浜崎あゆみにおける「セカイ系」の詩学──あるいはTohji的ロードサイドの風景について
2023.07.30
アート分野に突如現れた反逆児、画像生成AI。DALL·E 2、Midjourney、Stable Diffusionといった生成系AIの発展と、一体どのように向き合うべきか?
これは現代のイラストレーターにとって、避けては通れない大きな課題となっている。
クリエイター
この記事の制作者たち
SNSを中心に、AI技術と創作の交点に発生する技術的な課題、倫理的あるいは法的な問題など、多角的な観点からクリエイター達の意見がぶつかり合っており、まさに混沌とした状況が広がっている。
そのような状況下で、常に最新技術を自身の創作活動に取り入れ、独自のアートを追求し続けているイラストレーター・redjuiceさんにインタビューを行った。
AI(Midjourney)と仲良くする事例な pic.twitter.com/2rvVsgBOcK
— redjuice (@shiru) October 11, 2022
同氏は早くからAIソフトを使用してイラストを制作していた一方で、そこには技術的可能性と同時に、受け入れがたい違和感も混ざり合っていたと言う。
本インタビューを通じて、AIとアートがどのように共存可能なのか、そしてその先に広がる未来は何なのか──その手がかりを探る。
目次
- いち早く生成系AIに反応したredjuice、現在までの実践と感触
- AIが「気持ち悪い」理由──その“害”の側面
- redjuiceは、「redjuiceの学習モデル」をつくられたらどうする?
- “機械工学を学んでいたイラストレーター”としての立場
──現在、画像生成AI及び、AIイラストについては権利の問題上、批判の声が高まっています。単純な二元論では語れない部分もありますが、redjuiceさんはAIイラストを取り巻く状況について、率直な意見として反対でしょうか? それとも、肯定的に捉えていますか?
redjuice おっしゃる通り、これは明確に賛否を表明できる二元論的な問題ではないと考えています。
様々な利害を伴う複雑な問題なので、ここで僕自身がどちらの立場であるかは明言できませんし、そう単純なものでもない。AI技術は、利益もあれば害もあるというのが個人的な感触です。
──なるほど。それではまずは、AI技術のポジティブな側面についてうかがえればと思うのですが、具体的にどのようにお考えでしょうか?
redjuice 例えば現時点でも、特定の器物や植物、ファッション、プロップデザイン、フレーバーの選定などにおいては、有用なリファレンス生成ツールとして利用することができます。
多くの工程と制作時間に追われるクリエイターにとって、AIアシスタントとして、業務の助けとなっています。今後さらに発展する将来性もあります。
僕自身、使えるところは使っていきたいですし、実際、いかにして業務に取り入れることが可能なのか、日々探求しています。
──redjuiceさんは、生成系AIが盛り上がったかなり初期の段階で、AIを制作過程に用いた作品をTwitterにアップロードされていました。主に資料探しの代替としてAIのアウトプットを使っているように見えましたが、実際に初めて触ってみた感覚、AIに対する認識はどのようなものでしたか?
redjuice 普段僕は、資料整理に「PureRef」というリファレンス画像表示用ソフトを使っています。そこにはクライアントから提供された資料や、自分のラフ、イメージリソースとなりそうな他のアーティストのアート、写真、自撮りポーズなど、様々なリファレンスが並びます。
その一角に、AIで生成されたサンプルが並ぶようになりました。
redjuice 「FORBIDDEN GARDEN」制作時は、Midjourneyでイメージする背景の要素をプロンプトとして入力して、背景のリファレンスを生成しています。
自然物が多い構図だったので、AIとの親和性が高くて。植物の描写やライティングにおいては良いリファレンスになりました。その後、3DCGで背景をフルスクラッチし、さらにペイント、フォトバッシュ、映像編集ソフト(Davinci Resolve)で加工を加えています。
redjuice 一方で、「GIRLS FROM HELL #07」では路地裏の背景をStable Diffusionで生成しようとしたのですが、これはあまりうまくいかなかったんです。
redjuice 人工物のAI生成は、明らかな不整合は避けられないのが現状、という認識です。これはAIが三次元空間上で幾何学や構造、動作を考慮できなかったりと、多くの原因が考えられますね。
現在の拡散モデル(※1)は、幾何学的で精密な人工構造物の生成には明らかに向いていません。どこまでも抽象的で、あらゆる面でデタラメなんですよ。
なので「GIRLS FROM HELL #07」では、イラスト調のペイントをStable Diffusionの image-to-imageという手法を用いて、実写写真を素として生成して、手書きのペイントや写真合成で加工しています。ControlNet Depth(※2)で2Dからデプスマップを生成して、レンズぼかし効果のアルファや空気遠近法のマスクに使ったりもしています。
※1 AI生成技術における深層生成モデル(Deep Generative Model)の1つ。Diffusion Model。画像やテキスト、音声といったデータを段階的に劣化させた後、劣化の過程をさかのぼるように段階的に再構築していく学習過程を持つ(参考)
※2 Stable Diffusionの拡張機能。ポーズの指定等を行うことが可能になる。“Depth”ではさらに画像の深度情報までを読み取り、奥行き感を再現することも可能。
──ある種、これらは実験的にAIをイラストに用いた作品なんですね。
redjuice そうなんです。特に「AIを使った背景の作成」というのがこの作品の、個人的かつ実験的なテーマの一つで。そういう意味でも、あえて部分的にAIらしい不自然なポイントを残しています。
この作品では他にも、衣装のレタッチやステッカーの生成に部分的にAIを利用しています。個人的には表現として、まあまあの落とし所だとは思いますが……評価は分かれるところでしょうね。あと、ネコもAIに描かせようとしたんですが、思ったようなものが全く持って出てこなかったので手書きです!
──非常に意欲的かつ、実践的にAIを取り入れていたのがすごく印象的です。「FORBIDDEN GARDEN」は今回、取材を申し込ませていただいたきっかけにもなった作品です。
redjuice 表に出していない部分でも、たくさんAIを実験しています。とはいえ、キャラクターデザイナーとしてのエゴやプライドもあるので、さすがに人物を描画させるのには抵抗があるのが、は正直なところです。
とはいえ、自分のイラストを学習させたStable Diffusionモデル(Dreambooth、LoRA)を作成してみたりもしました。
redjuice(自分)目線でも、redjuiceの特徴を多少は捉えているし、部分的には自分を超える表現力すらあるかも……とは思うのですが、まだまだ完全再現には程遠いという感想でした。おそらく自分の作風が固定的ではないから、ちょっと学習がし辛いのかなと思います。
エゴとしても、クオリティとしても、現時点ではイラストやキャラクターの主要な部分をAIに描写させることは考えていません。イラストコミュニティとしても、当分の間は禁忌とされるでしょう。もしかしたら、モブぐらいは描いてもらってもいいかもしれないけど、自分はやらなさそうです。
こんな感じで、AIのテクノロジーと3Dや手書き表現の掛け合わせを行っています。
当然、クリアしなければいけない課題は多くありますが、いかにAI技術で自分の表現を最大化していくのかは、今後のデジタルアーティストの必須スキルになっていくと感じています。
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