海外で再発見される90年代日本語ラップ 「人間発電所」は次の「プラスティック・ラブ」になりえるか?
2021.02.24
元Tajyusaim Boyzのラッパー・Yan Seku(ヤンセク)が2024年1月、ソロアルバム『NATURAL PUNKS』をリリースした。KOHHとして知られた千葉雄喜が総合プロデュースを手がけた初のソロアルバムでもある。
2月9日にはEBISU BATICAでリリースライブを控えているYan Sekuは今、何を語るのか。そのインタビューを、前後編でお届けする。
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元Tajyusaim BoyzのYoung Sex改めYan Seku(ヤンセク)が初となる待望のソロアルバム『NATURAL PUNKS』を配信リリースした。
本作のエグゼクティブプロデューサーで元KOHHとして知られる千葉雄喜の処女映像作品となるMV「1,000yen」が公開されて以来、発売が期待された一枚。
内容は『NATURAL PUNKS』というタイトル通り、一聴して出てくる感想はパンク! 喉を荒削りした、血管がブチ切れそうなYan Sekuの真っ直ぐな声が自分の弱さをありのまま叫んでいる(それは「まーいっか全部捨てちまえ/気に入らねぇまるでベートーヴェン」だったり「財布にタバコ代とジャリ銭/折れ曲がった紙切れ 1,000yen」だったり)……と書くとシリアスな作品に受け取られそうだけれど、どの曲もなぜか前向きな気持ちになる不思議な聴き味だ。
「華があるんすよ」とは千葉雄喜談。これはYan Sekuをプロデュースするに至ったきっかけ、「どこに惹かれたのか」について聞いた時の千葉雄喜からのコメントだ。
この話には続きがあるのだけれど、なるべく先入観なしにYan Sekuの言葉に触れてほしいので、まずは本題=インタビューに入りたい。

痩せた長身、骸骨マークのフーディーにニット帽。ちなみにフーディーのスカルはYan Sekuの手描き、ニット帽の無数のスカルも自分でデザインしたという。たたずまいからして、NATURAL PUNKS?
目次
- KOHHとの出会い、Tajyusaim Boyzの解散
- ナチュラルパンクスの誕生──「俺、弱っちいですし」
- 全部捨てたら本当に自由で、笑える曲ができた
- 素直になれればそれでいいなって。
- 千葉雄喜主催のDogsイベントに後悔はある、けど──
──自己紹介からお願いします。
Yan Seku Yan Seku…です(笑)。なんか変な感じしますね(※筆者とYan Sekuは顔見知りである)。東京都北区出身で、音楽やものづくりが好きです。
──今、何歳ですか?
Yan Seku 28歳です。1995年の6月23日生まれです。
──ありがとうございます。早速ですが、まずはヒップホップユニットである「Tajyusaim Boyz」を脱退してから今に至るところまでの話をうかがいたいです。
Yan Seku 2019年末にTajyusaim Boyzをやめてからは……いや、やめる半年ぐらい前にKOHH君にお会いして。そっから、自分のことを見ていただきつつ。
出会って最初の頃はまだ(Tajyusaim Boyzの)活動はしていました。それで、やめてから毎日のように音楽制作をしてて……もう4年ぐらいですかね。制作しつつ仕事をしつつ、って感じです。
──そもそもTajyusaim Boyzはどういうグループだったのですか?
Yan Seku Tajyusaim Boyzは……僕たちの関係性で言うと、本当にいつも賑やかに楽しくふざけあった仲間たちって感じでした。
──その賑やかで楽しいグループをやめようと思った理由って具体的になにかあったのですか?
Yan Seku 結構俺ん中で、「このまま行くのかな?」みたいな悩みはずっとあったんですよね。なんですかねぇ……。ずっと一緒にやっていくことは正直最初から頭になかったっていうか。でもその引き際もわかんなくて……。別に具体的にやめることを決めてはなかった時に、「そのタイミングいつなんだろうなぁ〜」ってなんとなく悩んでたぐらいの頃にKOHH君にお会いして。そういうことも相談させてもらいましたね。
そういう中で、より自分の音楽をやりたいというか、1人でやれることをやっていきたいなと思うようになっていった感じです。それでやめるって話をTajyusaim Boyzのみんなにして、みんなも一切否定せず頑張れって背中を押してくれて、今に至ります。
──グループとソロ、両方やるという選択肢はなかった?
Yan Seku ん〜〜〜なんでしょうね。(Tajyusaim Boyzは)自分の中でちょっと、なんかアイドル的なところがあったのかな。正直無理してる時もありました。自分をつくっちゃってるというか。(本名である)宮崎龍介とYoung Sexが別すぎて、それがしんどい時はありました。
なんか、かっこよく見られたすぎたのかもしれないっすね。ライブにしても人に会うにしても、何をしてても。Young Sexで会う人と地元の友達とか仲間うちでの宮崎龍介と、自分の中で全く違う感じになっちゃったんですよね。メディアでもライブでも、ステージを降りた後も。それがしんどいなーみたいな。
──2023年には、PizzaLoveさんが引退してTajyusaim Boyzは事実上解散しました。どう受け止めてますか?
Yan Seku 単純に悔しかったですね。俺ん中ではなんか、お互い全く別の形だけどあいつらと同じイベント出たいみたいな気持ちはあった中での解散だったので。切磋琢磨していきたかったというか……そういう悔しさはあります。
PizzaLoveの引退発表動画見て、リーダーに速攻電話しました。
──Tajyusaim Boyzの時は本来の自分自身とYoung Sexが別になってしまっていたという話がありました。今回のアルバムは、もう「俺」(=自分自身)という感じですか?
Yan Seku 結構、俺って感じですね(笑)。
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