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2020.11.12
音楽における「愛」とは何か? そして、「愛」はヒットを担保するか?
クリエイター
この記事の制作者たち
計算によって、ヒットを生み出すのは不可能に近い。それでもヒットソングたちには欠かせないピースがあり、その確率を引き上げることはできるのではないか。
映画『花束みたいな恋をした』のインスパイアソング「勿忘」が2021年現在、空前のヒットを記録しているAwesome City Club(オーサムシティクラブ)のatagi。
そして、自身も社会現象になるヒット作を生み出している音楽家・大石昌良。
音楽における「愛」の重要性、しかしその法則が必ずしも通用しないTikTokについて、稀代のソングライター同士がガチで意見を交わす。
目次
- 愛の濃度は、ヒットを左右する?
- TikTokで起きている、皮肉な(?)現象
- シンガーソングライターの長所と、弱点
- 「もっと普通じゃないって伝わってほしい!」
──「勿忘」はいわゆる主題歌ではなく、インスパイアソングという特殊な位置づけですよね?
atagi 元になった映画に出演させていただいたので、完成披露試写会をメンバーみんなで観にいったんです。そしたらむちゃくちゃ面白くて、僕にしてはめずらしく歌詞が湧いてきたんですよ。
映画自体はカラッとしていて、「勿忘」で歌っているようなジトッとした感じではないんですけど、僕はそこに違和感を覚えていて。このモヤっとした気持ちはなんだろうと考えた時に、この映画を観てみんなの胸の内に呼び覚まされる感覚が見えた気がしたんです。
そんな感覚は僕も初めてだったんですけど、それがきっと愛であり、作品を自分なりに解釈して音楽として再構築するために必要なことなのかなと思えました。
大石 結局そうなんですよね、好きとか愛の濃度が高い楽曲って絶対ヒットする。
アニソンも同じで、作品のファンになって愛を注げば注ぐほど曲は良くなるんです。でも愛を注ごうにも、1人で自分に向き合って曲を書いているとどんどん注ぐための器が満たされてしまっていく。でも作品へ愛を注ぐ場合は別の器に注ぐことができるので、また違う視点を持つことができるんですよね。
atagi 作品に愛を注ぐことで得られる客観性みたいなものは、確かに僕も得られました。自分たちで曲をつくってる時はこの感覚が足りてなかったんだなと勉強にもなりましたね。
──ヒットの実感がないというお話もありましたが、「勿忘」はTikTokでも大ヒットという現代的な広まり方もしています。こちらについても予想外でしたか?
atagi そうなったらいいなと思ってそれ用のフォーマットは用意してましたけど、ここまでになるとはもちろん想像していませんでした。踊ってもらったりもそうですけど、めちゃくちゃ歌のうまい高校生がカバーしてるのを見た時にすごいことになってるなって実感が急に湧いてきましたね。
大石 愛の濃度が高ければヒットすると言いましたが、一方でTikTokはどこまでもナチュラルで、計算してヒットを生み出すのは不可能なんですよね。だから種をまいて育つのを待つしかない。
atagi 本当に。avexの方から「TikTokはバズらせようと思っても無理だ」って口酸っぱく言われていました。
大石 僕アボカドを育てるのが好きなんですけど、アボカドって種を水に浸けておいても10個に1個くらいしか芽が出ないんです。TikTokもそれくらいの感覚で、とにかく撒いて待つしかない。
atagi でもヒットしている曲の傾向を考えると、明らかにJ-POPのフォーマットとは違ってきてますよね。
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