
ハハノシキュウ『韻も踏まずに』Rec.1 劣等感のボクシング
何人のラッパーがちゃんと韻踏んでるのか数えて見よう多分かなり異様に少ないぞキングギドラ「大掃除」 《Hook》 No1,人…
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ラッパーであるハハノシキュウから届いた一本の小説。それは、実に“奇妙”としか形容できない類の内容だった。最初は困惑し、次に腹を立て……最後は総毛立った。それを味わうために必要な条件はたった一つ。“最後まで読み通す”ことだ。簡単に聞こえるだろうが、この小説『韻も踏まずに』を前に、それは決して容易くない。
韻を踏むように文字を書き綴ってきたハハノシキュウが描いた、“誰もが日常的に韻を踏む世界”における「MCバトル」の物語。そこではすべてが“反転”する。
これは異世界転生モノであり、MCバトル強者によるMCバトル小説であり、散文小説への挑戦であり、なぜ「MCバトルというものが必要とされるのか」という問いに対するひねくれたラッパーからのアンサーである。
No1,人間は本能的にリズムに乗ってしまう習性がある
No2,韻を踏んだり抑揚をつけて話す習性がある
No3,習性に逆らおうとする習性がある
No4,リズムに乗らず韻も踏まずに悪口を言う合う競技がある
No5,その競技はMCバトルと呼ばれている
No6,高校の部活動にも導入されるほど一般化している
No7,その部活は罵倒部と呼ばれている
No8,MCバトルは女性の方が強いと言われている
No9,男性でチャンピオンになったものは未だに一人もいない
No10,これは男だけの罵倒部を学校に作った僕らの無謀な物語だ
僕たちはビートを刻んで生きている。
心臓音、脈拍、爪の伸びるスピード、呼吸をするタイミング。
これは無数にある日常という名の音楽。
意識して生きることがノーマル。
眠る時間、起きる時間、挨拶をした時間。
これもリズムでありビートだと意識した。
可視化されたような歌詞が韻にも見える。
毎日、同じ時間、同じ相手に「おはよう」と言う。
これも長い物差しで聞くと立派な音楽の座標を取る。
勝者と敗者の板挟み。
カメラ班が袖に置いたハサミ。
断ち切れ、蜘蛛の糸。
1人だけ残れる麓(ふもと)にもチャンピオンの孤独があって、飲み込めずに喉詰まらせていく。
僕にとっては途方もなく遠く、目標すらも徒労となる抱負。
決勝戦まで残った2人が、最後の勝負を決める舞台だ。
富和雷同の功績は大きく。
脛に当たる衝撃はローキック。
例えば武蔵坊弁慶が国木田。
泣き所を蹴る姿は牛若。
一介の観客に過ぎない僕はどちらも贔屓に出来ずに酷だ。
複雑な感情に苛まれ、試合が始まれば舌を巻いただけ。
男性初のチャンピオンまで王手。
そうはさせない元チャンプの防衛。
ジャンケンで勝った国木田が先攻。
去年から数えた月日が摩天楼。
火蓋を切ったファイナルラウンド。
先攻後攻四本ずつのマウンド。
国木田来夢の揺らいだスカート。
日本一を決める試合がスタート。
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