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  • 2025.02.28

VTuberの音楽ライブ、チケット価格高騰は止まらず? それでも儲からない理由

VTuberの音楽ライブ、チケット価格高騰は止まらず? それでも儲からない理由

6年弱にわたる活動の中で企業から個人、そして現在の兼業スタイルと、形を変えながらシーンを渡り歩いてきた九条林檎さんを語り手に、VTuberのよもやま話を届ける連載「おしえて、九条林檎様!」。第9回目のテーマは、VTuberの3Dライブです。

誕生日や周年を飾る晴れ舞台として開催される3Dライブは、VTuber当人としてもファンとしても心躍る一大イベント。舞台がリアル会場ともなればなおのこと、思い出深い1日に。推しと同じ空間を共有できることに感動を覚えたことのある人も多いでしょう。他方で、その舞台裏について知っている人は決して多くないはずです。

本稿では、1月19日に3Dライブ「UltraC」を開催したばかりの九条林檎さんに、企画から本番に至るまで雑務、気になるお金の話、のっぴきならないトラブルまで、お聞きしました。

九条林檎 おしえて林檎様! 第9回

目次

  1. 企画が出来を左右する 緻密な準備が求められる3Dライブの勝負どころ
  2. 生ライブと収録ライブ、それぞれのメリット 九条林檎がリアルタイムにこだわる理由
  3. 3Dライブを制作できるエンジニアの価値 希少な存在の八ツ橋まろん
  4. ライブ当日のトラブル 延期や中止はなぜ起こる?
  5. チケットの高騰は止まらず? コスパがよくないVTuberのリアルライブ
  6. 3Dライブが生む、タレント間の格差?

企画が出来を左右する 緻密な準備が求められる3Dライブの勝負どころ

──先日林檎さんは「UltraC」と題した3Dライブを開催されていましたが、本番までにかかる工程について、教えていただけますか?

九条林檎 承知した。まず3Dライブは、大小様々な規模で開催されているな。にじさんじホロライブの方々が出演するような豪華なものから、我の「UltraC」のように3Dライブ用のスタジオを借りて行うものの中でもさらに技術的に尖ったもの、個人が自宅から届ける手軽なものなど様々だ。

手軽なものであれば企画らしい企画がない場合も多く、いつもの歌枠配信の延長線上で行われることもある。もう少し大きくなってくるとスタジオを借りることになるが、人気のあるスタジオはたいてい少なくとも半年先まで予約が埋まっているから、なるべく早く予約を取っておかなければいけない。

──林檎さんは「UltraC」の振り返り配信で準備期間は約1ヶ月ほどだったとおっしゃってました。かなり短期間ですが、実は水面下では半年前から準備が始まっていたんですか?

九条林檎 今回はたまたま複数の事情がかみ合って、約1ヶ月で開催することができただけなんだ。何か特別な事情がない限り、スタジオを借りる規模のライブは半年ほど待たないといけないぞ。

──なるほど。今回のような例外もあるけれど、今のVTuber群雄割拠の時代に、3Dライブ用のスタジオは半年先は埋まっていると。

九条林檎 ああ。スタジオを借りる場合は、企画段階でロゴや配信サムネイル、プラスアルファで新しい衣装や関連グッズの制作発注が必要になる。オリジナル楽曲をふくめて、配信で使用しても問題のないクリーンな音源を集めてくる作業も必要で、選んだ音源はスタジオにあらかじめ共有しておかねばならない。

最近は配信の画面上に歌詞がMVのようにリアルタイムで反映されるライブが増えたが、これも事前に発注しなければならない。企画で考えなければいけないことは多岐にわたるため、膨大な選択肢の中からどこまでを実行するかを決めるのも大事だな

──企画段階からかなり大変そうですね。

九条林檎 そうなんだ。先ほど例に出したクリーンな音源がない場合は、自分で発注してつくらないといけないんだが、こうした諸々の発注に結局一番時間がかかるような気がする。

その中で、いかに歌やダンスの練習時間を確保できるかが、個人勢の3Dライブでは勝負どころになるだろう。その点事務所に所属していると、立案監修をやったあとの企画における発注のやり取りなどはスタッフの方々に任せ、自分は歌やダンスの練習に集中することもできるな。

──他にはどんな準備が必要なのでしょうか?

九条林檎 今回の「UltraC」の場合はエンジニアと密に連携できる環境があったのでつくり込みの工程があったな。上からブランコに乗せて登場させてほしいとか、ライティングはこの曲のここの音ハメを意識してほしいといった演出をエンジニアと話し合って、それに伴うカメラワークのつくり込みなどを進めていった。

──通常のライブとも違う、VTuberライブならではの緻密な準備ですね。「UltraC」が終わったあとに、「個人勢がこのレベルの3Dライブを開催できるのがすごい!」といった感想をSNSで目にしました。開催した当人として、手応えはどうでしたか?

九条林檎 「UltraC」はUnityのHDRP(High Definition Render Pipeline)という表現方法を採用しているんだが、現在の主要な手法ではこれを個人の3Dライブに取り入れるのはなかなか難しいんだ。実現に尽力してくれたエンジニアで、友人でもある八ツ橋まろん氏に感謝したい。

九条林檎 「UltraC」はもちろん我のファンに楽しんでもらうのが一番の目標だったが、同じぐらい八ツ橋まろん氏のの素晴らしい技術の発表会としても大事なものであったので、技術面で注目していただけたのなら大成功だ。我自身に関して言えば、「UltraC」はあまり準備に時間がかけられなかったこともあって、できなかったことはたくさんあるなと反省している。

──もしまた3Dライブを開催するとして、その時に実現したいことはありますか?

九条林檎 八ツ橋まろん氏にまた苦難を強いることになるので、めったなことは言えないんだけれども……そうだな、インタラクティブな要素が入れられると嬉しいだろうか。コメントによって、雨が降ったりライトが左右へ動いたり、何らかの演出が起こると良いな。

我が2020年に開催した「Feslusic.」という3Dライブでは、そのようなことをしてファンが大いに盛り上げてくれたんだ。他にもライブ会場からの事前配信やライブグッズの制作、ゲストを呼んだりと、やりたいことはたくさんある。いつかは理想を全部詰め込んだ3Dライブを開催したいものだ。

九条林檎さんのソロ3Dライブ「UltraC」

生ライブと収録ライブ、それぞれのメリット 九条林檎がリアルタイムにこだわる理由

──VTuberによる3Dライブでは、本番で生歌を披露する場合と、収録した曲や映像を流す場合と、大きく2つのパターンがあると思います。この違いも企画段階から考慮されますか?

九条林檎 そうだな。トークも含め、全編収録のライブも存在するし、当日は収録していた音源を流し、リアルタイムのパフォーマンスとしてダンスを踊るライブもあるな。歌唱パートが収録で、トークがリアルタイムのパターンもある。

規模の大小に関わらず、事務所に所属している方のライブだと収録は多いと思う。企業が関わると失敗することのリスクがとても高くなる、それに単純に収録だとクオリティを上げられるのもあろう。ほかにも様々な理由でそうなっていると考えられる。

──リスクヘッジは当然として、生歌のパフォーマンスでないことを残念に思うファン層も一定数いると思います。

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