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  • 2019.09.24

「クールジャパンは足を引っ張ってるだけ」

視聴環境が大幅にアップデートされる中、わたしたちは大量の情報とどう向き合っていけばいいのか?

そして、海外に在住するひろゆきが考える、日本のコンテンツ産業がとるべき戦略とは?

「クールジャパンは足を引っ張ってるだけ」

ひろゆきさん(写真は本人提供)

日々あらゆる作品が生まれ、サブスクリプションサービスによってこれまで触れられなかった作品にもアクセスしやすくなった。結果、受け手としては膨大な情報量に接することとなり、つくり手としては市場競争がますます激化していっている。

ポップカルチャーに限らず、インターネットが生活とも地続きになったことで、情報の取捨選択がますます重要になった。

しかし、インターネットがどこまでも開かれた結果、それらの情報の精度を見極めることの難易度も相対的に跳ね上がってしまった。

「超情報化社会」という言い回しさえ手垢がつきすぎた現在、私たちはこの情報の洪水とどう向き合うべきなのか?

現在はフランス・パリ在住に在住する2ちゃんねる創設者である「ひろゆき」こと西村博之氏に、ポップカルチャー作品を取り巻く情報環境という観点から、その見解を幅広くうかがった。

※全3回にわけて配信、取材はSkype通話にて

執筆:EN Mami 取材・編集:新見直

目次

  1. ひろゆきが作品を楽しむ“ルール”
  2. 「こんまり」大ヒットはプラットフォームの力
  3. 日本での“エロ”はニッチな突破力はあるが…?
  4. 新体制が発足したクールジャパン、「無差別に投資した方がマシ」
  5. 税金を投入して投資する意義
  6. 海外でヒットする作品を増やすためには?

ひろゆきが作品を楽しむ“ルール”

──2020年間近となった今、作品数も膨大に増え、これまでと比べて明らかにコンテンツへの接し方変わってきた気がしています。ひろゆきさんはパリに移られて、コンテンツに対する見方や接し方は変化しましたか?

ひろゆき こっちにいる方が時間が多いので、シリーズをみる時間は多くなりましたね。AmazonPrimeとか、Netflixとかを見て気になったものがあったらとりあえず再生ボタン押して面白そうだったら続けるし、微妙そうだったら作業中に聞いたりしてますね。映画館にはあんまり行かなくなってしまいました。

──やはりサブスクリプションの影響ですかね。逆に、サブスクリプションによって膨大なコンテンツにいつでもアクセスできるようになりましたが、ひろゆきさんはそれをどのように選ばれるのか興味があります。ひろゆきさんは過去のご著作の中でも、ご自身の中にルールをつくられてそれに基づいて行動されることが多いと仰っていますが、コンテンツを選ぶ上で、ご自分の中でのルールはありますか?

ひろゆき それで言うと、「選ばない」というのがルールですかね。映画館に行く時も、どんな映画かわからないようにしてます。予告編観ない方が楽しめる場合も前もって独断と偏見を持たずに行く方が、予想外の面白いものに出会えやすい。でも出会える確率はそれほど高くないですけどね。やっぱり評判が良いものは面白いことが多いですし。

──幅広く話題作に接しているイメージがありますが、世間の評価とご自分的に面白いと思うものに、そこまでズレはないことが多いですか?

ひろゆき ちょくちょくはズレますけどね。『ドラゴンボール』とか『ONE PIECE』は面白いとは思うけど、自分には刺さらないですね。

──では、自分に刺さるコンテンツの条件ってありますか?

ひろゆき 予想外の展開が起こることですかね。何か学びがあったり、その作品を観る前と後の自分を比べた時に違ったりするような作品というか。『アベンジャーズ/エンドゲーム』とか楽しかったと思いますよ。

──パリに移られてから、アニメとかテレビドラマとか、日本のコンテンツを見ることは増えましたか? 減りましたか?

ひろゆき 減ったとは思うんですけど、日本のテレビドラマもアニメも、もともとそんなに見てないんですよ。アニメは去年、アメリカのクラファン(Kickstarter)で7000万円くらい集めてつくった『リトルウィッチアカデミア』を観たくらいです。日本では全然話題にならなかったけれど、海外では大人気になっているのはなんでなんだろうって。アメリカ受けを狙ったものかと思いきや、意外とそうでもなかったので「へー!面白いな」って思いましたよね。

学園ものって世界共通の感覚として郷愁的なものだったりするので、物語に入り込みやすいのかもしれないですよね。「ハリー・ポッター」もそうですし。わかっている世界観じゃないと理解するのが難しいから、簡単な世界観を選んでいるのかも。

なろう系の小説(「小説家になろう」発祥のWeb小説)だって大抵、学園があって、いじめがあって、先輩がいて、みたいな感じですし。

──なろう系と言えば、日本では当たり前にある「異世界転生もの」が海外ではほとんど見られないように思います。

ひろゆき 異世界ものはあるけど、転生ものはそんなにはないですね。

転生するんじゃなくて、現実が変わる方向のものが欧米には多いですよね。例えばゾンビものでも、日本だと主人公がゾンビのいる世界に行くものもあるけれど、欧米ではゾンビの方が現実世界にくる。

転生って概念として難しいんですよね。日本の場合はジャンルの設定をみんながわかっていて、要は「そうなるんでしょ」って文脈が広く理解されているからすんなり受け入れられるんじゃないかなと。

──海外でも文脈が浸透したら増える可能性はある?

ひろゆき 「ハリー・ポッター」も転生ものですよね? 気づいたら駅から隣の世界に行っていたという。アベンジャーズだってそうです。

そもそも日本が多すぎるだけで、転生にこだわらないでもストーリーを書けますし。

なろう系に象徴される異世界の西洋ファンタジーと転生というフォーマットが特に使いやすくて、小説が漫画になったりアニメになってりしてるから日本では目に触れる機会も多いわけですが、それ自体が面白いものじゃないから、海外にあまり輸出されてないんじゃないかなと。

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「こんまり」なぜ大ヒットした?