愛用アバター「フォシュニア」が接客を行う「フォシュニアカフェ Elcia」のキャストや、新規イベント「Cafe and Bar MoNo」のスタッフ兼キャストもこなしている。ファンも着実に増えているようで、慌ただしくも楽しいキャストライフを満喫している。
猫カフェの猫がフォシュニアに変わっちゃった!?
不定期月2回火曜日 開催
Foshunia Cafe Elcia個性豊かな可愛いフォシュニアたちに会いに来てねっ!#Elcia_VRC #フォシュニア #VRC pic.twitter.com/ponNWciGo0
— Foshunia Cafe 『 Elcia 』 (@Foshunia_cafe) August 20, 2025
イベント「Cafe and Bar MoNo」ポスター
もちろん、プライベートのVRChat生活も続いている。とはいえ、現在はパブリックワールドよりもFriend+インスタンス……つまり、「フレンドが誰かしらはいる場所」で時間を過ごすことが増えたのだそう。この傾向は、先日のアンケート結果の解析から見えた、特徴的なユーザー動向の一つだ。その理由はごくシンプルなものだ。
「最初は、NAGiSAやFUJIYAMAなどのパブリックワールドで、同時期に始めた人を中心にとにかくフレンド申請を飛ばし合いましたね。特に、NAGiSAがバグで5分ローテションしなくなった日は、逆にみんなノリがよくなって、フレンドになった人がたくさんいます。そこからは、フレンドになった人がいるインスタンスで過ごすことが増えましたね」
よくよく考えれば、パブリックワールド訪問の目的が「交友関係の拡大」である場合、一度交友関係が構築されればFriend+インスタンスへ移行するのは自然なことと言える。また、「フォシュニア」ユーザーの交流イベントでもフレンドが増えており、いわば「同好の士」が集まる場としてのFriend+インスタンスで過ごす時間も多くなったという。
ちなみに、FUJIYAMAに通っていた際には、あえて参加人数の少ないインスタンスを訪れていたそう。ツクモシオさん曰く、人数の少ないパブリックワールドは「会話の輪」が未形成であることが多く、ささいな声掛けをきっかけに会話の糸口が掴みやすいそうだ。
「FUJIYAMAには喫煙所コーナーがあるんですが、そこでボーっとしていると、初心者さんがきたり、好みのアバターを使っている人が来るんです。そんな人に声をかけて、話始めて見ると、喫煙所の物珍しさもあってか、だんだんと人が集まってきたんです。そこから輪ができていって、フレンドが増えていきました」
ツクモシオさんのように、コミュニケーションに積極的なユーザーは、「スタンミ世代」に多く見られる特徴といえる。ちょっとしたきっかけから会話を始め、交流を深めていくスタイルは、筆者も舌を巻いているところがある。
取材時のツクモシオさんのアバター。コンセプトは「ヤブ医者」とのこと
最後に、ツクモシオさんの回答の中でも、VRChatの魅力について聞いた質問で、「『なりたい自分』『理想の自分』を表現出来るところ」という回答が印象的だった。その点について、少し深堀りしてお話をお願いしてみた。
「いろいろな人のアバターを見てきて、その中に一つのテーマのようなものを感じました。そして、一つテーマを決めて姿を形作り、望む動きを自分でして、時にはロールプレイもできる……しかも、ケモノや宇宙人のように、人間にこだわらなくてもいい」
「好きな姿をつくって、好きなことができる。それが本当に楽しいんです。しかも、キャストイベントだったら、その『好きなこと』で誰かを楽しませることもできるんです」
「ただの一般人が、キャストになるだけでこんなに意識が変わったことに驚いたし、とても嬉しいと感じています。人生を変えてくれたスタンミさんには、いつか直接会って、お礼がしたいですね」
誰かの「なりたい存在」に感化された人が、自らの「なりたい存在」を演じ、それがまた誰かに夢を届ける。文化とはこうして継承されていくのだろう。
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