「MCバトルは終わった」のか? 渦巻く批判に「KOK2024」が突きつけたアンサー
2025.01.23
「ストリーマーが向いてない」との自身の考えを赤裸々に綴ったプロゲーマー・あばだんご。
彼がどのように歩んできたのか、プロゲーマーという職業の在り方、「スマブラ」をはじめとした任天堂タイトルならではのマネタイズとは。
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国民的人気タイトルと言っても過言ではない「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズは、営利目的の大会が開催できないにも関わらず、プレイヤーたちの情熱によってひっきりなしにコミュニティ大会が行われている。
その黎明期を支えた一人が、現在忍ism Gamingに所属するあばだんご選手だ。プロゲーマーという存在が今ほど当たり前ではなかった2010年代後半から10年以上にわたって活動を続けている彼は、TwitchやYouTubeなどのプラットフォームでの配信活動や動画投稿にいちはやく注力した。強さだけでなく、エンタメ性を兼ね備えた人気の「スマブラ」プロとして、その地位を確立したパイオニア的存在だ。
そんなあばだんご選手は、2024年10月に「あばだんご、仕事始めるってよ」と題したnoteを投稿。自身が一般企業へ就職したことを明かし、11月より兼業プロとして活動していく意思を示した。
あばだんご、仕事始めるってよhttps://t.co/fExXmnTcgA
これがあばだんごの作り方最終回スペシャル
11月から会社員と兼業します!今までサポートしてくれた全ての人類に感謝しています!これからも仲良くしてください!🙂— あばだんご🍡 | SNB (@Abadango) October 22, 2024
このnoteでは、収入への不安や「ストリーマーが向いてない」という自身の考えなどが赤裸々に綴られ、コミュニティ内外を巻き込んで注目を集めた。
本稿では、あばだんご選手に実施したインタビューの模様をお届けする。彼がどのように歩んできたのか、プロゲーマーという職業の在り方、「スマブラ」をはじめとした任天堂タイトルならではのマネタイズなど、その考えを紐解いていく。
目次
- “プロゲーマー第二世代”あばだんご、如何にしてプロになったのか
- あばだんごの「スマブラ」人生を振り返る
- 大会賞金が存在しない「スマブラ」、プロは成立するのか
- 視聴者数が減少しても、大会が自発的に継続していく「スマブラ」コミュニティ
- 今では当たり前となったプロの“配信”、当時は「配信なんてしてんな」といわれる風潮
──“プロゲーマー”というものを、あばだんごさんはどのように定義付けているのでしょうか。
あばだんご 僕がプロゲーマーを目指していた当初は「企業やチームからスポンサードされること」がプロの定義だと考えていましたね。
──2010年にウメハラ選手こと梅原大吾氏が、米Mad Catzとプロモーション契約を締結しました。そのイメージですね。
あばだんご そうですね。ただ、僕が本格的にプロという存在を意識し始めたのはそのもう少しあと、2014年から2015年にかけて、国内「スマブラ」シーンに波が来た時期でした。でもその時点では、自分がプロゲーマーになれるとは全く考えていなかったんですよ。
──あばだんごさんのnoteではウメハラ選手などに憧れてプロゲーマーになった世代のことを“第二世代”と呼んでいました。これはどういうことなのでしょう。
あばだんご 初期から活動していたFPSのプロの方はもちろん、「スマブラ」勢の僕から見て第一世代というのは、ウメハラさんを始めとする「ストリートファイターIV」で活躍したプロゲーマーたちです。彼らの時代には"プロゲーマー"という概念自体が存在していませんでした。僕ら第二世代は、そんな彼らに憧れを抱いて目指した世代だと考えています。
ウメハラさんたちが活躍していた当時、格闘ゲームの祭典「EVO」が超盛り上がっていていました。僕もその影響を強く受けていましたね。特に「スマブラDX」がEVOのメイン種目に選ばれた時(2013年)は印象深いです。当時は寄付金額の多いタイトルがメイン種目になれるシステムがあり、コミュニティ全体で「これを逃したら次はない」と総出で寄付投票を集め、1位を獲得したんです。
次の機会はないだろうと思っていましたが、その時の盛り上がりがきっかけとなって、翌年以降も継続的に開催されるようになりました。
※寄付投票=「EVO Charity Drive」と呼ばれるこのシステムは、乳がん研究振興財団(Breast Cancer Research Foundation)への寄付金の額が最も多いタイトルが、EVOのメインタイトルとして選ばれるというもの。EVO2013では「スマブラDX」が2,000万円以上の寄付金を集めてトップとなった。
──そんな第二世代であるあばだんごさんの初のプロチーム所属はLG(カナダのチーム「Luminosity Gaming」)でしたね。それはいつ、どのような経緯で所属することになったのですか?
