MCバトルという料理は、ヒップホップという器を超えた──「BATTLE SUMMIT」レポート後編
2022.09.17
ラッパー/ビートメイカー/DJとして活動する大阪府西成区のラッパー・S-kaine。
弱冠20歳ながら、彼は黙々とスキルとキャリアを積む。まるで生き急いでいるかのように──
クリエイター
この記事の制作者たち
「そんなに長生きなんかしたくないっす」。
いかつい風貌やスタイルとは裏腹に、穏やかな物腰のS-kaineが、その瞬間は真っ直ぐに目を合わせ、きっぱりと言い放つ。
生き急いでいる感じがあった。自分のすべてを音楽に捧げると決め、実行している20歳。
「若いから」と形容するべきなのか、「若いのに」と形容するべきなのか、筆者にはわからない。
撮影:I.ITO
目次
- 全国を飛び回る黒き俊英・S-kaine
- 小6でサイファーを主宰
- 「最初、こいつシャブ中ちゃうかな?っておもた」
- 「客はナスビ」高校生ラップ選手権の舞台裏
- S-kaineが灯した火
- 超短期集中型
- のめり込んだら他のことが見えない
- ラップもビートメイクも、当たり前になればいい
短く刈り上げ黒々とした坊主頭に、きりっとした眉毛。
オーバーサイズのTシャツにパンツ、スニーカーという出で立ちで、威圧感のある巨躯。
楽曲やライブ、MCバトルで見せる、ダミ声を効かせたいかついスタイル。
S-kaineは、全国でのライブに楽曲制作に音楽の専門学校に、毎日寝る間を削って音楽活動に精を出している。
弱冠20歳という年齢からすれば、踏んでいる場数は同世代の中でも相当なもの。
ステージでの姿とは裏腹に、笑った目は優しく、話し方も落ち着いた関西弁がとても穏やかだ。
地元・大阪での取材を申し込んだところ、全国を飛び回っていてなかなか都合がつかなかったが、たまたま東京・町田でのライブ出演の翌日に時間をもらえることになった。
町田のクラブ・FLAVA。バトルでしのぎを削ってきたラッパー・K-Kが主宰するイベントだ。
共演者やスタッフ、フロアの反応も温かいが、はるばる関西から参戦したS-kaineの存在はやっぱりどこかアウェイだった。
すでに結構な量を飲んでいるのだろう、S-kaineの瞼はいつもより少し重たそうだ。
しかし、ステージに上がってマイクを握った瞬間、気怠げな空気は吹き払われ、瞳に強い光が宿る。
「俺の音楽は勝手に耳にこびりつくから」。ステージでそう宣言する。
同じクルーに所属するOGRE WAVEのDJのサイドMCから、S-kaineのワンマンライブへ。
堂々としたステージを見せつけ、機材トラブルの間、フリースタイルでK-Kとその場を繋ぐ姿まで含めて、すでに一角のラッパーとしての風格を纏っている。
早くも取材慣れしているのもあるのだろう、受け答えも落ち着き払っていたが、ステージでマイクを握った時の安定感はケタ違いだった。
と言うよりも、マイクを握った時に初めて完成するという印象を受ける。
「遊ぶ時ってなった時はゆるーい方ですが、曲つくるとか、ライブするとかはスイッチ入ります」
俊英のラッパー、そのキャリアはなんと小学生にまで遡る。
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