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  • 2019.05.15

ハハノシキュウのMC小説『韻も踏まずに』Rec.3 この世のあらゆる物事に対して音痴で

ラッパーであるハハノシキュウから届いた一本の小説。それは、実に“奇妙”としか形容できない類の内容だった。最初は困惑し、次に腹を立て……最後は総毛立った。それを味わうために必要な条件はたった一つ。“最後まで読み通す”ことだ。簡単に聞こえるだろうが、この小説『韻も踏まずに』を前に、それは決して容易くない。

韻を踏むように文字を書き綴ってきたハハノシキュウが描いた、“誰もが日常的に韻を踏む世界”における「MCバトル」の物語。そこではすべてが“反転”する。

これは異世界転生モノであり、MCバトル強者によるMCバトル小説であり、散文小説への挑戦であり、なぜ「MCバトルというものが必要とされるのか」という問いに対するひねくれたラッパーからのアンサーである。

ハハノシキュウのMC小説『韻も踏まずに』Rec.3 この世のあらゆる物事に対して音痴で

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《Hook1》

No1,人間は本能的にリズムに乗ってしまう習性がある
No2,韻を踏んだり抑揚をつけて話す習性がある
No3,習性に逆らおうとする習性がある
No4,リズムに乗らず韻も踏まずに悪口を言う合う競技がある
No5,その競技はMCバトルと呼ばれている
No6,高校の部活動にも導入されるほど一般化している
No7,その部活は罵倒部と呼ばれている
No8,MCバトルは女性の方が強いと言われている
No9,男性でチャンピオンになったものは未だに一人もいない
No10,これは男だけの罵倒部を学校に作った僕らの無謀な物語だ

《HooK2》

たちはビートを刻んで生きている。

心臓音、脈拍、爪の伸びるスピード、呼吸をするタイミング。

これは無数にある日常という名の音楽

意識して生きることがノーマル

眠る時間、起きる時間、挨拶をした時間

これもリズムでありビートだと意識した

可視化されたような歌詞が韻にも見える。

毎日、同じ時間、同じ相手に「おはよう」と言う

これも長い物差しで聞くと立派な音楽の座標を取る

《Battle3:国木田来夢vs富和雷同》

勝者と敗者の板挟み

カメラ班が袖に置いたハサミ

断ち切れ、蜘蛛の糸

1人だけ残れる麓(ふもと)にもチャンピオンの孤独があって、飲み込めずに喉詰まらせていく

にとっては途方もなく遠く、目標すらも徒労となる抱負

決勝戦まで残った2人が、最後の勝負を決める舞台だ

富和雷同の功績は大きく

脛に当たる衝撃はローキック

例えば武蔵坊弁慶が国木田

泣き所を蹴る姿は牛若

一介の観客に過ぎないどちらも贔屓に出来ずに酷だ

複雑な感情に苛まれ、試合が始まれば舌を巻いただけ

男性初のチャンピオンまで王手

そうはさせない元チャンプの防衛

ジャンケンで勝った国木田が先攻

去年から数えた月日が摩天楼

火蓋を切ったファイナルラウンド

先攻後攻四本ずつのマウンド

国木田来夢の揺らいだスカート

日本一を決める試合がスタート

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