あばだんご 2016年のことです。当時は様々なプロチームに対して、メールやパワーポイントで自己PRを送り続けていました。ただ、LGには送っていなかったんです(笑)。結果的に、当時の強豪選手であるカナダのAlly選手が僕のことを「良い人材がいる」と推薦してくれたんです。
NEWS: @Luminosity signs SSB4 player @LG_Abadango!
Read More: https://t.co/312tzFm5Vh#GOLG #SSB4 #LGLOYAL #FGC pic.twitter.com/fS2FbLlqLm— Luminosity Gaming (@Luminosity) October 8, 2016
──プロになるためにどんな努力をしましたか? そもそもどうやったらプロになれるんでしょうか?
あばだんご 当時、プロゲーマーになるためのルートは、EVOでのトップ8や優勝など、目覚ましい活躍をして実力を認められ、スポンサーを獲得するという道しかありませんでした。
僕はあるときに「ウメブラ」というコミュニティ大会で準優勝し、その大会で優勝したにえとの選手がDetonatioN(現在のDetonatioN FocusMe)に加入したことをきっかけに、「実力さえあればチャンスはある」と実感し、積極的に海外大会にも挑戦するようになりました。
──当時は生活を支えるほどの報酬を支払うチームは極わずかでしたが、LGからはどのような形で支援があったのですか?
あばだんご 当時は、主に海外大会への渡航費用を支援していただいていました。その頃はゲームだけで生計を立てられる選手は、格闘ゲーム界隈でも両手で数えられるほどしかいなかったと思います。僕は大学生だったので、海外遠征の渡航費用の負担が軽減されるだけでも、とてもありがたかったですね。
──プロチームに所属して大きく変わったことなどありましたか?
あばだんご 活動自体に大きな変化はありませんでしたが、チームからのサポートが手厚くなり、活動の質は確実に向上しました。ただし、それまで個人で完結していた敗戦後の反省が、チームに対する責任も伴うようになり、精神的な負担は倍増しました。そこはギャップでしたね。
──実際にプロになれたときの心境はいかがでしたか?
あばだんご そりゃとても嬉しかったですね。人生において明確に持っていた「夢」に向かって活動し、それが達成できたことに大きな満足感がありました。ただ、プロになること自体は、少額のサポートをしてくれる小規模なチームであれば、それほどハードルは高くないと思っています。そういう意味で、LGという大手チームに所属できたことは非常に恵まれていましたね。
──専業プロ時代の一日のスケジュールはどんなものでしたか?
あばだんご 僕が最も「スマブラ」に熱心に取り組んでいたのは大学院生の頃で、当時は他のプレイヤーに比べて練習時間は多くありませんでした。多分暇な大学生と大差ないくらいです(笑)。大学院から帰宅後に3~4時間プレイできればラッキーという感じでしたね。今考えても、時間や境遇的に、時間のある大学生ってプロゲーマーとして最強の立場ですよ。
ただ、当時はプロゲーマーの数自体が少なく、競技レベルも現在ほど高くなかったからできていたと思います。国内の専業プロは、多分数人程度しかいなかったんじゃないかな。
──学業との両立は大変だったんじゃないでしょうか?
あばだんご 大学1年生で海外遠征を経験した後、「スマブラ for」が発売されるまでの約3年間は競技から離れていました。4年生の夏頃に復帰したのですが、幸運なことに所属した研究室の教授が非常に理解のある方でした。
教授自身も3DSで「スマブラ」をプレイされるほどゲームへの理解があり、ゼミや課題さえきちんと提出していれば海外遠征も自由に行かせていただけました。本当に良い教授に恵まれましたね。
──そのプレイ時間でトップにいることに驚きです。もっと一日の大半を「スマブラ」に費やしているものかと。
あばだんご 当時、ソロプレイでも上達が可能なファイターの存在が見過ごされていました。誰もそのキャラクターを使いこなしていなかったため、独自にコンボルートを開拓していくことができました。
──メタ(流行っているキャラクター)ではなく、いわゆる“オフメタ”だったんですね。
あばだんご 僕はキャラクターを頻繁に変更するタイプで、強いキャラクターを探している過程で偶然見つけた感じでしたね。王道的な戦い方は好まず、少しコスいやり方の方が勝てると考えていました(笑)。
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