

音楽家として成功を果たしただけではなく、実は企業家として現在は4つの会社を設立している経営者・Tom-H@ck。
その彼が気になるサービスを訪問。初回は、2021年1月に2億円を調達したばかりの、ビジネス書の要約サービス「flier」の現場へ。

2008年の音楽家デビュー作にして大ヒット作となったTVアニメ『けいおん!』の楽曲を手がけ、その後、自身のアーティスト活動「OxT」「MYTH & ROID」という2つのユニットでアーティストデビュー。同時に、企業家として現在では4つの会社の経営者でもあるTom-H@ck。
彼がクリエイター・経営者として気になるWebサービスの運営会社に突撃し、会社の成り立ちからサービスの秘密まで、気になることを根掘り葉掘り聞く連載。
初回である今回は、ビジネス書をメインに約2,400冊の本の要約を提供するサービス「flier」を運営する株式会社フライヤーに突撃。2013年設立、累計会員数78万人(2021年3月)を抱える急成長を見せるサービスだ。

左からTom-H@ck、井手琢人/株式会社フライヤーにて
なぜ“要約”が人気なのか? 出版社とはどのように交渉してきたのか? 執行役員プロモーション担当の井手琢人さんに話を聞いた。
撮影:I.ITO
目次
- 本の要約を2400冊読める「flier」はどのように生まれた?
- 本の要約をなぜ出版社が許諾したのか?
- ビジネスパーソンの関心も「健康」にシフト?
- なぜ「書評」ではなく「要約」? YouTubeとの類似性
- 「ネットで話題になったらネットで買われる」をどう突破した?
本の要約を2400冊読める「flier」はどのように生まれた?
Tom-H@ck そもそもflierは、どういった経緯で生まれたサービスなんですか?
井手琢人(以下、井手) 代表の大賀(康史)のアイデアですね。大賀はもともと経営コンサルタントをやっていたのですが、コンサルタントってすごくたくさんの本を読まなければならないんですよ。どれだけインプットをしていて、どれだけ知識があるかが大事。話題のビジネス書、ビジネス誌、新聞……全部読んでいたとしても、ようやく半人前くらいの世界なんだそうです。
Tom-H@ck なるほど、情報量がものを言う世界。
井手 だから平日はコンサルタントとして仕事をしながら、休日は片っ端から本を買ってきて読む。そんな生活をしていたらしいのですが、いざいろいろ読んでみたら、「これは今学びたい内容とは違う本だったな」となってしまうことがけっこうあったみたいで。そんなとき、本を選ぶ前にある程度内容がわかる要約があったほうがいいと思い、要約を提供するサービスを思いついたのだそうです。
Tom-H@ck 要約があれば、本を開く前の手掛かりになりますもんね。たしかに僕も「flier」を使ってみて、“本の内容のおおよそがわかる”というのは、すごく意味があることだと実感しました。
井手 ありがたいですね。
Tom-H@ck 僕のTwitterなどに「努力や勉強が苦手なんです。どうしたらできますか?」という相談がよく送られてきます。僕が毎回言うのは「1日5秒や10秒でもいい。一番ハードルの低いところからでいい」と。人間ってはじめの一歩が大変で、始めてから勢いさえついてしまえば身につくんですよね。その一歩を踏み出しやすいのはすごくいいなって。
井手 まさにそのとおりです。よく、「今の人は活字離れが進んでいる」と言われるじゃないですか。でも、電車の中とかで見渡してみると皆さんけっこう活字を読んでいるんですよ。スマホでネットニュースを読んだり、SNSを眺めたり、それも活字ですよね。だから意外と活字離れをしているわけではなくて、単に本を1ページ目から読み進めるハードルが高いだけなんです。
Tom-H@ck たしかに、活字から離れているわけじゃないですよね。
井手 「まったく活字を読まずに寝る日はありますか?」と言われたら、絶対にそんなことはないはずです。
本の要約をなぜ出版社が許諾したのか?
Tom-H@ck どのようにこのサービスを実現されているのかも興味があります。極端に言ってしまえば、出版社の方からすると“自分たちが製作した商品”を元手に商売されるわけですよね。「要約を販売されたら自分たちの売上が上がらないじゃないか」という声も少なからずあったんじゃないですか?
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flierは本を買うために“Webに足りなかった”ものを埋めた
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