ハハノシキュウが看破した「戦極MCBATTLE」違和感の正体 革命は成っていた
2019.09.25
当時はジャマイカ出身のラッパー・Heavy Dの活躍などもあり、ラッパーがレゲエの節回しを使うこともちょっとしたトレンドだった時代。ちなみにHeavy Dと言えば、日本では『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』の企画「ダンス甲子園」のテーマソング『Now That We Found Love』で有名。同曲も、レゲエバンド・Third Worldによる同名曲のリメイクである。
この流れはやがて「ラガマフィン・ヒップホップ」と呼ばれ、90年代における時代の徒花のようなムーブメントを産み出す。その先駆のひとりが、日本においてはYOU THE ROCK★だったのだ。
TWIGY『十六小節』Via Amazon
YOU THE ROCK★の名前を出した以上、このラッパーのことも語らないわけにはいかないだろう。そう、TWIGYだ。
TWIGYは同郷の刃頭とのユニット・BEATKICKSで89年の『第2回DJアンダーグラウンドコンテスト』に出場した時も、ジャマイカ由来のオーセンティック・スカの7インチレコードに乗せてラップした、というエピソードが残っているほど活動初期より“レゲエ”の影響を色濃く受けたアーティスト。
上京したのちはYOU THE ROCK★とともに「V.I.P.」主催のラバダブ(ヒップホップで言うフリースタイルのこと)で夜な夜なマイクを握っていたという。
そんな彼の課外活動が“作品”として結実したのが、日本語ラップクラシックとしても知られる「夜行列車」である。
実は「夜行列車」で使用されているメロウなトラックは、V.I.P.クルーが制作したれっきとしたレゲエのリズムで、同オケを使用したワンウェイも存在する。
90年代前半、俗に“日本語ラップ冬の時代”と言われていたこの頃、TWIGYやYOU THE ROCK★といったラッパーたちはレゲエの“現場”でしっかりと力を蓄えていたのだ。
この時代、西麻布のCLUB ZOAで『BLACK MONDAY』というヒップホップイベントを主催していたYOU THE ROCK★は“月曜日って客入んねぇじゃん。土曜日、レゲエのV.I.P.とかに何百人も客が入るのを見て心底うらやましかった”と、のちにインタビューで語っていた記憶がある。
そんなYOU THE ROCK★やTWIGYはやがてあの雷の中心メンバーとなり、主催イベント『亜熱帯雨林』は急速に人気を集め出す。
やがて川崎のクラブチッタに場所を移してイベントも『鬼だまり』となり集客も1000人を突破。これを発展させる形であの伝説の『さんピンCAMP』が生まれることに。
『さんピン』と言えば、何はなくともまずは主催のECDである。
実は、ECDも“レゲエ”から強い影響を受けたアーティストで、79年ボブ・マーリー初来日の際は照明のバイトをやっており、中野サンプラザで生前のボブに照明を当てていた(!!)という仰天エピソードも。
ミュージシャンとしてのキャリアのスタートもレゲエであり、87年ベスタクス主催のDJコンテストにレゲエDJとして出場し優勝。これによりデビューのきっかけを掴み、のちにヒップホップに移行していく。なお、ECDは、90年代初期に放送された音楽番組「夜のヒットスタジオ」では“日本で初めて、ヒップホップとレゲエのミックスを成功させたラッパー”と紹介されている。
ECDはダンスホール・レゲエがなければデビューできてない。
— ECD (@ecdecdecd) February 18, 2014
96年の七夕、雨の中で行われた『さんピン』の思い出をのちにECDは『AFTER THE RAIN』という曲で取り上げている。曲の元ネタはMUTE BEATのダブである(外部リンク)。
そしてレゲエ者としては、唯一『さんピン』にレゲエ畑から参戦したBOY-KENのことはやはり忘れられない。
もともとはラッパーで、日本のヒップホップ黎明期に活動したDJ DOC HOLIDAY(現在ではジャズのDJとして著名な存在になられた須永辰緒氏)のお弟子さん。「BOY-KEN」という芸名も辰緒さんがつけたものである。
日本において「レゲエとヒップホップの架け橋」になった存在であるということは言うまでもなく、90年代はあの大名曲『Dancehall Checker』もリリース。彼の功績は所属するV.I.P.クルーとともにレゲエ、ヒップホップ両方のシーンで永遠に語り継がれるであろう。
どれだけ時代が流れても、“BOY-KENとは同意見!!”(外部リンク)。
V.I.P.クルー5周年ダンスには当時のレゲエ・ヒップホップ界のオールスターとでも言うべきメンツが揃った/画像は筆者提供
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