『メタファー:リファンタジオ』が多種族社会で描いた差別と境界──対立は本当になくなるべきか?
2025.03.30
『遊☆戯☆王オフィシャルカードゲーム』(通称「遊戯王OCG」)は、1999年の日本での展開から26年の歴史を誇る。世界でも人気が高いカードゲームながら、中国での展開が始まった2014年まで、海賊版が横行してきた。
前回に続き、今回は実際にその海賊版遊戯王カードで、デッキを組んでデュエルしてみた。
「なぜTCGで海賊版のカードを使用していけないのか?」と言われれば、それはひとえにそれらのカードが違法だからであり、正常なゲームルールを破壊してしまうためだ。
当たり前のことを言うようだが、なんでもありではゲームは成り立たない。「このカードをひけば勝利」という効果のカードを40枚デッキに積んでよいのであれば、それはもう最初のジャンケンで勝負がついているのと全く同じであり、カードゲームを遊ぶ意味すらなくなってしまうだろう。「現代遊戯王は最早ジャンケンみたいなところあるから」みたいなオタク語りは面倒くさいので、一旦ここではこらえてもらいたい。
とは言え海賊版遊戯王の歴史を紐解けば、実質的に「このカードをひけば勝利」という効果を持つカードが何十種類も流通していたのもまた事実だ。なんでもありではゲームは成り立たない。しかし一口に成り立たないと言っても、一体現実には海賊版での勝負はどう成り立たなくなっていたのだろうか?
その歴史を紹介してきた中国発“パチモン遊戯王カード”の続編となる今回は、一種の思考実験として、かつて中国で流通していた海賊版遊戯王カードの中から、パチモン業者のつくり出したオリジナルカードのみを集結し、「海賊版環境最強デュエリスト」のデッキ構築再現を試みた。
海賊版なしのカードプールでいかにこれらのカードに打ち勝つか、是非皆さんには頭を抱えて考えてみてもらいたい。
目次
- 「海賊版環境最強デュエリスト」を再現したデッキを組む
- 1枚エクゾディアこと「黑暗大法师」
- 誤植から生まれたオーバーキル魔法「昼夜的大火灾」
- “覚悟”と“腕力”が試される「強奪」
- 海賊版遊戯王環境におけるメタ
- すべてを除外するパワーカード「奥利哈刚天神荡」
- どちらが真のパチモンブランドか──パチモン業者同士のお家騒動
- 海賊版オリジナルカードを狙い撃ちする、メタカード
- インフレに次ぐインフレ 膨れ上がりすぎて読めない効果テキスト
- 遊戯王OCG最長の効果テキストを優に塗り替える「绝对魔法圣结界」
- 絶対防御すぎる「终极魔法多重圣结界」
- なんでもありすぎて逆に謎が残る「游戏王三幻神光创」
- 中国だけじゃない 星の数が増え続けたタイのパチモン遊戯王カード
- 星は81、攻撃力は2無限 タイが生んだ「女王の影武者」
- 無限×6 「印されしエクゾディア」
- 三幻神のカードが海賊版でも人気な理由
- オシリスの天空竜を凶悪にした「沉默的地狱判官天空龍LVMAX」
- オベリスクの巨神兵を最大最強にした「沉默的圣石巨神兵LVMAX」
- ラーの翼神竜をひたすた強化した「沉默的太陽神翼神龍LVMAX」
- 「ぼくの考えた最強のカード」を地でいく「邪之創造神」
- 海賊版デッキの一撃必殺が止められた場合の保証カード
- 後攻ワンキルを約束してくれる「奥利哈刚 亡霊之眼」
- ペガサスのアレをカードにした「千年眼」
- 海賊版デッキの要となる「規則守護者之封鎖二」
- パチモン遊戯王最強決闘者のデッキレシピが、こちら
- 海賊版遊戯王最強デッキの弱点
- 現環境デッキ【ライゼオル】【M∀LICE】と海賊版デッキでテスト対戦した結果……
- 赤野工作から、読者に問いかけたい
通常この手のデッキ構築記事は、最初にアーキタイプ(デッキの構成)の選定や説明から入るのがセオリーかもしれない。
しかし海賊版環境において、対戦でよく採用される「環境デッキ」と呼べるものは基本的にただ一つ、“グッドスタッフ”※しか存在しない。なぜならたった一枚で勝敗を決する効果を持つカードが複数存在する環境では、シナジーやコンボを考える意味がまったくないからだ。
※グッドスタッフ:それ一枚で優れた効果を発揮する強いカード、あるいはそのカードで構成されたデッキ
効果モンスター 星12/闇属性/戦士族/攻 無限大/守 無限大
「封印されしエクゾディアの封印が解かれたとき、無限のパワーが敵を消し去る」
代表的なものからいこう。まずは「このカードをひけば勝利」カードの筆頭格、「1枚エクゾディア」。2000年代前半から現在に至るまでつくられ続けている海賊版カードの代名詞であり、攻守無限の数値を持つレベル12効果モンスターだ。
