Interview

Series

  • 2022.07.29

そらる「やめたくなったらやめてもいい」歌い手に聞く“現在地”

そらる「やめたくなったらやめてもいい」歌い手に聞く“現在地”

クリエイター

この記事の制作者たち

数々の先駆者たちの躍進があり、「歌い手」や「歌ってみた」は今やポップなカルチャ―として、世の中から知られつつある。ボーカロイドカルチャー同様、実家であるニコニコ動画を飛び出し、YouTubeやTikTokなど様々な配信プラットフォームへと広がりを見せている。2021年にはまふまふさんが歌い手として「NHK 紅白歌合戦」に出場したことで、その認知はお茶の間にも至った。

広がったと言っても、その歴史は15年ほど。エンタメのジャンルとしてはまだまだ若く、初期に活動をスタートさせた先駆者たちが、プレイヤーとして第一線で活躍しているような世界だ。

彼らに感化され、後を追う若い世代も生まれている。歌い手という存在の多様化が進み、ともすれば混沌を極めている中、インターネットで生きていく上で道しるべになる記事があれば──そんな思いで、歌い手のキャリア観を追う連載を企画した。歌い手に限らず、インターネットでクリエイティブな活動をする若い世代の将来観が、少しでも明るくなるような記事を目指している。

一本目は、そらるさんにお話をうかがう。2008年にデビューし、幕張メッセや横浜アリーナなどでワンマンライブの実績があるほか、まふまふさんとのユニット「After the Rain」も圧倒的人気を誇る。

歌ってみたにおける表現力と、界隈の中でも実直で安定した活動スタイルに定評があり、現在全国7箇所を巡るツアー「SORARU LIVE TOUR 2022 -青空とメルヒェン讃歌-」の真っただ中だ。

今回の取材で、そらるさんは「やめたくなったらやめてもいい」と繰り返した。その言葉の真意と、そらるさんの活動に通底する「らしさ」の正体に迫る。

目次

  1. 少しずつ受け入れられていった「歌い手」
  2. 何百人といなくなる中で「自分がおかしいんだな」
  3. ネット出身者ばかりがスキャンダルを起こしているわけではない
  4. コロナ禍がもたらしたもの
  5. かつての歌い手カルチャーが経た道のりを歩んでいる、VTuberカルチャー
  6. やっていること1つひとつを、より良くしていく

少しずつ受け入れられていった「歌い手」

──歌い手のカルチャーは世間一般的にもかなり浸透してきて、物珍しく見られることも減っているのではないかと思います。そらるさんの視点で、そうした変化は感じていますか。

そらる 歌い手としてなのか、そらる個人としての感覚なのか曖昧なところではありますが……以前は歌い手がタイアップだったり、大きく露出したりすると一部のネット上で荒れてしまうような時期がありました。それ以前だと、CDを出したりライブをしたりするだけで叩かれることがあって。みんなが活動を頑張る中で、少しずつ受け入れられていったのかなと思っています。

「アンチ」というと少し乱暴ですけど、ボーカロイドや歌い手に対して、特に理由もないけどよく思っていなかった層が結構いた気がするんです。それが薄れていって、「ああ歌い手ね、いるよね」ぐらいの雰囲気になった感じはありますね。今も好きな人・嫌いな人はいると思うんですけど、そんなに珍しいものではなくなったというか。

──そのゆるやかな変化は、どういった場面で実感されていますか?

そらる 一般的な認知のされ方もそうですし、自分が別の界隈に顔を出したときに、昔に比べて好印象を持った状態で受け入れてもらえることが増えたかなと。人と一緒に配信をするときや、イベントに出させてもらうときも、あまり悪く捉える人がいなくて。昔は「歌い手かよ」みたいに見られるのが当たり前だったんですけど、「あ、そらるさん来てくれたんだ」ぐらいに受け入れられている感じはあります。

今はむしろVTuber(バーチャルYouTuber)が新しい文化として出てきて、昔の歌い手界隈と似たような感じで、理由なく嫌悪感を持っている人がいる印象です。それも同じように、これから徐々に受け入れられていくんだと思いますけど。

──そらるさんは丸14年活動されてきて、本当に充実された期間だったとは思いますが、一度でも引退が頭をよぎったことはありますか?

そらる 「やめたくてやめたくてしょうがない」と思ったことは、多分ないです。むしろ、「いつやめてもいい」と常に思っていて。悩んだり、嫌だなって思ったりすることはその時々であって、そういうときに「でも好きで始めたことだし、やり続けるのは大変だけど、やめるのは別にいつでもできるしな」って思うんですよね。

──「悩んだり」とのことですが、そらるさんはどういうポイントで悩むんでしょうか?

  • 800本以上のオリジナルコンテンツを読み放題

  • KAI-YOUすべてのサービスを広告なしで楽しめる

  • KAI-YOU Discordコミュニティへの参加

  • メンバー限定オンラインイベントや先行特典も

  • ポップなトピックを大解剖! 限定ラジオ番組の視聴

※初回登録の方に限り、無料お試し期間中に解約した場合、料金は一切かかりません。

法人向けプランはこちら
10日間無料でおためし