Vol.1 個人発サイトがエンタメ/出版業界を席巻する理由

Interview

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  • 2019.05.31 11:00:00

Web小説の歴史は長い。インターネットが民間でも気軽に利用されるようになってから、個人サイトや掲示板では小説家志望やアマチュア作家たちの練習の場として、あるいは同好の士たちによるコミュニケーションツールとしても機能してきた。

そして現代。そんなネット発の小説群が出版業界、エンターテイメント業界に大きなインパクトを与え続けている。その中心的な場として在るのが「小説家になろう」というプラットフォームだ。

Vol.1 個人発サイトがエンタメ/出版業界を席巻する理由

「小説家になろう」に掲載された『転生したらスライムだった件』はアニメ、漫画、ゲームなどのメディアミックスも大成功し、多くのファンを持つ ©川上泰樹・伏瀬・講談社/転スラ製作委員会

ご存知の人も多いとは思うが「小説家になろう」とはプロ、アマチュアを問わず無料で参加できるインターネット上の小説投稿サイトだ。

サイト内にアップされた作品は65万以上、登録者数は150万人以上と小説の投稿・閲覧を軸にしたWebサービスとして日本最大級の規模を誇る

近年、単行本文庫を問わずいわゆる小説の市場が衰退しているなか、「小説家になろう」に掲載された作品が次々と書籍化され、これらの作品を称して「なろう系」というひとつのジャンルが生まれるほどの活況を呈している。

無職転生.jpg

理不尽な孫の手『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』は2013年10月から2019年2月まで「小説家になろう」累計ランキング1位を記録し続けるなど、「なろう系」の代表作といえる

またそこから漫画化やアニメ化、映画化など様々なメディアに展開する作品も多く、もはや「小説家になろう」はインターネット上に留まらず、出版業界ひいてはエンターテインメント業界全体に大きな影響力を持つ存在となった

しかし、その影響力の一方で「小説家になろう」自体の活動は極めて淡々としてみえる。積極的に外部へ向けてその存在を宣伝、告知することもなければ、新規事業を展開することもない。経営はほぼ自社内の広告収入で賄い、会社の規模も社員およそ20人程度だという。

今年開設15周年を迎えた小説プラットフォーム「小説家になろう」は、なぜこれだけ特異な存在になったのか。「小説家になろう」を運営する株式会社ヒナプロジェクトの取締役・平井幸さんと企画部部長・山崎翔子さんへの取材を通じて考えていきたい。

一ヶ月20億PV ユニークユーザー1400万人を擁する巨大サービス

──現在(2019年4月)「小説家になろう」の一ヶ月あたりの大まかなPV数とユニークユーザー数はどれくらいでしょう。

平井 一ヶ月あたりPVが大体20億で、ユニークユーザーが1400万人くらいです。

──すごい規模感ですね。サーバにかかる負担はかなりのものなのではありませんか?

平井 いえ、テキストベースの強みがそこに出ていまして、おそらく動画サイトなどに比べると天と地くらいの差があるかと。もちろんサーバ担当の者も頑張ってくれていますけれど、ただサイト全体のデータを抽出しても最近のHDDであれば一つに納まるくらいの容量のはずです。

──ユーザーの年齢層や性別の割合はいかがでしょうか。

平井 ユーザー登録されている方々のデータしかないので、実際に利用されている層とは少々異なるかもしれませんが、割合としては男性が6割くらい。女性は確実なのが3割で性別を入力していない方が1割くらいです(※1)。

年齢層は20代が44パーセントで半分近く、10代が14パーセント、30代が24パーセントと、これでほぼ8割を占める計算になります。あとは40代が12パーセント、50代以上が6パーセントくらいでしょうか。

※1「小説家になろう」はユーザー登録とログインを行わなくても、アップされた作品を閲覧することができる。

──予想以上に女性と10代、20代の比率が高いんですね。

平井 女性が多いのは、2004年の開設当時、携帯小説ブームから入ってこられた読者がいらっしゃるのも影響していると思います。年齢層に関してはWebで小説を読むという行為に馴染み深い若年層に偏ってはいます。

──なるほど。読み手と書き手では、年齢層は変わってきますか? 最近は社会人や30代以上の男性を主人公にした作品をよくランキングで見かけるので、書き手の高年齢層化が進んでいるのかと思ったのですが。

平井 そこに関してはデータがないのでわからないのですが、そこまでかけ離れてはいないと思います。

山崎 ただ、やはりランキングに入るような人気作になると、文章力や経験が豊富な30代、40代の方の作品が多くなりますね。実際には10代の方が書かれた作品も多くあるのですが、どうしてもランキングに入る頻度は高くはないですね。

平井 本当に趣味で書かれている方が多いので、投稿されている作品全体で考えれば、先のユーザーの年齢層の割合に近い結果に落ち着くのではないでしょうか。

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学生有志発Webサービスという意外な出自

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