ゲームにおける「賢さ」と、プロゲーマーに求められていくもの
2019.10.15
クリエイター
この記事の制作者たち
様々なトレーディングカードゲーム(TCG)にゲームデザイナーとして携わってきた筆者による、TCG大流行時代の分析連載。
前編では、トレーディングカードゲーム(TCG)というジャンル全体に目を向け、共通する特徴や「基本構造」を抽出し、それらの機能を分析してきた。
後編となる本稿では、個別のタイトルに目を向け、各タイトルの特徴や、ゲームデザインの潮流について分析していく。
具体的には、現存する人気の8タイトル──『Magic: The Gathering』(1993)、『ポケモンカードゲーム』(1996)、『遊☆戯☆王オフィシャルカードゲーム』(1999)、『デュエル・マスターズ』(2002)、『ヴァイスシュヴァルツ』(2007)、『バトルスピリッツ』(2008)、『Hearthstone』(2014)、『ONE PIECEカードゲーム』(2022)──にフォーカスし、タイトルごとの違いについて掘り下げる。
また、最近のタイトル『hololive OFFICIAL CARD GAME』(2024)、『Pokémon Trading Card Game Pocket(以下「ポケポケ」)』(2024)がどこに位置付けられるか、その理由も詳述する。
目次
- TCGの基本構造は「山札 → 手札 → 場 → 勝利条件」
- 『Magic: The Gathering』はなぜランダム性が高く、『ポケカ』はなぜ再現性が高いのか?
- 『ポケカ』のサポートや『ヴァイス』のレベルは、「選択肢」と「試合のエスカレーション」を生む
- 非常に優れた「マナ」システムを『ポケカ』が採用しない理由は、原作IPにあり
- キャラの魅力を立たせつつ試合速度を一定に保つため、『ポケカ』『ヴァイス』が採用するボトルネック
- TCGの”本流”をおさえ、ポケカ系やとキャラクターTCGが台頭する理由
- 極めて特殊な「遊戯王OCG」と、ポケカ系タイトルとの共通点
- “不快な体験”を排除する意図を持った、TCGデザインの最新トレンド
- TCGデザインにおいてもプレイにおいても、ボトルネックの理解は重要となる
前編の議論を簡単におさらいしておこう。
TCGの主要な特徴は、「デッキの事前構築」「ランダム性のある山札と非公開の手札」の2点である。カードは試合中、様々な領域に置かれるが、それらの領域は情報の公開度合いによって定義できる。
両プレイヤーに非公開(ランダム):山札
片方のプレイヤーには非公開:手札
両プレイヤーに公開:場 / 捨て札
また、ほぼ全てのTCGに勝利条件があり、場を経由して勝利条件にアクセスすることが試合の基本的な流れとなる。
したがってTCGは、
「山札 → 手札 → 場 → 勝利条件」の順にカードを移動させるゲーム(情報が段階的に公開されていくゲーム)
と捉えることができる。
そして、各タイトルはこれらの4つの領域の間にある、3つの経路──「山札 → 手札」「手札 → 場」「場 → 勝利条件」──に制限(ボトルネック)を設けることで、試合の進行速度を制御している。
どの経路を制限するかは、タイトルによって異なる。例えば『Magic: The Gathering』は「山札 → 手札(カードのドロー)」と「手札 → 場(カードのプレイ)」を主なボトルネックとし、『ポケモンカードゲーム』は「場 → 勝利条件(攻撃)」を主に制限している。
ここまでが、前編の簡単なまとめだ。
『Magic: The Gathering』と『ポケモンカードゲーム』はボトルネックとする経路が異なるが、これはプレイヤーの体験にどのような影響を与えるだろうか。そして、今のTCGゲームデザインのトレンドが後者に傾いている理由についても、分析していく。
山札はランダムな領域なので、「山札 → 手札」の経路(ドロー)を制限すると、山札のランダム性が際立ち、試合全体のランダム性が高まる。『Magic: The Gathering』は『ポケモンカードゲーム』と比べてこの経路の制限が強く、いわゆる「事故」や「鬼回り」といった幅広い状況が発生しやすい。
それに対し、「山札 → 手札」の制限が弱い『ポケモンカードゲーム』は、比較的再現性の高いゲームと言える。
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