MCバトルという料理は、ヒップホップという器を超えた──「BATTLE SUMMIT」レポート後編
2022.09.17
京都の極道の組長の息子で、売人からラッパーとなった孫GONG。
彼のホームタウンを歩く。ゆかりの場所、ゆかりの人物から、その素顔を探る。
クリエイター
この記事の制作者たち
孫GONGと、京都の街を歩く。時折恐る恐る声をかけてくる、若い少年やコワモテのファンらの握手や撮影に応じながら。
撮影に応じる孫GONG
「祭りの時とかヤバイすよ。京都の祇園祭、露店よりも俺の前にできる行列のが長い」
さすがに冷静なツッコミを入れたくなるが、屈託のない笑顔と曇りのないその目を見ながら話を聞いていると、不思議なことに本当にそうなんだろうと信じさせる説得力がある。
高校を辞めた孫GONGは、売人としての生業のほかにも偽ブランド品を売りさばいて荒稼ぎしていた。木屋町にほど近い新京極通は主に当時の溜まり場で、ゆかりの場所が多く存在する。
並んでいた女子高生をナンパしていた雑貨屋、今は仲間うちの隠れ家になっている某理容室、かつて偽ブランド品を販売していた店は今や似顔絵チェーンの店舗になっていた。
懐かしそうにそれらを眺めながら、孫GONGは思い出を語ってくれる。すっかり様変わりした街並みは、その目にどう映っているのか。
「京都は昔と比べて良くなってますよ。昔のが良かったとかない。良くしようおもて変わってってるんだから、絶対良くなってるはず。みんな、昔好きだったあの店がなくなったから昔のがよかったって言ってるだけ。ないもんねだりですよ」
京都タワーの刺青を入れるほど地元・京都を熱烈に愛する孫GONGの言葉としては、意外に思える。

「俺は、京都はどんどん進化してくれっておもてる。好きだから。好きなところがちょっと変わろうが、好きじゃないですか? どんなに(街並みが)変わろうが、俺はこの道歩くんが好き」
取材対象:孫GONG 撮影:横山マサト 取材・執筆:新見直
目次
- 売人とバッタもんのブランド販売 極悪な二足のわらじ
- 「死ぬまでおんなじ景色を見ることはない」
- 「ラッパーの間でLSDを広めたのは俺」
- 商売人、だけどケチは嫌い
- 人に優しく
- 豪放磊落、なだけではない孫GONGという男の素顔
京都の極道の組長の息子として生まれ、売人を経て今ではラッパーとして活動する孫GONG。
孫GONGとヒップホップとの出会いは、地元の先輩だった。ガンジャにハマったのと同じ頃、先輩のラップに食らってフリースタイルラップを始めるようになった。
MCネームも、2人の先輩ラッパーから授かった”GONG”と”孫”という呼び名で構成されている。
売人になったのと同じ頃に、BACK BONE(背骨本舗)という地元のクルーに加入し、ラッパーとしての活動も続けていたが、「シャブでヨレててまともにラップしてへんかった」時代が長く続いた。
高校を中退した孫GONGは、先輩たちと「バッタもんの服を売りさばいて」いた。
続きを読むにはメンバーシップ登録が必要です
今すぐ10日間無料お試しを始めて記事の続きを読もう
残り 4324文字 / 画像13枚
800本以上のオリジナルコンテンツを読み放題
KAI-YOU Discordコミュニティへの参加
メンバー限定イベントやラジオ配信、先行特典も
※初回登録の方に限り、無料お試し期間中に解約した場合、料金は一切かかりません。
様々なジャンルの最前線で活躍するクリエイターや識者を中心に、思想や作品、実態に迫る取材をお届け
様々な記事の中から編集部で厳選したイチオシ作品をご紹介
ラッパー/ライター/編集
現代の日本の音楽シーンを語るなら、ボカロ文化は不可欠。2020年代のボカロ曲において、音楽的な独自性はどこにあるのか? 柴那典さんが「MAJ2025」受賞候補曲から考えます。
ライター
『ブルーアーカイブ』の青い色彩設計、そしてエデン条約のストーリー。この2つを柱に日本のサブカルチャーがアジアにどんな影響を与えたか、韓国でどう花開いたかを紐解きます
ライター
ぶいすぽっ!所属の蝶屋はなびさん。普段から前向きな姿勢を崩さない彼女のひたむきさはどこから来ているのかうかがいました。格ゲートークも充実!
編集
語られざる、違法な海賊版トレーディングカードゲームの歴史。世界広しと言えども、この解像度でその歴史を紡げる人は、SF作家・ゲームコレクターである赤野工作氏しかいない。
編集
結局、同人誌って違法なの? 実在する「VTuber」の二次創作、もしかして肖像権侵害や侮辱罪に当たっちゃう? 令和版、同人文化への最新の法的動向を弁護士に根掘り葉掘り聞いてます。
編集
日本語ラップを、構造的に理解する──音楽としてでもライフスタイルとしてでもない、新しいヒップホップの解釈を提示してもらっています。
編集
オタク/ラップのトップランナーだからこそ語れる“ニコラップ”の世界。懐かしいだけじゃなく、今に接続される話になっています。
ライター・編集者
減らないVTuberの活動休止について、根本的な原因を九条林檎さんに聞きました。推しのVTuberがいる方は、ぜひ読んでもらいたい内容です。