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  • 2021.05.29

クラブの“現場”はどこにある? 「clubasia」鈴木店長×「GHOSTCLUB」0b4k3対談

実空間と仮想空間にそれぞれ構えるclubasiaとGHOSTCLUB。

それぞれの立場から見たDJ配信の現在。

クラブの“現場”はどこにある? 「clubasia」鈴木店長×「GHOSTCLUB」0b4k3対談

日常的に開催されるようになったクラブやライブハウスによるライブ配信。以前から国内ではDOMMUNE、海外ではBOILER ROOMといった音楽プラットフォームが主導的な立場を担ってきたDJ配信も様々な形で進化している。

コロナ禍により系列3店舗の閉鎖を余儀なくされたclubasiaでは、店長の鈴木将氏が中心となり、DJ配信に取り組んできた。「いかにリアルの現場とは異なるDJ配信ならではの魅力を高めていくのか」をテーマにユニークな企画を立ち上げDJ配信を充実させることで、現在ではリアルのクラブだけでなく、配信のコミュニティもできあがり、盛り上がりを見せている。

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clubasiaでのTwitch配信/右が鈴木店長

一方で現在、これまでのDJ配信にはないバーチャルならではの魅力を発信することで人気を博しているのがVRDJの0b4k3(オバケ)氏が主催するVRChat上の無料クラブイベント「GHOSTCLUB」だ。

イベントが開催される毎週金曜日には、リアルさながらのクラブミュージックがプレイされ、それを求める多くのユーザーのアバターで賑わいを見せている。

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VRChat上のクラブ「GHOSTCLUB」 撮影:MANE

2つのDJ配信は、実際に人が集まるクラブの現場とは異なるものではあるが、そこにはオルタナティヴな魅力が存在するとともに配信する側のクラブカルチャーに対する愛情も強く込められている。

リアルとVRという立場の違いはあれど、この2つは基本的に"別物でありながらも同じもの"だ。そんな現在進行中で進化するDJ配信に対するお互いの考えや想いについて、鈴木氏と0b4k3氏の2人に語り合ってもらった。

目次

  1. 仮想空間にクラブをつくった理由
  2. 配信ではコメント欄が”現場”
  3. 配信で熱量を伝えるには
  4. DJ配信はクラブの収益に直結しない?

仮想空間にクラブをつくった理由

──0b4k3さんがVRChatの中でクラブをつくろうと考えたきっかけはなんだったのでしょう?

0b4k3 もともと私は曲をつくっていたので、VRChatで何か音楽を使った、自分のスキルが活かせる面白い創作ができないかなとぼんやりと考えていました。

そんな時にVRDJの先駆者として知られるDJ SHARPNEL氏が、VRChatでクラブを制作して、そこで実際にDJをプレイをするという、とても楽しそうなことをされていたので、私もそれに感化されて始めました。

DJ SHARPNEL HARDTEK / GABBERDISCO / FRENCHCORE SET at #warp2onelive 2020.4.16

──GHOSTCLUBの世界観づくりでこだわったのはどのような部分でしょうか?

0b4k3 ディテールと空気感です。

単なるクラブをつくるのではなく、クラブが存在する世界の質感や空気まで考えて制作しているので、高い没入感と濃密な体験が得られる空間に仕上がっていると思います。

実はあまりリアルのクラブには行ったことがないので、BerghainやTresorやPrintworksのような見た目が好きなクラブを参考にしたり、私が好きな『攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL』や『ブレードランナー』を参考にして制作をしています。

鈴木 実際のクラブや映画を参考にして制作したんですね。

0b4k3 そうですね。参考にした実在するクラブや映画は空間や建築、流れている空気や時間、ディテールがとても好きでした。

現実に存在するクラブのディテールを持ち込みつつ、そこに映画のようなフィクションから持ち込んだモチーフを混ぜ合わせて面白い空間をつくることができるのは、バーチャルならではなのかもしれませんね。

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撮影:0b4k3

VRChatには様々なタイプのクラブが存在していますが、初見時のインパクトを大きくすることを重視して、"ザ・VR"みたいな、派手な表現をしているクラブも少なくありません。もちろん、それはそれで良いのですが、クラブは継続的に遊びに行けるような場所の方がいいと思っています

最初のインパクトも大切ですが、1回だけ遊びに行って終わり、みたいな感じだとクラブとしてはうまく機能していないように思います。そういった時にリアルのクラブや映画を参考にすることで、説得力のある空間になり、何度も通いたくなるような場所になるのかなと考えています。

──それではお二人がDJ配信を始めたのはなぜですか?

鈴木 コロナ禍の影響でお客様を入れられない状況になってしまったので、その時にできることの選択肢としてTwitchを利用したDJ配信に取り組んできました。

ただ、実はその1年ぐらい前からTwitchさんに声をかけてもらい、アカウントを作成してちょこちょこ配信をしていました。そのこともあってコロナ禍をきっかけにDJ配信を始めた他のクラブよりは、すんなりと配信に入れたというのはありますね。

コロナ禍になって、系列の3店舗(VUENOS、Glad、LOUNGE NEO)の閉店が決まり、最後に閉店までの17日間、LOUNGE NEOで毎日DJ配信をしてみたところ、ものすごい反響がありました。色々な人に見ていただけたことでフォロワーも増えて。

LOUNGE NEO最終日の配信に映る、鈴木さん

LOUNGE NEO最終日の配信に映る鈴木将さん

0b4k3 私もVRChatを始める以前からTwitchなどでDJ配信をしていました。配信されているクラブイベントもいくつか見ていました。そういったイベントは地方住みなのですごくありがたかったですね。

実際に配信イベントを見てそのクラブに行ってみたいと思うこともありましたし、私の周りにも同じ様に考えていた人が何人か居ました。

ただ、VRChatを始めてからは配信だけだと物足りなさを感じるようになりました。配信越しにDJをすると、オーディエンスからの反応がテキストや視聴者数といったものに還元されてしまいがちです。現実のクラブであれば歓声が上がったり、フロアで踊っている人々の様子が見えて、その熱量が直接伝わってきますよね。しかし、テキストや視聴者数のみだと、実際にはそうではないのかもしれませんが、どこか理性的な冷めた反応に見えてしまうんです。

でも、VRクラブだと配信のみのDJイベントと比較して感じられる熱量が全然違う。負荷の問題でお客さんをたくさん入れることができない、というような問題もありますが、それでもネットを介して、ここまでお互いの熱量を感じることができる事実はとても素晴らしいですし、感動します。

なのでVRでイベントを開催する魅力に取り憑かれてしまってからは、配信に対する興味は段々薄れていって、今はVR内でのイベントに集中するようになりましたね。

鈴木 僕の方でも配信から店舗へのフィードバックがちゃんとあります。例えば、配信を見てクラブに遊びにきていただけるお客様もたくさんいますし、配信内でのコミュニティもでき上がっています。それと配信を見てくれる人の間でのコミュニケーションもあるようで、そのオフ会の場としてリアルのクラブが選ばれているというのが現状ですね。

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配信ではコメント欄が”現場”

──最近では、配信ライブはリアルライブとMVの中間のような存在だと捉えているアーティストの発言も耳にします。

鈴木 例えば、DJ配信とリアルのDJ現場では温度感の伝わり方の違いはどうしてもあるので、DJ側も配信は現場とは別物として捉えています。

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