通常5枚に分割されているエクゾディアが最初から1枚にまとめられているため、原則として効果は「このカードが手札に存在する場合、自分はデュエルに勝利する」と扱われる。引いた瞬間即特殊勝利。『遊☆戯☆王オフィシャルカードゲーム』(通称「遊戯王OCG」)のデッキ構築ルールに沿って最大3枚積めば、初手の勝利確率は約34%。さすがは海賊版と言うほかない、バランス度外視のぶっ壊れカードだ。
しかし強いカードではあるものの、海賊版だからこその弱点も存在する。実はこのカード、テキストに「封印されしエクゾディアの封印が解かれたとき、無限のパワーが敵を消し去る」としか書かれていない。これは海賊版業者がフレーバーと効果テキストの違いがわかっていないことに由来する割とよくある問題であり、正しい効果があやふやなのだ。上記で紹介した効果もあくまで一般的に用いられる解釈であり、対戦相手から「このカードにそんなこと書いてないじゃん」と強弁された場合には分が悪いことは念頭に置く必要がある。
「奇蹟方舟」は効果が不明確なカードの典型例。ピリオドの代わりにクエスチョンマークが使用されているため、どういう効果として扱うか判断が分かれる
通常魔法
「相手ライフに20000ポイントダメージを与える」
より単純に勝ちたい場合に用いられるのが、遊戯王パーフェクトマスターBOOK初版版「昼夜の大火事」。
「昼夜の大火事」自体は、1999年のBOOSTER2で登場した歴史の古い通常魔法であり、OCGでは「相手ライフに800ポイントダメージを与える」バーンカードとなっている。その改変であるこのカードの効果は「相手ライフに20000ポイントダメージを与える」。海賊版環境と言えどLP8000からデュエルが始まるのが通例であるため、基本的に相手に妨害札がない限り、手札に入った瞬間勝ちが確定するカードである。
「昼夜的大火灾」は台湾海峡の両側でつくられた代表的なパチモンオリカ。年代の差も含め無数のバージョンが存在する
一見無茶苦茶に見えるバーンダメージにも、実はちょっとした歴史的正当性がある。1998年に発売されたゲームボーイソフト『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』、その攻略本である『遊・戯・王デュエルモンスターズパーフェクトマスターBOOK: 上巻』の初版にいくつか誤植があったことをご存知だろうか。
その本の中では「昼夜の大火事」の説明が誤って20000に設定されてしまっており、これを参考にした海賊版業者が20000ダメージのバーンカードというぶっ壊れカードを大量につくってしまったというわけだ。
通常魔法
「このカードを発動したプレイヤーはデュエルに勝利する。この時、相手プレイヤーの所持カードを全て奪い、返さなくても良い」
しかしいくら歴史的な正当性があったところで、こんなカードを使って先行ワンキルを決められたら、対戦相手がもう二度と遊んでくれなくなる可能性もあるだろう。ただしそんな杞憂すらも、海賊版の文脈にかかれば本当にその対戦相手とは「二度と遊ばない」という戦術の幅として回収することが可能だ。
OCGの装備魔法カード「強奪」を改変したZZ少年館版「強奪」は、海賊版遊戯王の中でも1、2を争うカードパワーを誇るカードであり、まさに”覚悟が決まった”プレイヤーにとって最後の切り札として非常に悪名高い。
海賊版「強奪」にも複数のバージョンが存在。後にテキスト欄を広げるようカードデザインが改定されてからも再録されている
効果は「このカードを発動したプレイヤーはデュエルに勝利する。この時、相手プレイヤーの所持カードを全て奪い、返さなくても良い」。ようは引いた瞬間即特殊勝利、おまけに相手の所持カードをデッキ丸ごともらえるオマケつき。どうせ「二度と遊ばない」相手なら、カードまでぶんどっておいた方が良いという合理的なカードだ。
残念ながら、実際に使用されてカードを奪われたケースは一例たりとも聞いたことがない。おそらく文面通りの運用にはそれなりの腕力を要することになるだろう。
たった3枚紹介した時点で、デッキの9/40がその一枚で勝負が決するぶっ壊れカード。「こんな環境でデュエルが成り立っていたのか?」と言われればそれは当然成り立っていなかったわけだが、無法もまた法であり、無法には無法なりのカードゲームとしてのメタが存在する。
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