J.Coleを過小評価してないか? 最も賢く、偉大で、伝説的なラッパーの半生
2021.12.28
ジャマイカのレゲエシーンで流行する、特殊詐欺を称揚する音楽。ジャパニーズレゲエとは直接関係ないが、日本のレゲエシーンにも影響を与えている。
今回、ライターのソロバンタン氏による緊急寄稿を掲載。NPO法人を運営するジャマイカ在住の永村夏美さんへのインタビューも。
クリエイター
この記事の制作者たち
「闇バイト」。
近年日本において社会問題化している、若者を犯罪に利用して搾取する卑劣な犯罪である。
「特殊詐欺の受け子になって逮捕」「強盗の共謀を行なって逮捕」などのニュースがタイムラインに流れてくることも多いだろう。
しかし、海の向こうジャマイカではこういった日本で「闇バイト」と呼ばれているような行為がまるで“格好いいこと”のように賛美され、「特殊詐欺」をテーマにしたレゲエ曲が大ヒットしていると聞いたら皆さんはどう思うだろうか?
これらの楽曲に描き出されているようなライフスタイルを送る人間を“Choppa”(チャパ)と呼ぶのだが、そのチャパの是非をめぐって日本のレゲエ関係者の間でも議論が紛糾。
ヒップホップ好きも知っているような著名なレゲエアーティストからTikTokの世界的なインフルエンサーまで、様々な立場の人間を巻き込みSNSでは日々活発な意見交換がなされている。
しかし、盛り上がるタイムラインをよそに“詐欺のレゲエ?”とか“チャパ??”となった人もかなり多いだろう。一般的に「レゲエ」といえば、“南の島のピースな音楽”というイメージで語られがちだが、レゲエはジャマイカ人のライフスタイルに根ざしたものであり、喜怒哀楽すべての感情を表現したもの。あの島のハードな環境の中で時に“負の感情”が歌に込められることもしばしばだ。
多少なりともレゲエを聴き込んだことがある人なら、この音楽が時に性的マイノリティに辛辣な言葉を投げかけてきたこともご存知だろう。
関係者が熱くなるのとは別に、一般リスナーがどこまでついてきているのかに関しては筆者は疑問を抱いているし、そもそも詐欺というかなり“強い”ワードも出てきているので、レゲエカルチャー全体が誤解されないかという懸念もある。
そこで今回は、いま巷を騒がしているこのトピックについて少々お話しさせてもらおう。
目次
- 世界を揺るがす国際的詐欺集団「YAHOO BOYZ」
- 詐欺に手を染め、MDMAを摂取し、トヨタ車を乗り回す新世代の不良……“チャパ”
- チャパ浸透の背景 ジャマイカという国家の特異性
- ウサイン・ボルトも詐欺被害に──取り沙汰される曲と現実の因果関係
- リアルとエンタメの狭間で 問われるアーティストのリリシズム
- 永村夏美「明るい未来が描けない若い人たちが苦しんでいる」
- 最後に 日本国内でもチャパの扱いをめぐって紛糾する現在
そもそも「特殊詐欺」にまつわる楽曲というのは、2010年代初頭には既にレゲエダンスホールの世界にいくつか存在していた。
これはアフロビートやヒップホップの世界に同様の楽曲が存在するからであり、カリブの島国・ジャマイカもその影響を多分に受けたものと思われる。ジャマイカ人は常に欧米の音楽を貪欲に聴いており「ニューオリンズあたりから風に乗って流れてくるラジオでジャズを聴いてスカを生み出した!」なんて伝説もよく知られたところ。
しかしここまで浸透し、日本でも大きな注目を集めるようになったのは、2021年とある楽曲が大ヒットしたからである。
額と頬にタトゥーを入れた見るからにヤバそうなINTENCEというアーティストが歌ったこの曲はその年のジャマイカで一、二を争うヒット曲となり、日本でもMIGHTY CROWNが“今HOTな新譜”として自身のYouTube番組で紹介した。また、レゲエ好きで知られるラッパーのNICKI MINAJもこの楽曲に注目した一人で、ヒット直後SNSでINTENCEをフォローしたことを明かし、結局実現はしなかったものの将来的にコラボの可能性があることもほのめかしていた。
この曲の主題となっているのは“詐欺”。
そもそもタイトルにもなっている“ヤフーボーイ”というのはナイジェリアのスラングで、“インターネットを使って国際詐欺に手を染めている犯罪者”という意味を持つ。
現在はSNSが主戦場となっているが初期はインターネットのメール(それこそYahooメールなど)を使い詐欺行為を行なっていたためその名が定着した。
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