変容するシーンの中で「P」で居続ける理由

Interview

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  • 2019.03.29 12:00:00

初音ミク10周年をはじめ、米津玄師や須田景凪らボーカロイドをルーツとするアーティストたちの躍進といったメモリアルな出来事を経て、ボーカロイドシーンはまた新たなフェーズに突入している。

変容するシーンの中で「P」で居続ける理由

元々、ボーカロイドはニコニコ動画を中心に栄えたカルチャーだった。

しかし近年ではYouTubeでもオリジナル曲や「歌ってみた」が数多く投稿されるなどシーンの様相は変化し続け、2018年を代表するヒット曲となった「ロキ」はボーカロイドと人間がデュエットするというめずらしいアプローチで人気を獲得。

結果、2018年に最も飛躍したYouTuberたちがGoogleに招待されるイベント「YouTube FanFest 2018」でライブが披露されるほどの盛り上がりを見せた。

ロキ/鏡音リン・みきとP

「ロキ」を制作したのは「いーあるふぁんくらぶ」など多くのヒット曲を生み出しているみきとPさん。

自ら歌唱することに加え、近年ではアーティストへの楽曲提供をするなど音楽作家としての活躍の場を広げているが、長年ボカロPとして最前線に立ち続けている。

紅白へ出場した米津玄師をはじめ、ボカロPとしての活動をルーツに持ちJ-POPのフィールドで活動をするアーティストは近年数を増やし、その存在感を増し続けている。

みきとPさんは、新たなフィールドへ活動拠点を移すボカロPたちと比べても遜色のない実績を持ちながらも、ボカロPとしての活動を貫く。独特の発展を遂げてきたボーカロイドというシーンの中に何を見出だしたのか。ボカロPを貫き、最前線で戦い続ける真意を探っていく。

ボーカロイドに頼るしかなかった

──まず基本的な部分からうかがいたいのですが、みきとPさんはどのように音楽をはじめられたのでしょうか?

みきとP 小学校の低学年の頃に習い事でピアノをやっていたのですが、それはあんまり乗り気じゃなくて辞めてしまったんです。

その後小学校6年生の頃に姉の影響でCDを聞いたり、ライブのビデオを見るようになったのですが、その中でもTHE BOOMのライブビデオをみて、親にギターを買ってほしいとねだったのが自分から音楽をやりはじめたきっかけでした。

──ボカロPとして活動する前はバンドでも活動されていたんですよね。

みきとP 中学生の頃も友達と弾き語りをしたりはしていましたが、バンドをやりはじめたのは高校生で、オリジナルの音楽をつくりはじめたのは大学生の頃です。

バンド系サークルに所属していたのですが、サークル外で活動するいわゆる「外バン」というのをやっていて、サークルの中では一目置かれているというか、期待されているポジションで、なんとなく自信を持ってやっていましたね。

──その頃からプロになることを意識されていたのでしょうか?

みきとP なにかのタイミングで「俺は音楽で食っていくぞ!」と決意したということはないんです。今の状態をプロと言うならば、バンドをやりはじめた中学生の頃からそうなるだろうなと漠然と想定していて、他に選択肢はなかったというか、別の可能性を考えたことはありませんでした。もちろん想像通りここまできたわけではなく、想定外の紆余曲折はあったんですけども。

──そこからボカロPとして活動をはじめられることに。

みきとP 大学生の時から続けていたバンドが2007年頃に解散してしまって。その後は音楽から離れた生活を送っていたんです。バイトはしながらも人付き合いもせず、音楽仲間とも全く関わらなくなり、朝からビール飲んでニコニコ動画を見るっていうやさぐれた日々を送っていて、今思うと絶望の淵を歩いていたようにも思います

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みきとP これからどうしようかなと考えていた時に、ニコニコ動画でサカモト教授さんの動画を見て、ゲーム音楽ってこんなにかっこいいんだと気づかされて、例えばこれを自分がやっていたバンドでやったらどうなるかなと考えるようになった。

そのあたりから音楽に対する意欲を取り戻していって、曲をつくりはじめたんですが、仮歌を入れる段階で周りに頼める人がいないことに気づいてしまいまして。そういえばボーカロイドっていうのがあるらしいと。これで仮歌を入れてみようかなと思ったのが最初にボーカロイドに触れたきっかけでした。

──最初からボカロで曲をつくろうとして動画投稿をはじめたわけではなかったんですね。

みきとP バンドを辞めてからこれまで仲良くしていた音楽界隈と距離をとっていましたし、そもそも他人とのコミュニケーションをとるのも難しいみたいな状態にまで陥っていたので、楽曲の仮歌はボーカロイドに頼るしかなかったんです。

それからニコニコ動画の関連動画を見たりするうちに、ボカロを活用したかっこいい曲がたくさんあって、それをつくるボカロPって人たちがいて、シーンを形成していることを知りました。おかげで音楽に対する意欲も取り戻していたので、じゃあ俺もやってみよう! と腕試しのつもりで最初の曲をあげましたね。

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かつて、ボカロという「中心」があった

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