
Vol.1 個人発サイトがエンタメ/出版業界を席巻する理由
Web小説の歴史は長い。インターネットが民間でも気軽に利用されるようになってから、個人サイトや掲示板では小説家志望やアマ…
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“Webで小説を読む”という新しい文化と、 “書籍化”を象徴とする既存の出版文化が、今後どのような関係を築いていくのか。
前回インタビューの「小説家になろう」から初の書籍化作品が登場したくだりと、合わせて読んでいただければ、開設から数年で“Webで小説を読む”文化が、どれだけ発展したかを感じることができる。
©川上泰樹・伏瀬・講談社/転スラ製作委員会
この記事は、下記連載記事の続きです。
「小説家になろう」の読み手が増大したのは2009年のリニューアルと、書き手の意識が変化した2011年の『魔法科高校の劣等生』『ログ・ホライズン』の書籍化が契機の一つだと、運営会社であるヒナプロジェクトの平井さんは言う。
これらの出来事を経て「小説家になろう」は閲覧数、登録作品数ともに日本最大級の小説投稿サイトとなった。
それも書き手は作品を、読み手も感想やコメントを自由に書き込めるオープンな場だ。人々が集まり、言葉を交わす以上、トラブルを招く可能性は否めない。これまで例を見ないほど膨大なユーザーや作品を抱えながら、サイトを無事運営するにあたって、スタッフたちはどのような指針をもって臨んだのだろうか。
また近年「小説家になろう」のユーザーの間では、実装されているランキングやアクセス解析が書き手同士の競争心を過剰に煽っているのではないかという指摘もある。
実際、閲覧数を気にするあまり、作品を未完のまま放置したり、筆を折ったりするユーザーも多く、その機能を疑問視する向きもある。それについて質問をぶつけてみると「プラットフォーム」という立場での、意外な答えが返ってきた。
──「小説家になろう」は投稿された小説が集まる、いわゆるポータルサイトという認識でいいのでしょうか。
平井 小説が集まるのは間違いありませんが、弊社では一貫してプラットフォームという呼称を用いています。
「小説家になろう」自体は、あくまで投稿者と閲覧者に場所を提供するサービスで、外部に広く情報を発信する立場ではないのでポータルサイトというと語弊があるかもしれません。コンテストなどを催すことはありますが、それはあくまでサイト内のユーザーに対しての告知なんです。
──プラットフォームとしての「小説家になろう」を運営するにあたり、心がけていることはありますか?
平井 基本的には、すべての作品に対してフラットな姿勢を保つことです。具体的には特定作品のPRは極力しない。たとえば運営側から書籍化した作品に向けて、お祝いの告知などもやろうと思えばできるのですが、もしやるのならばすべての書籍化した作品に行わないと公平さは保てない。だからやっていません。
それはアニメ化や映画化が決定した際にも同じことです。読者数の多い/少ないも関係なく、作品や著者に対してはフラットに向き合おうとしています。
──しかし「小説家になろう」内には出版作品紹介のページもあったと思いますが。
書籍化作品を紹介する「書報」は5月末のリニュアール以降、トップページにも表示されるようになった
山崎 あれは、あくまで「作者から申請があったものだけ」という条件つきの掲載なんです(外部リンク)。などで網羅しているわけではありません。
平井 他に、お便りコーナーというプロデビューを果たした作家さんからのコメントを載せるページもありますが、それも掲載するのは自主的に投稿していただいたものだけで、運営側から個別にアプローチすることはないんです。
もちろん、こちらとしてもユーザーにとって喜ばしいことであれば、お祝いしてあげたいという気持ちはあるので、投稿してもらうという形で協力させていただいています。
──サイトとしてのポリシーと、作家や作品を応援したいという気持ちの落としどころとしてできた機能ということですね。
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