Interview

  • 2024.02.27

コメカミワークス×QuizKnock河村拓哉 対談 YouTube時代に“越境”を実現する手段

コメカミワークス×QuizKnock河村拓哉 対談 YouTube時代に“越境”を実現する手段

「そのジャンルやカテゴリを知らない、コミュニティの外側にも届く力をもつコンテンツ」をKAI-YOUでは“ポップ”と定義してきた。

そしてポップポータルメディア・KAI-YOU.net運営開始10周年を記念して開催された「KAI-YOU HYPER POP AWARD 2023」で、大賞およびQuizKnockの河村拓哉賞を受賞したのが『コメカミマスター』である。

コメカミマスターの大賞受賞記念インタビュー

今回、それを記念して、ゲスト審査員を務めたゲスト審査員を務めたQuizKnockの河村拓哉氏、そして大賞および河村拓哉賞を受賞した『コメカミマスター』を制作したコメカミワークスの長岡岳大氏と濱口啓介氏による鼎談をお届けする。

KAI-YOU大賞および河村拓哉賞を受賞した「コメカミマスター」

本対談は、河村拓哉賞の受賞記念対談というだけに留まらず、「ジャグリングとは?」「クイズとは?」といった定義を確認しながら、ジャグリングとクイズの構造的共通点や、YouTubeに訪れる短尺トレンドにどうアプローチするのかといった話に及んでいる。

目次

  1. 映像であることに向き合った『コメカミマスター』へ贈る言葉
  2. いくらでも嘘をつける現代で、大事にするのはライブ感や説得力
  3. 外に届けるために、あえて定義を広くとる
  4. 河村拓哉の考える「良いクイズ」とは何か?
  5. ポップな作品を求める人たちへ、それぞれのメッセージ
  6. コメカミワークスと河村拓哉とのコラボ動画オフショット

映像であることに向き合った『コメカミマスター』へ贈る言葉

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(左)主演・監督の長岡岳大さん (右)演出の濱口啓介さん

──『KAI-YOU HYPER POP AWARD 2023』の大賞とともに河村拓哉賞を受賞したのが、コメカミワークスによる『コメカミマスター』でした。今回は河村拓哉賞の副賞「河村拓哉と対談インタビュー」として、皆さんにお越しいただきました。

長岡岳大 コメカミワークスで『コメカミマスター』の主演、監督をしている長岡です。よろしくお願いします!

濱口啓介 『コメカミマスター』には演出として、アドバイザー的に関わっている濱口です。よろしくお願いします。

河村拓哉 QuizKnockの河村です、今回はよろしくお願いします。

──河村さんには『コメカミマスター』選出にあたり審査コメントも出していただきましたが、改めて『コメカミマスター』の感想やどういった点に惹かれたのかをうかがえますか?

審査員・河村拓哉さんからのコメント

短尺動画とそのプラットフォームはいま、流行の発信地と大量消費地です。様々な分野や表現が侵入し、単一のフォーマットで競い合うレッドオーシャンになっています。その中で、このサーカスは、向き合っている。

プラットフォームやフォーマットを逆手に取る作品、私は好きですし、私が作るのもそういうものですが、そういった態度を本作は避けています。飛び道具的でない。サーカスを題材にしつつ、サーカスを愛しています。それを前提として、動画として巧い。盤石さを固めた上でバズりやすさを加えた、「重心の位置に意識的な越境」と言いましょうか、これはあらゆる表現者の手本だと考え、審査員賞とします。「KAI-YOU HYPER POP AWARD 2023」より

河村拓哉 今回、『KAI-YOU HYPER POP AWARD 2023』の前提として“ポップ”を「そのジャンルやカテゴリを知らない、コミュニティの外側にも届く力をもつコンテンツ」というふうに定義されていました。そこで、審査する際にいったん「何事にも興味のない人」になって、つまらなさそうな顔で見ながらも「面白いな」と感じたのが『コメカミマスター』でした。

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審査員をつとめたQuizKnockの河村拓哉さん

河村拓哉 興味がない状態で見ても、内容のわかりやすさや言葉を使っていないのに伝わるつくり方、間のとり方や色の使い方などが上手でしたので、面白いと感じたのだと思います。

長岡岳大 細かいところまで見てくださっていて、ありがとうございます。色合いや間の取り方も意識してつくっていたので、そこにフィーチャーしていただけるのはすごく嬉しいです。

濱口啓介 普段制作したコンテンツを言語化していただく機会はなかなかありませんので、そういった見方をしてもらえたことはとても嬉しいです。

コメカミマスター『針と風船』

河村拓哉 もし自分にジャグリングの技術があって、ショート動画をアップしてみようとなったら、まず大技に「超絶技巧」みたいなテロップをつけて投稿してしまうと思うんです。でも、『コメカミマスター』はそれを裏切る形で落とし込んだのが良いですよね。

長岡岳大 『コメカミマスター』では“日常”をキーワードに、サーカスが持っている空気感やキャラクター、技術といった不可思議なものを保ちつつ、日常との少しのズレ感を楽しんでもらえるように制作しました。技だけではなく、それをとっかかりにした新しいサーカスのおもしろさが伝われば……と。

河村拓哉 「絶対にキャッチする」というクライマックスの瞬間、視聴者が注目するわかりやすいポイントが設定されていて、非常に見やすい形になっていました。

いくらでも嘘をつける現代で、大事にするのはライブ感や説得力

──河村さんは審査員コメントにて「短尺動画とそのプラットフォームはいま、流行の発信地と大量消費地で<中略>単一のフォーマットで競い合うレッドオーシャンになっています。その中で、このサーカスは、向き合っている。」と評していました。そもそもYouTubeショートやTikTokといったショート動画をめぐる現状について、どのように見ていますか?

河村拓哉 僕の中でTikTokは突然世に現れた印象で、そこからYouTubeショートなど、後追いで短尺動画がどんどん出てくるようになりましたよね。

QuizKnockは、伏線を張ったりクイズをしたりと“考える”ことを見せています。そのため、最初の頃はあくまで長尺動画で勝負していく気持ちだった。それでも世界的にショート動画が隆盛して、現状はどうにかして短い動画も出そうと頑張っています

クイズ王が最後まで話させてくれない【これはフィクションです】 #Shorts

河村拓哉 ただ、クイズは1問出すだけで10〜20秒かかってしまうので、ショートだと面白い1問を見せるだけで終わってしまうんですよ。

長岡岳大 そもそもクイズというジャンルがショート動画に向いていないということですか?

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