Interview

  • 2026.03.20

“韓国におけるJ-POP”の現在地──音楽ビジネス専門家が語る、世界進出への羅針盤

J-POPの海外展開を考える上で直視すべき、“数ヶ月以上に渡る時差”とは?

“韓国におけるJ-POP”の現在地──音楽ビジネス専門家が語る、世界進出への羅針盤

韓国におけるルミネイトの販売権を有するKreators Network Inc.にてHYPEER事業部・事業開発部の責任者/クリエイティブディレクターをつとめるJayden E. Sonさん

クリエイター

この記事の制作者たち

日本は今、コンテンツ産業を基幹産業として位置付け、2033年までに海外市場規模を20兆円に成長させることを掲げている。

その重要なコンテンツの一つであるJ-POPもまた、隣国・韓国のK-POPに追いつくべく、海外展開/世界進出の道を暗中模索している。

そんな中、2026年2月に開催された音楽業界関係者向けカンファレンス「NOW PLAYING JAPAN Vol. 5」(主催:Luminate、Billboard Japan)において、「J-POP IN KOREA」と題したプレゼンテーションが行われた。

登壇者は、韓国および日本を中心に活動する音楽ビジネス戦略家のJayden E. Son(ジェイデン・イー・ソン)さん。

そこで提示されたのは、韓国におけるK-POPとJ-POPの消費構造における違いと、日本の音楽産業がグローバル展開する上で直視すべき、“数ヶ月以上に渡る時差(タイムラグ)”だった。

目次

  1. 「ミドル層が非常に薄い」J-POPの残酷な現在地
  2. 韓国市場においてJ-POPは”再発見”されている
  3. 再発見されるまでにかかる14週間の時差
  4. 韓国独自の「Webzine」文化と流入経路の変遷
  5. J-POPを世界に届けるために──言語の壁ではなく「文脈」の壁を越える

「ミドル層が非常に薄い」J-POPの残酷な現在地

Jayden E. Sonさんは冒頭、韓国市場におけるJ-POPの現状を「残酷な数字」で突きつけた。

「J-POP IN KOREA」[1]

提示されたのは、韓国のストリーミングランキングTOP5000(2025年)におけるJ-POPのチャートイン状況だ。

そこで明らかになったのは、チャート内に10曲以上ランクインしているJ-POPアーティストも増えている一方、70%以上がチャート内に1曲しかランクインしていないという事実だった。

トップとボトムに対して、ミドル層が非常に薄いのです」(Jayden E. Son)

Jayden E. Sonさんはそう指摘する。TOP200という上位層に絞っても、その傾向は顕著だ。2021年には46.5%だった1曲のみチャートインしているアーティストの比率は、2024年には69.7%、2025年には70%を超えている。

J-POP IN KOREA」[2]

つまり、韓国市場においてJ-POPの大半は現状、TikTokやショート動画などで「特定の1曲」が単発で消費されているということだ。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進により、海や国境を越えて音楽を届けられるようになり、世界への扉は開かれた。地理的・文化的に日本と近い韓国において、確かにJ-POPというカテゴリは定着しつつある。一部のアーティストは、楽曲だけではなくアーティストとしての認知も獲得してきている。

しかしそれでもなお、多くのJ-POPアーティストは“一発屋”に近い状態で消費され、恒常的なファン獲得には至っていないのが現状だ。

韓国市場においてJ-POPは”再発見”されている

続いてJayden E. Sonさんは、J-POPとK-POPの消費構造の違いを知ることができる、とあるデータを紹介した。

2025年から2026年にかけて、ストリーミングランキングTOP200にランクインしたことのあるK-POPとJ-POPを、発売年で見た分布図だ。

J-POPの場合、2023年以前に発売された楽曲が全体の過半数を占めている。K-POP市場において、ヒットしているのは「新譜」ではなく「旧譜」なのだ。

「J-POP IN KOREA」[3]

対して、(自国の音楽なので当然ではあるが)K-POPは全く異なる動きを見せる。2025年のTOP200チャートにおいて、2025年発売の楽曲(78曲)と2024年発売の楽曲(55曲)を合わせると、全体の66.5%を占める。

Jayden E. Sonさんは、韓国市場において、K-POPが常に新譜がチャートを塗り替え続ける「新陳代謝の激しい市場」であるのに対し、J-POPは過去のライブラリから発掘された曲が主役となる「蓄積型の市場」である、と分析した。

韓国のリスナーは、K-POPは『今流行っているもの』を聴き、J-POPは『今発見されたもの』を聴いているのです」(Jayden E. Son)

再発見されるまでにかかる14週間の時差

なぜこのような現象が起きるのか? その理由は、“数ヶ月以上に渡る時差(タイムラグ)”にある。

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