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  • 2021.08.04

カグラナナインタビュー イラストレーター兼Vアーティスト、ジャンルも海も越えて

ジャンルと言語圏、個人勢とアーティスト。

Vアーティスト・カグラナナの境界に囚われない活動を支える原動力とは。

カグラナナインタビュー イラストレーター兼Vアーティスト、ジャンルも海も越えて

2017年から猛烈な勢いで成長を遂げるバーチャルYouTuber(VTuber)文化。

その流行は日本を出て海外まで波及し、英語圏や中国語圏などでも広まりを見せている。

そんなムーブメントの最前線を駆けるのがVアーティスト・カグラナナである。

イラストレーター・ななかぐらとしてライトノベルのイラストや、ホロライブ所属「百鬼あやめ」を始めとしたVTuberのデザインを手掛ける一方、自身もVアーティストとして活動。

いわゆる個人勢として動画投稿をおこないながら、superecellやkz(livetune)、EGOISTらを擁する事務所・インクストゥエンターに所属。最近では歌手としてもTVアニメ『探偵はもう死んでいる』のEDテーマ「鼓動」を担当するなどマルチな才能を発揮するクリエイターだ。

その活動は国境を越え、特に中国・bilibiliでのチャンネル登録数は180万人と、同サイトでのバーチャル配信者としてもトップクラスの人気を集めている。

幅広いジャンル・国境を越えて活動する彼女を支えるのはファンの存在。そもそも、bilibiliで活動を始めたきっかけも、「字幕組」と呼ばれる熱心な現地のファンたちによる、日本では考えられない行動からだったという。一方、一つの領域に留まらない活動ゆえに彼女ならではの悩みもある。

ジャンルと国、個人勢とアーティスト。それぞれの境界に囚われないマルチな活動。そこにある苦悩と矜持、原動力とは。

目次

  1. 武道に打ち込んだ学生時代と、イラストレーター「ななかぐら」となるまで
  2. ライトノベルとVTuberとのデザインの違い
  3. Vアーティスト「カグラナナ」が生まれるまで
  4. 親としてのデザイン/自身のデザインの違い
  5. 個人勢/アーティスト、それぞれの活動
  6. bilibiliの文化とファンコミュニティ
  7. 現地での活動を支える字幕組の存在
  8. イラストレーターだけをやっていたら絶対に味わえない体験
  9. マルチなクリエイティブを支える好奇心

武道に打ち込んだ学生時代と、イラストレーター「ななかぐら」となるまで

──早速ですが、イラストを描き始めたきっかけを教えてください。

カグラナナ らくがき程度に描き始めたのは幼稚園の頃からですね。ドラえもんをひたすら描いてました!

いわゆるアニメ絵的なイラストを描き始めたのは、深夜アニメを見始めた中学1~2年くらいからです。最初の頃に描いてたのは……『ローゼンメイデン』(原作:PEACH-PIT)の真紅ちゃんですかね。

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美少女キャラクター界のゴスロリやドール趣味の火付け役ともなった、球体関節人形のキャラクター/『ローゼンメイデン』1巻 Via Amazon

カグラナナ そこから『週刊少年ジャンプ』の作品にハマり始めたので、男性キャラばかり描いていた時期もありました。『家庭教師ヒットマンREBORN!』(原作:天野明)のキャラクターの雲雀恭弥をすごく好きになったりして。けど、当時のイラストは色塗りもしていない、授業中ノートの隅に描くようなものでした。ただ、高校に進学してからは7年間くらい武道に打ち込んでいました!

少林寺拳法と躰道の型などを披露している、3Dお披露目配信

カグラナナ 武道に打ち込んでいた間は一切イラストを描かなくなりました。ただ、アニメや漫画、ゲームは好きだったので当時も触れ続けてはいました。

武道が落ち着いてからは、またイラストを描き始めたんです。その時は「デジタルで描いてみたいな」と思って、いきなり液晶タブレットを買ってみたんですね。そうしたら「あ、デジタル絵楽しいな」って。

今まで紙ばっかりだったから「こんなに自由に消したりバランスの調整ができるんだ。こんなにたくさん色が使えるし自由に塗れるんだ!」って感動して、どんどんデジタルにハマっていったんです。その時はpixivすら知らなかったので、絵を描いたらまずTwitterに投稿して。pixivを知ってからは、ちょこちょこそちらにも上げるようになりました。

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2015年にpixivに投稿されたイラスト

──そのころコミケに参加したのが、商業へのきっかけになったとか。

カグラナナ そうなんです。Twitterでイラストを投稿するようになってから絵描きのお友達も増えてきて。最初はコミケがどういうものかすら知りませんでした(笑)!

そのお友達とのSkypeグループもできていたんですが、グループの中にはコミケとか即売会に何回も出られている方もいて、その人から「出てみなよ」と誘われたんです。いろいろ周りに聞きながら準備して思い切って参加してみました。

その時は「艦これ」の同人誌だったんですけど、最初なので本当に不安で……。「私のスペースに誰も来てくれないんじゃないか」と不安なあまり、イラスト本と漫画本を一冊ずつ出してみました。そうしたら結構人も来てくださって。

その中に企業さんがいらっしゃって、「うちで描いてくれませんか」って名刺をくださったんです。そこから一番最初のお仕事に繋がって……っていう感じです。私も知っているゲームの企業さんだったので、そんなすごいところからお仕事をいただけた嬉しさで「もっとたくさん絵を描こう!」とどんどん絵を上げていってたら、ちょこちょこお仕事をいただけるようになりました。

それでフリーランスのイラストレーターとして活動を始めて、最初にイラストのお仕事を受けた頃はバイトもしながらでした。イラストの学校へ行っていたことも講座を受けたこともないので、絵の描き方に関する知識ゼロで……試行錯誤の日々でした。

ライトノベルとVTuberとのデザインの違い

──2018年からはVTuberのデザインを、ホロライブの「百鬼あやめ」さんで初めて担当されることになります。それまでライトノベルなどで体験されたキャラクターデザインとの違いを教えていただけますか?

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「ななかぐら」としてイラストを手がけた『何度でも何度でも懲りずに、君を好きになるラブコメ。』Via Amazon

カグラナナ ライトノベルの時は、元になる原稿をいただいてからのデザイン作業になるので、どんなキャラクターなのかを掴めるまで小説を読み込みます。それから指示書で求められている姿と照らし合わせながら、それを再現できるように意識しています。そのため、あまり自分の絵の趣味特徴を出しすぎないように、という意識もしてますね。

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VTuberデザインはシルエットに気を配る