ホラーアニメ『アメイジング・デジタル・サーカス』が2.5億回再生される背景と凄さを解説
2023.12.17
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日本の大手VTuber事務所として世界規模での人気を得るホロライブ。その運営を担うカバー・谷郷元昭社長も株式上場の機会に際して、北米圏や東アジアに次ぐ市場展開先として東南アジアへの注目を語るように、日本とも文化・地理的距離が近い東南アジア圏各国での状況は見逃せないものとなっている。
そんな東南アジアにあって、世界中から観光客が訪れるアジアの人気旅行先としてもおなじみの国、それがタイだ。
特に首都バンコクは世界有数の都市として通りには多くのクルマやバイクが行き交い、昼夜を問わずマーケットは多くの店と現地人と観光客が入り混じる多様な人々で賑わっている。
様々な人々、そして文化が行き交うこの国でも今、日本から始まったVTuber文化が盛り上がり始めている。
日本でも人気を博した『2gether』はじめ、タイはBL作品の隆盛では知られているが、実は国産IP創出には苦戦している側面がある。果たしてVTuberがその担い手となるのか。
複数の有力VTuber事務所が立ち上がり、個人勢でも人気を集めるタレントが現れているタイ現地の様子を探るべく、いち早くタイでVTuberをプロデュースした人物や、タイの3大事務所のひとつであるPixelaProjectの代表であるAtaruさんらに取材をおこなった。
前編ではまず、タイのVTuber文化と需要のされ方をより理解するために、背景となるタイのポップカルチャー事情について主に掘り下げる。
目次
- KADOKAWAとタイ企業が組んだVTuber「YuChan」は失敗。しかし…
- VTuber文化の開花がタイのクリエイターを刺激する? タイキャラクタービジネスの土壌
- 経済目線だけで見落とすのはもったいない現場の熱量
- 国が違えば タイでのイベント良し悪し
- オタクとメインストリームに断絶がない──タイVTuberの可能性
はじめにお話をうかがうのは、VTuberのプロデュースやアニメの文芸・企画などを手掛けている日本人のつむじさん。
タイのVTuberの運営協力や、開発中の現地発アプリゲームでシリーズ構成・脚本を担当するなど、現在日本とタイを往復しながら活動している。
元々は日本のVTuber黎明期に脚本を手掛けていたつむじさん。タイでの仕事の始まりは、旅行先として訪れたことがきっかけだった。
「タイを気に入って何度か旅行で足を運んでいたのですが、たまたまKADOKAWAと現地企業との合弁会社・KADOKAWA AMARINでVTuber事業が持ち上がりました。そこで現地の勘とVTuber業界経験のある僕に白羽の矢が立ったというわけです」
そして2020年3月にKADOKAWA AMARINからデビューしたのが、YuChanことYu Estella Kirameki。キャラクターデザインには、日本で活動するVTuber・九条林檎さんらのキャタクターデザインでも知られているイラストレーター・LAMさんが起用された。
バーチャルYouTuberの草分け的存在である日本のキズナアイのスタイルを追うように、動画投稿を主軸にした活動を開始した。
タイの古参VTuberタレントの1人とされているAishaがデビューしたのが2019年7月のことだったため、かなり早い取り組みだったと言えるだろう。
タイ国内でも盛り上がりつつあったVTuberブーム黎明期を支える一人として活動していたYuChanだが、日本からはにじさんじやホロライブといった人気事務所が海外展開に力を入れ始めたタイミングでもあった。
「タイの人たちもにじさんじやホロライブのVTuberを見ていて、いちどライブ配信に慣れると動画投稿のスタイルを追うのがかったるいな、という雰囲気になってしまったんです」とつむじさんは語る。
タイでは基礎的な英語もわかる割合が日本と比較して多いため、英語をメインに配信する諸外国のタレントに触れることへの抵抗が少ない。また、理解が難しい日本語中心のタレントであっても、日本における洋楽ファン的な熱量を持って応援することがあるようだ。
そのため、VTuberファンは増えていったものの、タイのVTuberよりも当時は日本などの国外発のVTuberタレントの方が強い存在感を持っていた。
世界的なVTuberのトレンドとしても動画投稿からライブ配信、そして3Dモデル主体からLive2Dキャラの隆盛へと移り変わっていた。YuChanもゲーム実況などのライブ配信も取り入れてはいたものの、3Dモデルでの動画投稿に主軸を置いた運営方針は苦戦を強いられ、2021年12月をもって引退。
しかし、実はこのYuChanでの失敗が、今のタイVTuber文化へと繋がってもいる。
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