ゲームの画像解剖 ドット絵表現が生み出した構図たち
2020.02.07
長年イラストシーンで問題化していた「トレパク」について改めて考える一連のシリーズ。
イラストレーター・中村佑介さんへの取材は前回で一度の幕引きを見たが、相談の元、追加の取材を行った。
クリエイター
この記事の制作者たち
なぜ「トレパク」は起こるのか、「トレパク」は何がいけないのか。議論を重ねる中で見えてきたのは、SNS以降の業界の構造であり、イラストレーターという職業やイラストという表現への社会的な無理解性が大きく関与しているということだった。
そういった状況について、中村佑介さんは「あまりにイラストレーター一人が責任を負わされすぎている」という。多くの企業が古塔つみさんの作品を取り下げる中、古塔つみさんを表紙に起用した『ILLUSTRATION 2022』は、制作体制の精査と立て直しを明言し、「改めて真摯にイラスト文化に向き合う」と声明を行った。
イラストレーターが負った責任は、本当にイラストレーターだけの問題なのだろうか。また、それに見合うだけの報酬や立場を、本当にイラストレーターは得ているのか。
近年、イラストシーンからも絶大な注目を集めるNFTの登場もあり、クリエイターとお金を巡る状況は大きな変動も起きつつある。そんな中で、イラストレーターは改めて、どのように振る舞い、社会と接続していくのか。
イラストレーター・中村佑介インタビュー、真の最終章(ボーナストラック)です。
目次
- 炎上した仕事は、本来は誰のものなのか
- イラストレーターが負わされる“責任”の正当性への疑問
- イラストレーターとお金を取り巻くリアル
- 現代のイラストレーターに求められる役割、仕事の変化
- NFTは、しがらみをすべてを越えていける
- 「でも僕は複製が好きだから」中村佑介がNFTをやらない理由、ポップの追及
──変な質問になりますが、中村佑介さんがもし炎上してしまったら、どういう状況や心境に陥ると思いますか。
中村佑介 僕がもし「トレパク」で炎上した作家の立場なら、落ち込んだり、バレてしまった後悔よりも、とにかく怖くなる思います。恐怖で頭が一杯になる。ネットは誰が発言をしているかもわからないから、玄関から一歩も出れなくなる。社会的に抹殺された気になるし、擁護の意見もほとんど見ないので人間不信になり、それこそ人命に関わるようなことにだってなりかねない。
そういう作家のことをより親身に考えてるからこそ、『ILLUSTRATION 2022』も声明を出すのを慎重になったのだと思います。
声明文に関しては、問題に対して少し抽象的でしたが、これはこう書くしか仕方ないのかなと思いました。それよりも、編集の平泉康児さんの補足と言うか、個人の気持ちをTwitterで書かれていたことが大切だと思った。
本書の企画・監修を務める重要な立場にありながら、今日に至るまで一連の騒動に言及することがなく、快くご協力くださった作家の皆様、楽しみにしてくださった読者の皆様、関係者の皆様に長らく不安な思いや悲しい思いを抱かせ、心を傷つけてしまいましたこと、重ねて深くお詫び致します。
— 平泉康児/編集者 (@hiraizm) April 8, 2022
中村佑介 守るというか──「対応せずにスルーして風化させる」っていうのも一つの手だとは思います。けれどそれでも、時間は経ったけれども、僕はこういう声明が出て、対応がされてよかったと思いました。
──表紙の作家だけでなく、これまで掲載されてきたイラストレーターたちや、培ってきたブランドを守るという意味でも重要でした。
中村佑介 そうですね。ただ、編集がどのような仕事をしていて、実際にどれぐらいの責任があるか、というのは外からは非常にわかりづらいですよね。
これは小山田圭吾さんのいじめ記事が問題になったときも、強く思ったことなんですが、出版社とか編集者に追求されるべき責任というのはどの程度のものなのか。
中村佑介 90年代の雑誌記事ってめちゃくちゃ“作っていた”と思うんです。特にミュージシャンのインタビュー記事って、インタビュアーが持っていきたい方向に話を持って行き過ぎて、アーティストの意思がほとんど働いていない、ということもざらだったと思います。
編集者とか出版社とか、書かせた人/書いた人も存在しているにも関わらず、表に立っている一人だけがバッシングを受けてる最中に、「いや、違います」と言ってあげて欲しかった。それは「あの人は良いところもある」とかのフォローではなく、「小山田さんの発言も、過激が好まれた時代に、雑誌記事に見出しが欲しくて脚色してしまっていた。僕たちも悪いんです」という声明を出す。単に謝罪するのではなく、批判の矛先を分散させてあげることも必要だと思います。
それが理想的な共同作業の在り方じゃないでしょうか。世の中、矢面に立っている一人の力で全部の仕事が成立してるわけじゃない。誰かの意図や、指示やディレクションのようなものが必ず発生します。何かしらのクリエイターの炎上を見るたびに、そうなって欲しいなとずっと願っています。
──仕事の“責任”を誰がとるのか。特にイラストレーターに関しては難しい状況があると思います。様々な人が関わっている大規模な案件であっても、イラストレーターの作品1枚で、その人がある種の顔役になってしまいます。それだけイラスト表現の持つ力は強烈だということでもありますが、その作品が生まれるにあたって、どのような経緯があったのか、表からは知り得ることができません。
中村佑介 そうですね。例えば芸能人がCMに起用されると、規模や契約期間にもよりますけど、数百万~数千万円というギャランティが発生します。一方で、イラストレーターは、一般的に高単価といわれる仕事で50〜60万円とか。規模の大きな仕事でも、100〜300万円が関の山、という世界です。
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