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  • 2020.11.05

「紅蓮華」生んだ草野華余子は、かつて大石昌良に救われた

今アニソン界で最も注目される1人である草野華余子。自身と同じくシンガーソングライターであり作家である大石昌良のファンを公言する。

近しいキャリアの2人は、お互いの楽曲をどう評価するのか?

「紅蓮華」生んだ草野華余子は、かつて大石昌良に救われた

左:大石昌良 右:草野華余子

10月から『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が公開され、社会現象化が過熱している『鬼滅の刃』。

テレビアニメ版の主題歌である「紅蓮華」は、オリコンデジタルチャートにおいて平成最後の1位と令和最初の1位を獲得するという偉業を収め、2019年末のNHK紅白歌合戦でも披露されるなど、アニソンの枠を超えて社会に飛び出し、現在のシーンを語る上で欠かせない楽曲になっている。

LiSA 『紅蓮華』

その「紅蓮華」の作曲を手がけたシンガーソングライターで作家の草野華余子は、かつて、同じく作家でシンガーソングライターでもある憧れのアーティスト、大石昌良に救われた過去があったという。

奇しくもこの7月には、その大石昌良と草野華余子が同じ事務所に所属する運びとなった。浅からぬ関係性を持ち、今再び同じ傘のもとに邂逅した二人に対談の席を用意した。同じ境遇を辿ったものとしてお互いを知り尽くしているかのように思いを交わし合う。

コロナ禍で、アニソンを含めた音楽シーンは大きな変化を強いられ、エンターテイメント全体の状況は1年前から想像もできないほどの変貌を遂げてしまった。だがそんな状況にあっても音楽は鳴り、歌は人の心に響き続ける。

大石昌良の本音「音楽に物語を」、再始動

ホスト:大石昌良 ゲスト:草野華余子 取材・執筆:オグマフミヤ 撮影:I.ITO 編集:新見直

目次

  1. 草野華余子、大石昌良と出会う
  2. シンガーソングライター作家の特徴
  3. 「紅蓮華」分析と誕生秘話
  4. 草野華余子を導いた、大石昌良の言葉
  5. 「大石昌良とオーイシマサヨシ」と「カヨコと草野華余子」
  6. 「私のこと食わしてくれんのか?」

草野華余子、大石昌良と出会う

──大石さんの対談連載の再開にあたり、大石さんと同じく作家としての顔を持ちながらシンガーソングライターとしても活躍する草野華余子さんをお呼びしました。

アニソンシーンで活躍するトップクリエイター同士という共通点に加え、昔からいろいろとご縁もあったそうですが、そもそもお2人は7月から同じ事務所(CAT entertainment 株式会社)に所属してらっしゃいますね。

※2020年4月、大石さんの所属してきた株式会社F.M.Fのアーティストマネジメント部門と、大石さんの盟友「Tom-H@ck」こと大嶋文博さんが代表取締役を務める株式会社TaWaRaが合併してCAT entertainment株式会社に

草野 もう大騒ぎですよ、あの大石さんと同じ事務所って!

大石 同じ事務所になったとはいえ、会う機会が増えたわけでもないのであまり変わらないんですけど、華余子ちゃんがそんなに盛り上がってたとは(笑)。

──草野さんはかねてから大石さんの大ファンとのことですが、いつごろからファンになられたのでしょう?

草野 私の父親とサウスケ(Sound Schedule)のドラム・川原(洋二)さんの親戚の方が一緒に仕事をしたことがあり、私が17か18くらいの頃にサウスケのDVDをもらってきてくれたんです。その前からラジオで聞いたりして知っていたのですが、DVDを見てから妹ともっとハマっちゃって、メジャーデビューツアーとかライブも見に行くようになりました。

大石昌良としてソロ活動を始めた後ももちろん追いかけていて、天王寺にある「Hoop」でやっていた(2ndシングル)「うしろのしょうめん」のリリースイベントにも行きました。「お互い音楽頑張ろうね」みたいなサインを書いてもらったこともあるんですよ。

大石 草野華余子に「お互い音楽頑張ろうね」なんて言ってたなんて黒歴史ですよ(笑)。めちゃくちゃ恥ずかしい。

草野 当時の私は全然うだつのあがらないバンドマンの一人でしたから。大石さんのホームでもある神戸のライブハウス「ART HOUSE」に出させてもらったりもしていて、ブッキングマネージャーもやっていたアルカラの(稲村)太佑さん(関連記事)に、サウスケのライブあるからおいでよとか誘われていた後輩の一人でした。サイン会の時もずっと緊張してましたよ。

それくらいファンですし、今もファンの気持ちが抜けないので今日は正面から見れないかもしれない

DSC01853.jpg

大石 さっきも楽屋で、対談で話すことなくなるから今はあんまりしゃべらない様にしようねって言ってんのにずーっと話してくるんです。

草野 サウスケで一番好きな曲は「アンサー」です! って(笑)。ソロ時代の好きな曲ベスト5の話はまだしてないですよね?

Sound Schedule「アンサー」

大石 こんな感じで話しかけてくれるから、僕も気兼ねなく接することができますし、同業者になってからも相談にのったりのられたりなんてこともありました。人懐こいしコミュ力も高いから、僕だけじゃなく色んな人の懐にスッと入っていく。

──大石さんが草野さんをアーティストとして認識したのはいつだったのでしょう?

大石 確か同じ日に近くでライブをやっていて、挨拶しに来てくれたことがあったんだよね。

草野 当時のマネージャーさんが大石さんとも知り合いで。積年の思いを抱えて震えながら会いに行って、「くくくさのかよこです、今はアニソン書いたりもしてますけど元々ファンで…!」みたいな挨拶をした記憶があります。

大石 (岸田教団&THE明星ロケッツの)ichigoちゃん経由で名前は知っていたので、あの華余子ちゃんですかみたいなやりとりをしたんですけど、もうその頃から懐入ってきていて(笑)。もうアニソン界の豊臣秀吉かなと

草野 靴あっためましょか?

大石 もうあったまっとるわ(笑)!

※ichigo 岸田教団&THE明星ロケッツのボーカル。作家としての草野華余子が所属するソニー・ミュージックパブリッシングに共に所属しており、親交が深い

──これまでの対談でもサウスケ時代から知っているという方はいらっしゃいましたが、草野さんからは特別強い思いを感じますね。

草野 昔の彼氏がサウスケのコピバンをやっていて、「幼なじみ」とか「君という花」とかをコピーしていたんですけど、ライブのたびにダメ出しするなんてこともありましたね。

大石 嫌な彼女やわ(笑)。でも華余子ちゃんは恋愛遍歴とかをちゃんと言うんだね、しかも音楽家と付き合っていたなんて。

草野 というか、音楽家以外付き合ったことないかも…

大石 自分のバンド内に元カレがいるって状況はなかっただけよかった(笑)。

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