仮想空間に持ち込んではならないもの VR法人HIKKYの拓くVR経済圏

Interview

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  • 2021.02.19 20:00:00

わずか3年足らずで急成長を遂げるベンチャー企業・HIKKY。

バーチャルマーケットを主催するVR法人は、どのように生まれ如何にして成り立っているのか。

仮想空間に持ち込んではならないもの VR法人HIKKYの拓くVR経済圏

バーチャル空間につくられた会場で、アバターや3Dアイテムといったバーチャルな商品のみならず、アパレルなどのリアルな商品の売買が行われ、のべ100万人以上が参加する世界最大のVRイベント「バーチャルマーケット」(Vket)。

はじめは2018年に3Dデータのやりとりを目的として開催されたイベントだが、回数を重ねるごとにその規模を急速的に拡大。5回目となる「バーチャルマーケット5」ではウォルト・ディズニー・ジャパンや東宝といった誰もが知る大型企業も出展し、リアルのものを含めても最大級のマーケットフェスティバルと呼ぶにふさわしい規模へと成長した。

運営を行うのはVR法人HIKKY。2018年5月に設立後、「人の創造性を既存の価値観から解き放つ」をテーマに事業を展開し、わずか3年足らずでxR業界(注1)をリードするキープレイヤーへと成長した注目のベンチャー企業だ。

公式ホームページには代表取締役・舟越靖さんの名前に並び、取締役CVOという見慣れない文字が見える。「Chief Virtual-Marketing Officer」バーチャルマーケット担当役員という特殊な役職についているのが、VTuberとしても活動するクリエイター、動く城のフィオさんだ。

元々はHIKKY所属のアーティストとして「バーチャルマーケット」を主催し、2019年よりHIKKYのCVOに就任。現在はクリエイティブに関わるだけでなく、会社経営にも参加し、バーチャル空間における流通や経済の発展を促進させる為、日々腕を振るっている。

Virtual Market プロモーションムービー

いくらVRという新興市場の企業とはいえ、VR法人HIKKYの取り組みは異質だ。だがその異質さこそが、いまだ広がり続けるフロンティアであるVR領域をリードする革新的な取り組みの数々を生み出しているとも言える。

今回はその異質さを象徴する取締役CVO・動く城のフィオさん、そして代表取締役・舟越靖さんにお話をうかがう中で、未開の領域で先頭に立ち続ける覚悟を探る。

異質で新しいことづくめに見える取り組みの数々、だが彼らは本気でそれを人々の日常に、未来の当たり前にしようとしている。

(注1)仮想現実や拡張現実、複合現実。それぞれVRやAR、MRと略されるコンピュータにより生成された空間を体験できる技術の総称

目次

  1. バーチャル空間では友達になる速度が速い
  2. 「xRオープンイノベーション」が生み出す革新
  3. 経済圏を壊さないために、“やらない”と決めていること

バーチャル空間では友達になる速度が速い

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(左から)舟越靖さん、動く城のフィオさん/取材はもちろんVRChatにて

──VR法人HIKKYがどんな会社なのか気になります。社長の舟越さんに社員さんがタメ口でやり取りするといったフランクな社風という噂もありましたが、これは本当なのでしょうか?

舟越靖(以下舟越) めちゃくちゃタメ口ですね、なんならタメ口ならまだマシって思えるくらいにラフなやり取りをしていることもあります(笑)。

動く城のフィオ(以下フィオ) 舟越さんは愛され社長ですからね(笑)。

舟越 海外には敬語の概念がないので、会社組織でも下の名前で呼び合ったりするのが一般的ですよね。その感覚に近いような気はします。

フィオ VRだと特に顕著なんですが、年齢や性別、これまでの経歴が一切関係ないんです。年上だろうが年下だろうが、最初は少しだけ敬語使って仲良くなってくるとタメ口になる(笑)。

バーチャル空間だと友達になる速度が速いので、その延長でバーチャルマーケットのスタッフもみんな友達みたいな距離感で取り組めているんだと思います。

舟越 僕はリアルだとごついおっさんなので、普通にしてたらめっちゃ敬語使われますけど、バーチャル空間でならそのイメージもなく誰とでも普通に話すことができます。

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リアルでの船越さん

若い人ともスムーズにやりとりできて僕自身も楽しいですし、外見に左右されず中身で話ができるのは素晴らしいことですよ。

──オフィスに設置されたモニターに作業中のフィオさんが映るようにするVR出社という形式をとられているのも有名ですが、リモートワークも当たり前になった現在では他のスタッフの方々もVR出社されているのでしょうか?

舟越 どうしても出社しないと成立しないといけない業務もあるので、何人かはオフィスにきていますが、ほとんどVR空間のオフィスへのVR出社になっています。リアルのオフィスはそれなりに大きくて、かつてはパンパンに人がいたのですが、今ではすっからかんです(笑)。

HIKKY広報大河原さん 自宅に環境が整っているので、わざわざ会社に行く意味がわからなくなっているんですよ。そもそも私とフィオちゃんは一回も会ったことがないですし、大阪や九州、アメリカやカナダなんかに住んでいるメンバーもいます。それでも一年以上普通に仕事ができていて、困ったこともほとんどありません。

バーチャル会議室.jpg

HIKKYのバーチャル会議室

フィオ コロナ禍になってからは私も一回も出社してないですし、そもそも3回くらいしかオフィスにいったことないんじゃないかな? 去年は結構新入社員さんも増えたんですが、誰も私フィオの顔を知らないと思いますし、逆に私も知りません(笑)

顔もそうだけど、お互いに本名を知らないのも普通で、半分以上はハンドルネームで呼び合っているんです

舟越 ハンドルネームで呼び合うのが定着していて、業務上は問題ないのですが経理や事務には苦労をかけています(笑)。本名とハンドルネームがあるなんて一般の会計ソフトじゃ対応できないですから。

本名を徹底して非公開にしたいというメンバーもいて、その意思も尊重しています。以前は間違えて公開していない本名で呼んでしまい揉めるなんてこともありましたが、最近はそんなトラブルもなくなって、ハンドルネームでやり取りすることも当たり前になっているんです。

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