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  • 2025.05.27

VTuber黎明期から謎に包まれた事務所「ななしいんく」が初めて語る、グループ統合の真意

VTuber黎明期から謎に包まれた事務所「ななしいんく」が初めて語る、グループ統合の真意

2018年に「有閑喫茶あにまーれ」「ハニーストラップ」を世に送り出したことを皮切りに、VTuberの黎明期から今日まで数十人のVTuberを抱え、独特の存在感を放ち続ける「ななしいんく」。

しかしその存在感とは裏腹に、その運営体制やスタッフについてはほとんど全て謎に包まれていた。

2023年3月には、所属グループ全ての統合を行い、事務所名を「774inc.」から「ななしいんく」に改名(運営会社名は「774inc.」)。

大規模な組織改編から2年、創業期から現在に至るまで謎に包まれていた運営の裏側に迫る、ななしいんく初インタビューを前後編で公開。

目次

  1. なぜ、ななしいんくは運営の露出を避けてきたのか?
  2. 今改めて語られる、グループ統合の真相
  3. グループ統合をめぐる運営の事情と、思わぬ内部的な変化
  4. 統合から2年……過去最大の危機を乗り越えて

なぜ、ななしいんくは運営の露出を避けてきたのか?

──今回、これが本邦初の運営インタビューになるのでしょうか?

ななしいんく 一度、イベント開催にまつわる運営への取材はあったのですが、基本的にはこれまで「運営が表に出る」こと全般を避けてきたので、内情を明かすようなインタビューは本当に初めてですね。

──運営の露出を避けていたのはなぜでしょうか?

ななしいんく 主役はタレントだから、という考え方があるからです。「運営が前に出たときのリスナーさんからの見え方や、裏方が前に出ることの面白さがあるのだろうか?」というスタンスでした。

──タレントファーストだからこそのお考えだったと。

ななしいんく はい。あくまでもこの事業の主役はタレントですし、タレントの子たちは自分の人生をかけて活動してくれているので、運営側としても、可能な限り彼女たちに健全な状態で、長く活動してもらえるように支えたい、というところを一番大事にしているつもりです。そこがななしいんくの運営における何より重要な軸の一つですね。

そういうスタンスの事務所なので、「私が私が」と自我を出したがるスタッフも今はおりませんし、タレントがやりたいコンテンツや見せ方のノイズになる可能性もあるので、基本的に裏方のスタッフを表に出すことについては消極的です。

例えばホロライブの谷郷(元昭)さんのように、現場から遠いところで圧倒的なアイコンになれていたらそれもブランディングとして効果的だと思います。ただ、私たちの規模感だとタレントと運営スタッフの距離がまだまだ近いため、抱えている数十人のタレント個々人の考えと違う内容を発信してしまったときのリスクや、スタッフ個人の思想がリスナーさんに届くことでタレントに対して変な色眼鏡がかかってしまう懸念などもあります。タレントに迷惑をかけてしまっては本末転倒ですからね。

──そういうことだったのですね。ななしいんくさんは現在、どれくらいの人数で運営されているのでしょうか?

ななしいんく 具体的な人数は伏せますが、所属タレント数よりは全然少ない人数で運営しています。

デザインやアートワークに特化した制作チームを除いては、明確に分かれた部署的なものはなく、基本的には全員が「マネジメントもイベント運営もマーケティングも全部やる」という形です。

──これまでそうした運営体制の詳細について伏せてきたのは、774inc.の親会社であるアドウェイズ社の意向というわけでもなかったのでしょうか?

ななしいんく それも全くないです。この辺りは少し表現が難しいのですが、今は774inc.としての事業のみで収支が成り立っているため、確かに「親会社」と「子会社」いう関係性ではあるのですが、運営実態としては完全に別々です。数年前までは親会社が存在していることも全く公にしていなかったですし、今も積極的に言っているわけではありません。

その関係性もまたタレントたちの活動に対するノイズになってしまう可能性がゼロではないので、あくまで弊社側の判断で喧伝していないという形ですね。

──では逆に、なぜ今回はこの取材をお受けいただけたのでしょうか?

ななしいんく お話したような理由から、今まではこういった取材のご依頼はお断りしていたのですが、今回お受けした一番の理由は、「弊社のことに本当に興味を持ってくださってる」と感じられるご依頼内容だったというところですね。ご依頼の際にいただいたお問い合わせの文面でも、これまでの弊社の歴史や聞きたい内容などを具体的に明示いただいていましたから。

また、別の理由として、弊社を含むVTuber業界は全体的に運営側が自分たちの声を発信する機会が少ないので、「タレントたちの視点とはまた違う視点がある」というところが弊社のファンの方に限らず多くの人に認知していただけた方が、業界的にもう少し健全化されていくような気がしていて……というところも大きな理由になりますかね。

先ほどお話しした通り、我々が個人として積極的に表に出たいという意向は全くないのですが、現在の業界の雰囲気として「配信者が発信した内容が正義」という風潮が少なからずありますので、他の事務所さんのファンの方も含めて「別の視点も存在するよ」という受け取り方の一つのきっかけになればな、と。

──ありがとうございます。

今改めて語られる、グループ統合の真相

──2023年3月に既存のタレントのグループを統合されて、事務所名自体も「774inc.」から「ななしいんく」に変更されたということで、2025年の今改めてその意図について、またその後の概況や変化などについてをお聞きできればと思います。そもそもまず、なぜ統合するという決断に至ったのでしょうか?

ななしいんく それまでは基本的にいくつかに分かれたグループに所属して、しかも最初期はそのグループ同士も同じ運営だということもそこまで強調しておらず、「独立したそれぞれのグループが、各々で人気をつくっていく」というスタイルで運営していました。

その方針を一新して「グループ単位の運営から事務所単位の運営へ」としたのは、一つは私たち運営側の意向としての「これからは事務所全体として盛り上がりたい」という目的がありました。

──なるほど。当時は「有閑喫茶あにまーれ」「ハニーストラップ」「ブイアパ」「シュガーリリック」「緋翼のクロスピース」などのグループがあり、そこに所属しないソロタレントもいらっしゃいましたが、それら全員を「ななしいんく」に統合されましたね。

ななしいんく  そうですね、他の大手さんのように「ななしいんく」という事務所を打ち出していきたいと。

業界で言うとやはり「にじさんじ」さんや「ホロライブ」さんを筆頭に、事務所規模で大きなイベントやコンテンツを発信して成功されている事例が多くなっていく中で、そこに対抗していくには同様のスケール感の動きが今後さらに必要になっていくだろうな、と考えていました。

ただ、それに加えて、運営上の現実的な理由もありました。

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