“好きすぎるがゆえの呪縛” アニメ脚本家が語る志望者のための生存戦略

Interview

Series

  • 2020.06.10 20:00:00

毎年のように一般参加できる公募が行われる実写と比べて、実は、アニメ作品の脚本家になる方法というのは、あまり一般化されていない。

若手脚本家が、自らのキャリアから忌憚ない実情とアドバイスを語る。

“好きすぎるがゆえの呪縛” アニメ脚本家が語る志望者のための生存戦略

(C)2019NBCUniversal Entertainment.All Rights Reserved.

ゲーマーズ!』や『浦島坂田船の日常』などのアニメ作品のみならず、『>ウルトラマンX』や『GARO -VERSUS ROAD-』といった特撮作品、『DRAMAtical Murder』のような2.5次元舞台まで、幅広いジャンルの脚本を手掛ける若手脚本家の内田裕基さん。

近年では『ぼくの初恋は透明になって消えた。』(アルファポリス)や『君の涙はとても恋しい』(LINE文庫)と、小説までその活動範囲を広げている。

前回のインタビューでは、そんな内田さんにデビューまでの経緯と脚本を執筆する流れについてお話をうかがった。

今回のインタビューはその後編として、特にアニメ脚本家を志望する方々向けに、「アニメ脚本家になるためにやるべきこと」を内田さんの経験を踏まえて質問した。

取材・構成:羽海野渉=太田祥暉(TARKUS) 撮影・編集=新見直

目次

  1. シリーズ構成と各話脚本の違いとは? 具体的な執筆工程
  2. 実写とアニメ、現場の空気感が根本的に違う理由
  3. 脚本家になるためにやったほうがいいこと・悪いこと

シリーズ構成と各話脚本の違いとは? 具体的な執筆工程

内田裕基さん/本人提供

内田裕基さん/本人提供

──内田さんは『ゲーマーズ!』のあと、『デート・ア・ライブⅢ』や『とある科学の超電磁砲T』などの作品で各話脚本を手掛けられています。シリーズ構成と各話脚本でのスタンスや作業の違いについて、詳しく教えてください。

内田裕基(以下「内田」) 簡単に言えばシリーズ構成は作品のストーリー全体を、各話脚本は文字通り各話の脚本に焦点を絞ってクオリティアップを目指す役職ですね。

シリーズ構成という仕事は、こういう作品がつくりたい、原作のこういうところが人気だから引き立たせてほしいなどといった様々な意見を纏めながら作品のストーリーラインを決める役職です。原作があるなら限られた話数のなかでどこまでを描いて、どういう印象で纏めるか、プロデューサーや監督といった方々と相談していきます。

──各話脚本では?

内田 各話脚本は、シリーズ構成の目指しているものを各話単位でお手伝いする仕事です。シリーズ構成表に書かれている分担に沿って、「ここの話を書いてください」とオーダーされたらそこを書く。そして、任された部分のクオリティを上げるべく善処することが重要になります。

──シリーズ構成は監督やプロデューサー、各話脚本はシリーズ構成がクライアントという感じなんですね。

内田 結局はどっちも同じ会議部屋にいるんですけどね(笑)。なのでそのクライアントに加えて、シリーズ構成なら各話脚本の、各話脚本ならシリーズ構成ないし監督やプロデューサーの意見もうかがいいつつ、シナリオを書いていくことになります。

──内田さんが手掛けられた『浦島坂田船の日常』のように、近年増加してきたショートアニメですと、脚本の書き方も異なるのでしょうか?

内田 『浦島坂田船の日常』の場合は、若干特殊なので参考にならないかもしれませんが……(苦笑)。

そもそも浦島坂田船というアーティストがいて、僕は、彼らのボイスドラマのシナリオを担当していて。そこからのアニメ化で、制作時間も短くて作品の舞台も決まっていたという事情があったんですね。

『浦島坂田船の日常』(C)2019NBCUniversal Entertainment.All Rights Reserved.

『浦島坂田船の日常』(C)2019NBCUniversal Entertainment.All Rights Reserved.

加えてショートアニメですから、普通のテレビシリーズが一話ずつ打ち合わせするのに対して、『浦島坂田船の日常』では何話分かまとめて会議をしていました。そもそもアーティストを題材にアニメ化するというのもあまり前例がないものですから、正解がない中でとりあえず走るしかないといった感じでしたね。

元々、彼らを応援していたファンが多かった結果、アニメになっているので、ファンの方が楽しんでもらえるような作品にしなきゃいけないなというのは最初から念頭にありましたね。アニメのスタッフの中では自分が一番浦島坂田船に関わってきたわけで、僕が書いたものなら喜んでもらえるだろうというのを信じて、ただひたすらに書いていたことを記憶しています。

──どの作品でも誰に向けた作品かということはしっかりと意識されるのでしょうか?

内田 シリーズ構成を担当している作品はどれも意識しています。

原作のある作品の各話脚本ですと、時に現場で作品のクオリティを上げることが第一になってしまうので、早く完成稿を提出することを優先する場面が多いですね。作品の根幹までは考えずに手を動かすことを求められることも多いです。スケジュール的にやむを得ないことではあるので、苦渋の決断ですが……。

実写とアニメ、現場の空気感が根本的に違う理由

──実写の連続ドラマですと、シリーズ構成が不在の作品が多いです。その場合、どういったスタンスで携わられるのでしょうか?

内田 実写の連続ドラマはアニメと違い、そもそもシリーズ構成という役職がないんですよね。ただ、脚本家の中で中心的な「メインライター」という存在がいます。そして、各話脚本の人が作品の途中でいきなりメインライターに変わるなんてことすらあるんです。そういう意味では、実写作品の脚本はかなり油断できない

例えば僕も参加したテレビドラマ『年下彼氏』はオムニバス作品でしたけど、各話脚本での参加という意識よりは、話が被らないようにした上で他の話数より面白いようにしないといけないというプレッシャーがありました。

言ってしまえば毎話がコンペみたいなものなので、その話を面白くするためならば人間関係は二の次みたいな現場も多いと聞いています。

──それは、アニメとは全く異なりますよね。各話脚本の人が、途中でシリーズ構成に昇格するなんてありえません。

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