Interview

  • 2022.07.09

バーチャル美少女が語る、メタバースの実態 著作権侵害横行やNFTの“リアル”

バーチャル美少女が語る、メタバースの実態 著作権侵害横行やNFTの“リアル”

2021年、旧Facebook社がMeta社に社名を変更し、注力を宣言したことからにわかに注目を集めた単語「メタバース」。IT界の巨人の一声から巨額の投資がおこなわれ、マスメディアにも連日ソーシャルVRなどを中心としたメタバース関連の話題が踊った。

一方で表面的な理解にとどまった報道が目立ったことも事実である。特にNFTとセットで報道される場合が散見されたが、両者にどこまでの関連性があるのかについては、識者からも疑問の声が相次いだ。

今まさに、メタバースは黎明期にある。そして、黎明期には混乱もつきものだ。2022年3月にはメタバースプラットフォーム・clusterが主催する、VRワールドの制作コンテスト「ClusterGAMEJAM 2022 in SPRING」にて総合大賞を獲得したチームに既存のモデルの無断流用が取り沙汰された。

こうしたメタバース上でのトラブル、あるいはバズワードとなったメタバースという単語のメディアでの扱われ方を、古くからソーシャルVRに親しんできたユーザーはどのように見ているのか。

バーチャル美少女ねむさんは2017年からいわゆる個人勢のバーチャルYouTuber(VTuber)として活動。はやくからソーシャルVRにも親しみ、もともとは仮想通貨の投資家としても活動してきた。

2021年には「ソーシャルVR国勢調査」を実施。文化庁・文化審議会の文化経済部会 基盤・制度ワーキンググループに助言とデータ提供するメタバース文化エバンジェリストの目に今のメタバースとその流行はどのように映るのか。

メタバースの実情「昔ほどヤバイ事例は減ってる」

──これまでにねむさんはメタバースにログインしていてVRワールド、あるいはアバターについて著作権違反だと感覚的にわかるような出来事を目の当たりにしたことありますか?

バーチャル美少女ねむ 明らかにIPのキャラクターやアセットを使っちゃっているような事例は、たまに見かけることはありますね。

ただ、そういうものは昔と比べてすごく少なくなってるんですよ。クリエイターの間でも著作物の扱いは気をつけなくてはいけないという意識が強くなってきているので、昔ほど露骨に“ヤバイ”事例は減っているんです。

私がソーシャルVRを始めた2017年だったら当たり前に起こってしまっていた出来事だったとしても、今は常識で言うとやっぱり見過ごしては駄目って感じになってきてます。プラットフォームの運営側も取り締まりをしっかりしていて、(著作権違反のコンテンツに対して)通報があるとすぐに消される。ちゃんと問題になること自体が良いことかなと

ただ、やっぱりこの世界は現実と違う問題もある。現実世界は例えば山とか空とか海とか自然物は、神様の著作物なのでロイヤリティフリーじゃないですか。けれどメタバース空間では、この世界の全てが全部誰かの著作物なんですよね。

例えば「ここは著作権的に問題のないワールドだ」と利用者が確認するのが難しいという問題はあって。VRをめぐるクリエイター側の著作権への意識が高まっている現状とは別の側面として、権利的にクリアかどうか判別が非常に難しいという問題はあります。

──そのもしワールドが適法じゃなかったとしても、利用者側から判別するのは難しいと。

バーチャル美少女ねむ といっても、利用者は遊ぶだけなので普通はあまり気にしていないと思うんです。困るのは、私みたいなVTuberですよね。

例えば配信で使ったワールドが、実は権利的にアウトなアセットが使われていたことが後からわかったら、動画を消さなくちゃいけない。YouTubeだったらそんなに大きな問題じゃないかもしれないですけど、その映像がテレビで放送されていたら取り返しがつかない。

ワールドをつくっている人からしても、例えば今私がいる何十キロメートル四方もある広大な空間の片隅に、間違えて他者の著作物から生成されたものを置いてしまっていた、とか普通にありえることじゃないですか。

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──意識していないと、起こりそうな話です。

バーチャル美少女ねむ なので私の場合は、ちゃんとしたイベントや取材でワールドを使うときは、制作者さんに連絡して確認もしますし、このクリエイターさんは権利関係を気にしてる人だから大丈夫というワールドしか使いません。

特に困っているというわけじゃないですけど、もうちょっとルール化されるといいのになという風には思っています。

無数にワールドがある中で、基本的には通報があれば運営が確認して消されるんですけど、たまたま通報されてないだけで著作権違反だけど存在しているものは判別しづらい。例えば、ワールド一覧で、著作権的にクリーンであることがわかるマークがついたら便利ですよね。

それでも普通に遊ぶにあたっては気にすることではないかなと思うので、そんなに大問題でもないのかなあっていう気はしています。

MMDとVR、異なる文化の衝突

──ワールドではなく、アバターの場合はいかがでしょう? 例えばVRChatで海外ユーザーが、商用の3Dモデルのデータをそのまま抜いたようなもので遊んでいるケースが、昔はよくあったとうかがっています。

バーチャル美少女ねむ いわゆるぶっこ抜きのアバターは、昔は相当多かったんですよね。2017年にリリースされたVRChatの黎明期は、身にまとうアバターを獲得する手段がまだ少なかったことがその原因だと思います。

けれど、今ではいろいろな手段でアバターが簡単に手に入るようになりましたよね。パブリックのアバターも豊富に用意されているし、アバター専門のクリエイターがいろいろなモデルを販売しています。

──かつては手段が限られていたため、海賊版が出回っていた。

バーチャル美少女ねむ 日本の場合はMMD(MikuMikuDance)文化がありましたよね。3Dモデルをお人形みたいに自由に動かせるようにして、それをちゃんとフォーマット化したっていうのは、世界的に見ても新しいムーブメントだったんですよね。

MMD自体はフリーのプログラマーの方が初音ミクの3D映像のためにつくったソフトだったんですけれど、めちゃくちゃ出来が良かったのでその後も初音ミクに限らずいろいろなモデルにMMDが利用され、踊りがつけられてニコニコ動画にアップされてカルチャーが生まれていった。

VRのバーチャル世界が始まったときも「バリエーションが豊富なMMDのモデルを使えばいいじゃん」という発想になったんですが、そこで結構トラブルが起こりました。MMDとVRは、カルチャーが違うんです。

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