Column

  • 2025.03.02

悪質な広告を駆逐し良質な広告を増やすには?「良い広告」の5つの基準

ネット広告は悪どく、見るに堪えない成果物になる一方である。

その現状を変えるには広告主側、プラットフォーム側の努力だけでなく、視聴者による良し悪しの判定が不可欠だ。

悪質な広告を駆逐し良質な広告を増やすには?「良い広告」の5つの基準

現代では得てして悪評の方が広まりやすく、良い評価を広めるのは年々難しくなっている。それがほとんどの人から推されない、広告であればなおさらだ。

普段、私は「広告を見るやきそば」というnoteにおいて、個人的に広告をまとめ、最強ランキングというとても俗な──しかしわかりやすいであろう形で、広告を評価してきた。

誤解されがちだが、私は広告業界の人間ではない。単に趣味として広告を見ては感想をつけ、広告を数え、悪質度だの誇張度だのという独自の尺度でグラフ化し、そしてそれをまとめた報告を、広告を嫌う人から広告を生業とする人まで多くの方にご覧いただいている。

普段のまとめでは主に「悪い広告」が主役なのだが、今回は「良い広告とは何か?」をお題に広告を紹介し、評価基準を示していきたい。

そうは書いたが、良い広告の評価というのは難しい。悪い広告の評価というのは簡単で、どれだけ倫理を外れるか、法を破るか、嘘をついて誇張したか──そんな見た目だけですぐにわかるようなことが多い。少なくとも、見ただけでわかるようなダメ出しのポイントがあるような広告は、一般に良い広告とは言えないだろう

だが、ことリーチやPV(ページビュー数)、インプレッション(表示回数)という数字に関して見ると、こういう炎上狙い、あるいは悪質な表現の含まれる広告の方が手っ取り早く数字を稼げるし、しかも成果としては目立たない真面目な広告より効果が出る場合もある

なりふり構わない企業の場合はどんどん悪質な表現を進化させて注目度を高めていくし、その結果広告全体に対する信頼度が低下してユーザーは広告をブロックするようになる。広告が見られなくなった結果、より邪魔な広告表示の手法が増え、悪質な表現が過激化していき、ユーザーと広告側の対立がより深まる悪循環が加速していく……。インターネットに入り浸っていると何となく肌感でわかる話ではあるが、2024年はその悪質ぶりが閾値を超えた。

生成AIによる著作権侵害を疑われるような制作物、広告として発信された女性の全裸画像や性行為、男性器を増大させる施術の広告、嘘ではないものの全体としてはごく一部である過激な性的描写や暴力的描写をわざわざ切り抜いた漫画広告、実際に開催されていない現金プレゼントキャンペーンの告知など、ネット広告は悪どく、見るに堪えない成果物になる一方である。その現状を変えるには、広告主側だけでなくプラットフォーム側の努力も必要不可欠だ──それが、2024年の大まかな総括だった。

目次

  1. 話題性だけで良い広告と評するのは危険、広告を評価する5つの基準
  2. ネタ画像で話題性を花開かせた「オタ恋」
  3. 長時間視聴をさせやすいネットの利点を活かした『ゼンレスゾーンゼロ』
  4. フジテレビのスポンサーから降りなかった夢グループはなぜブランディングに成功したか
  5. 既存のネタを精度高く取り入れた「今だけダブチ食べ美」の手法
  6. 良質な広告が広まるためには、視聴者による良し悪しの判定が不可欠

話題性だけで良い広告と評するのは危険、広告を評価する5つの基準

その中で良かった広告を評価するならば、倫理的、法的に問題がある広告を除外した上で、以下の5要素を評価基準としたい。そして下記の5要素が綿密に関係し合い、バランスよく成立する必要がある。

①話題性
②アイディア
③見せ方
④クオリティ
⑤ブランディング

第一の要素「話題性」とはその名の通り、人々の中での話題性である。

単にバズった、話題になったというだけでも一定の「広告」の役割を果たしている。

広告を見るやきそばという個人が考える広告の定義とは、「人々の間で話題になること」と「広告枠を利用して告知活動をしている」のどちらか、あるいは両方を満たしているものである。

【作者と】アクアリウムは踊らないRTA同時視聴【胃薬】

例えばRTA in Japan Winter 2024において『アクアリウムは踊らない』がグリッチ(バグ技ありの)RTAで大きな話題を獲得した、みたいな話でも、『アクアリウムは踊らない』というゲームタイトルにとって広義における広告効果があったと言えるだろう。

逆にYoutubeの広告枠を使って動画を放映するだけでも広告をしていたと言える。話題になっていないからといって広告効果がなかったとは判定できないが、知らなかったという人も多くなる傾向がある。

良い広告を論ずる上での難しさは、偶発的な話題性も広義には広告と捉えられる点である。しかも、乗っかることで作為的に話題性を獲得できるミームは、すぐに広告に採用できるという性質も「良い広告を評価する」難しさに拍車をかけている。

例えば「大切なお知らせ」という形で真面目な謝罪文と見せかけてプレゼントの話題を出すとか、「画面を長押しして4Kで読み込んで」というネタ画像とか、そういう流行りのネタに乗っかれば話題性は思いのほか簡単に得られてしまう。

無論「流行りのネタを旬のうちにやる」と書くだけなら簡単だが、実行するには相応のフットワークが必要であることは間違いない。また、補足すると「大切なお知らせ」ミームも広告として取り入れる手法で話題になってはいるが、それもそもそも豪華なプレゼントあってこその話題である。

流行に乗ったおかげで話題になったのか、単にプレゼントほしさに拡散されているだけなのか、そもそも広告として大切なお知らせを出して話題になることが本当に目的であるかは精査する必要がある。

話題性がある“だけ”で良い広告と評するのは、特に危険だ。


そういう意味で屋外広告――専門用語で言えばOOH広告(Out of Home広告)とは、こういう話題性を生み出す一つの表現形態である。

2024年に面白くて話題になった屋外広告と言えば、『ドカ食いダイスキ!もちづきさん』のOOH広告を取り上げたい。これは原作の“過食”という闇の部分をキャベツで隠していて、それを広告を見た人が剝がしていくと漫画自体の本当のアピールポイントが出てくる、という一工夫がなされている。

元の作品が話題になったのもゆるい日常系と見せかけて異常者の食生活を描いたギャップであり、その話題性の核となるギャップを上手に広告に落とし込んだ好例である

良い広告を評価する上での第2の基準は「アイディア」であるが、これも一つ間違えれば商材をもとにした大喜利大会になりかねない危険性を孕んでいる

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