若いオタクはアニメからVTuberに流れたのか? 7つのポイントから考察
2022.07.31
クリエイター
この記事の制作者たち
「やっと、アニメがクールになった」
KADOKAWAの市ヶ谷ビルで、そう沁み沁みと語るのはアニメ系YouTuberのGigguk(ギグーク)。2007年に活動を開始し、現在ではチャンネル登録者数290万人を誇る欧米アニメコミュニティの代表的な存在だ。
経産省が推進する「クールジャパン戦略」の貢献度はさておき、 2019年、日本国外における日本アニメ市場の規模は1兆円を突破し、同業界の売上の46%を占めるまでに至った(外部リンク)。
これに呼応するように、英語圏では数々のアニメ系YouTuberが頭角を現している。その勢いをいち早く察知したGeeXPlus社(KADOKAWA BOOK☆WALKER傘下)は、2020年にGiggukを含む計11人のタレントと契約を交わした。GeeXPlus社のサポートもあり、彼は2019年末から日本に在住している。
彼をアニメ沼に引き込んだ『NARUTO』から、日本に住んでみて初めて理解できた『シン・ゴジラ』まで。そんな彼のアニメ史とチャンネルの成長は、世界のアニメ「受容」の変遷の映し鏡だ。
海外アニメシーンの生き字引ともいえる彼が語る、数字だけでは見えてこない世界のアニメ受容の変遷と、その未来に迫る。
インタビュー・執筆:LIT_JAPAN 撮影・編集:和田拓也
目次
- 欧米のアニメ好きにとっての2000年代
- 世界のアニメ受容の現在地
- ファン字幕が果たした役割
- アニメ好きは何を求めている? アニメ批評の需要
- 世界を席巻する「Shonen」ジャンルと日米ヒーロー比較論
- グローバルにおけるアニメの10年後
──Giggukさんのアニメとの出会いを教えて下さい。
Gigguk 僕は1990年生まれなんですが、やはりアニメとの初遭遇はアニメ版の『ポケモン』でした。当時は『ドラゴンボールZ』、『セーラームーン』、それに『CCさくら』もテレビで「カートゥーン」として放送されていました。まだ子どもだったので理由は分かりませんでしたが、西洋のアニメーションよりも惹かれました。
11歳くらいの頃に、ネットの掲示板で『NARUTO』や『エヴァンゲリオン』のアイコンを多く見かけるようになったんです。『ドラゴンボールZ』や『ポケモン』など、昔観ていたアートスタイルを彷彿とさせるものでした。その時に初めて、自分が観ていたものが「アニメ」というものだと知ったんです。そこから、まず『NARUTO』を初めに観て、次に観たのが『エヴァンゲリオン』だったんです。まだ11歳だったのに(笑)。
──11歳でエヴァ初体験はすごいですね。
Gigguk 掲示板で「『NARUTO』みたいなアニメを教えてくれ」と頼んだら、『エヴァを』薦められたんです。それ以来、当時台頭してきたインターネットの力もあって、たくさんのアニメに出会うことが出来ました。
──その頃、つまり90年代中期から2000年代初期のアニメシーンを取り巻く状況はどのような感じでしたか?
Gigguk 当時の欧米では、アニメはやはりギークでナード、いわゆるオタクなものとして軽蔑されていて、引きこもりや大人になれない人たちが観るものとして捉えられていました。僕もアニメが大好きだったのですが、周りには秘密にする必要がありましたね。
90年代はもっと酷かったと思います。テレビで大々的に放送されていたこともあって、子ども向けのメディアだというイメージがもっと強かったと思います。2000年代中期になっても、アニメは子ども向け、もしくは「Hentai(成年コミック/アニメ)」などのポルノ的なイメージが根強く、アングラなものでした。いち芸術表現として認められてこなかった。
それが2010年代に突入して、ようやくイメージが変わってきた。オフラインでアニメが好きだという知人や友人が現れ始めたのも、2010年代以降でしたね。
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