Interview

  • 2020.01.24

韓国ユースカルチャーの曲がり角 ソウル発ファッション誌『MAPS』編集長の怒り

韓国ユースカルチャーの曲がり角 ソウル発ファッション誌『MAPS』編集長の怒り

今年で創刊から14年目を迎えた韓国・ソウル発のインディペンデントファッションマガジン『MAPS』。

ローカルな才能を発掘しつつパリやニューヨーク、東京、北京と各国のクリエイターとネットワークをつくってきた同誌は、新たに「SUPER MAPS」と題したデジタルプラットフォームを立ち上げさらにその活動を加速させている。

「SUPER MAPS」は、韓国や日本、ヨーロッパ、アメリカなどユースカルチャーをベースに活動するアーティストやクリエイターたちが情報を共有し、自分の作品や情報などを発信・販売するeコマースプラットフォームだ。個人と企業を繋ぎ、世界のアーティストと企業を繋げることを掲げている。

MAPS

当時大学生だった彼が立ち上げ、時間をかけて韓国随一のインディペンデントメディアとしての地位を築いた『MAPS』。その存在は若きクリエイターをサポートし、自由で挑戦的な表現を可能にした。その動きがクリエイティブシーンの加速に寄与したのは間違いないだろう。『MAPS』をはじめファッション、音楽、映画とさまざまな領域で同時多発的に新たな才能が育っていった結果、かつては欧米のムーブメントを追随していた韓国のカルチャーもまた、BTSが米国のビルボードチャートで1位を記録するなどいまでは世界中を席巻し巨大な影響力を誇っている。

韓国のクリエイティブシーンのあり方を示す存在となっていった同誌の歴史を振り返ることは、韓国カルチャーの成熟を振り返ることでもあるだろう

いまや全世界を覆うK-POPブームのはるか前から韓国のユースカルチャーに注目してきた同誌編集長 リュウ・ドヨンに、韓国社会や文化の変化をどう見つめているのか。そしてどこに向かおうとしているのか。

インタビュー・執筆:もてスリム 編集:和田拓也 撮影:高橋勇人 通訳:ByeongCheon SONG

雑誌のゴールは「ホテル」?

MAPS

「ぼく、最終的にはホテルをつくりたいんですよ。仲間が集まって安心して休めるようなホテルを。ぼくにはその責任があると思っています」

そう言って、彼は自身の目標について話しはじめた。リュウ・ドヨン、35歳。韓国・ソウル発のインディペンデントファッションマガジン『MAPS』ファウンダーにして編集長。

創刊13周年をむかえ、新たに「SUPER MAPS」と題したデジタルウェブプラットフォームを立ち上げるのだとインタビュー前に知らされていたものの、本人の口から語られたのはホテルの構想だった。

「ぼくがこれまで雑誌を通じて自由な表現を行なってこれたのは、家族や友人が協力してくれたからでしょう。いわばみんなの“犠牲”のおかげでぼくは楽しく生きている。だからみんなが休む空間を用意するためにホテルをつくりたいんです。インタビューのために日曜の朝から原宿に集まってくれたあなたたちのためにもね(笑)」

このインタビューが収録されたのは12月の日曜午前10時。朝方まで『MAPS』のパーティが行われていたこともあり、リュウは疲れた表情を浮かべながら待ち合わせ場所のカフェに遅れてやってきた。慌てて身支度したのかカミソリ負けしたのか、アゴにはうっすら血の跡が残っている。

以前からリュウと一緒に働いているという通訳やプロデューサーの面々は半分呆れながらも、「リュウさんはなににも縛られない人だから」と笑っている。自由奔放に振る舞いながらも、リュウのまわりにはつねにいろいろな人が集まってくるらしい。

MAPS

「ホテルをつくる前に、ギャラリーもつくりたいんですよ」と彼はさらに続ける。「『MAPS』に協力してくれたクリエイターたちの作品を飾るギャラリーをね。もちろん、ホテルの中にも映像や写真を展示する場所をつくれたらと思っています。その基盤になるプラットフォームが『SUPER MAPS』になればと思っています」。

韓国の気鋭フォトグラファーやスタイリストをフックアップするのみならず、ニューヨークやパリ、東京、北京、あるいはブエノスアイレスやモスクワなど世界各地のクリエイターと作品をつくってきた『MAPS』。この雑誌に携わるクリエイターの作品が一望できるホテルやギャラリーはたしかに楽しそうだ。しかし、どうして雑誌をつくりつづけてきた彼がそんなことを考えているのだろうか?

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