若いオタクはアニメからVTuberに流れたのか? 7つのポイントから考察
2022.07.31
GHOSTCLUBとchloma。バーチャルクラブとファッションブランドがコラボするまでの経緯と、実体のない世界に生まれるコミュニティの重みとは。
クリエイター
この記事の制作者たち
近年取り沙汰される「メタバース」というキーワード。
コロナ禍で物理的接触が制限される中で、仮想空間上でコミュニケーションができる場所として多方面から注目を浴びている。
国内ではバーチャルイベントプラットフォームから発展した「cluster」がある。世界最大級の3Dアバター・3Dモデル即売会「バーチャルマーケット」が開催されているアメリカ発の「VRChat」では、2018年頃から日本人の利用者数が増え始め、現在でも多くの人がそこで生活している。
VRChatで2018年から継続的に運営を続けているバーチャルクラブ「GHOSTCLUB」を主催する0b4k3氏と、基底現実(注:肉体の存在する実際の現実のこと)とバーチャル空間の両方で活動を展開するファッションブランド「chloma」を主催するJunya Suzuki氏が登場。
2021年にはコラボレーションして「chloma Virtual Store in GHOSCTLUB」をオープンするなど、VRChatで精力的に活動を続けるふたり。バーチャル空間で活動する理由、そこでは何が起こっているのか、基底現実とは異なる”場所”として発展しつつあるバーチャル空間について話を聞いた。
撮影場所の協力:amanek氏制作のワールド「07:00PM」
目次
- 「新しいものに乗っかっている」という第一印象
- 「どうせ何かをやるなら世界をめちゃくちゃにしたい」
- そもそもバーチャル空間とは?
- 仮想空間上で場所を運営する楽しさ
- ファッションを成立させる実体と情報の両輪
- 実体や重力のない世界に存在する「重み」
──GHOSTCLUBとchloma Virtual Store、もともとは別々に運営されていた場所同士がコラボすることも興味深いですが、0b4k3さんはchlomaのファッションどころか基底現実ではファッションにまったく興味を持っているわけではなかったという話が印象に残っています。コラボレーションするまで、おふたりはそれぞれの活動をどう見ていたのでしょうか?
Suzuki 2020年に最初のバーチャルストアをつくった時は、日本で、バーチャル空間でアバターやファッション関連のクリエイションをしている方々の発表の場は「バーチャルマーケット」しかないと思っていたほど視野が狭かったので、その時点ではGHOSTCLUBのことを知りませんでした。
0b4k3さんとの出会いは、最初のバーチャルストアをつくった時に多大なる協力をしてくれたバーチャルアーティスト・キヌさんのいろいろな知り合いがストアに来てくれた時でした(関連記事)。展示してあるタイツをお腹に突き刺して遊んでいる人たちがいるなと思っていたら、それが0b4k3さんでした(笑)。
作品名【Chloma Virtual Store -Living In A Bubble- 】
VRChat内にオープンした,ファッションブランドchlomaのヴァーチャルストアです.
ファッションの「第三の選択肢」を前進させ, 物質とデジタルの境が融けた新しい装いの楽しみ方を作ることを目指しています.#VRAA02参加作品 pic.twitter.com/Z3mR0UpOOp
— chloma | Junya Suzuki (@chlomagears) July 19, 2020
0b4k3 バーチャルストアには、VRChatで普段遊んでいる人たちと行きました。真面目に試着もしていましたけど、いわゆるVRChat的なおふざけもしていましたね...(笑)。
その辺の自由さはバーチャル空間の良いところですよね。chlomaのリアル店舗にいってそれをやったら「帰ってくれ」と言われるはずで。かと言ってバーチャルストアでやっていいかと言われると、それも微妙だと思うんですけど(笑)。
Suzuki 別に悪いことだと思っていたわけではないです(笑)。
その時は二言三言しゃべったくらいだったのですが、その後キヌさんに「GHOSTCLUBというやばいところがある」と聞いて行ってみたら、本当に意味がわからないくらいすごくて。VRの未来は「こうであったらいいな」という夢想を軽々と超える実態がそこにあって、畏怖の念を覚えましたね。
そこでは、僕の理解を超えた技術を繰り出して美を競い合っている人たちがいて、そうした状況が最高だなと思ったんです。
なので、VRChatにはバーチャルマーケットではないところにもクリエイションをディープに楽しむコミュニティがあるということが、僕にはすごい嬉しかった。
それが、GHOSTCLUBのファーストインプレッションでした。
──0b4k3さんは、いつ頃からchlomaを知っていたんですか?
0b4k3 僕は、chlomaのバーチャルストアがオープンされる前から知っていましたね。
GHOSTCLUBのデジタルグッズとして身に着けられるものをつくれたら面白いよね、という話が過去にあって、それを制作するにあたってVRChatやcluster、STYLYとか、その辺りの界隈でファッションをやっている人がいるのか調べたことがあったんです。
VRChatでは既にファッションは日常的に楽しまれていて、BOOTH等で販売されているメイド服や水着、浴衣等々、様々な装いが存在していて、それを各ユーザーが自分好みに改変して楽しんでいます。
VRChatのファッションの感覚は基底現実の普段着とか、そういった類のファッションというよりは、どちらかというとコスプレに近い感覚なのかなと僕は考えています。基底現実でコスプレを普段着として認識している人は少数だと思うんですが、それがVRChatだと逆転しているように見える現状はとても面白いですよね。
Suzuki キャラクターをつけるみたいな感じですよね。
0b4k3 その方向性はその方向性でVRChat的ファッションとして発展していくと思いますし、色々な良い可能性が感じられるので今後も進化していって欲しいですよね。なりたい姿に基底現実と比較してなりやすい環境がVRChatにはあると思っていて、それはとても良い事だと思うので。
で、VRChatに既にあるそういった流れを踏まえて、「僕らがやるならまた違った事をやりたいよね」という話をしている時に知ったのがchlomaだったんです。
ただ、当時の僕のchlomaに対する最初の印象は「とりあえず新しいものに乗っかっていこうという人たちなのかしら…?」という、あまり良い印象ではありませんでした。
といっても、この時に抱いた印象は完全に僕の知識不足と逆張り精神が招いた酷い誤解で、今では全くそんな事は思ってはいませんが……。
それからしばらく経って、キヌさんが関わったchlomaのバーチャルストアが公開されると聞いて行ってみたら、めちゃくちゃいいじゃんとなって。
バーチャルマーケット等の大きな流れに乗っからずに、自分の意志が通じる人間にワールドのクリエイションを依頼して、専用の店舗を自らきっちりとつくったということに好感を抱きました。それで、元々持っていた良くないひと達という印象から、ちゃんとやっている人たちなんだなと考えを改めました。思い返すと大変おこがましい話なんですが……。
──なるほど(笑)。
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