壱百満天原サロメ襲来ですわ~! 大石昌良、お嬢様を目指す一般人女性に出会う
2022.12.29
安倍晋三銃撃事件に端を発した旧統一教会問題──オウム以来、これほど“宗教”が取り沙汰された年はなかった。
そんな2022年に邂逅したのは、かたや、幸福の科学2世信者でラッパーというあらゆる意味で異端のItaq。かたや、男性で現代魔女という異端中の異端である音楽家の小松成彰。2人の対話を通した“音楽とスピリチュアル”対談の前編。
聞き手は、ニートtokyoのインタビュアーとしてお馴染みの山田文大。
クリエイター
この記事の制作者たち
「宗教2世」という語が大きな意味を持つ原稿をまとめていると、年末ということもあり「今年ならではの(一年の締めくくりを感じる)仕事」となんとなく思う。
宗教の話なので一言では言い表せないが、この対談に関して言えば「めちゃめちゃおもしろかった」に尽きる。
筋金入りの幸福の科学信者であるラッパーのItaqさんが教団と距離を置いている理由について話すのを、“DIY宗教”を掲げ六芒星の刺繍が入った服を着た魔女・小松成彰(コマツナリアキ)さんが真剣に聞く。その空気が最高だった。
この対話に「多様性」という言葉はまったく出てきていないが、2人の話は多様性について考える良い機会だと思う。
目次
- 日本の魔女集団に所属する音楽家・小松成彰
- 魔女の条件は、成人でインターネットが扱えること?
- 魔女とは、自らの安らぎのために儀式をデザインする“DIY宗教”である
- 幸福の科学は、大川隆法によるサンプリング宗教?
- 最近、幸福の科学がパンダを尊い動物としている理由
- 肝心なのは、自分の中に「黄金のライン」を見つけること
- 究極の問い──それはデザインなのか? 真理なのか?
小松成彰さんとの対談は、Itaqからのたっての希望で決まった。
編集長からきたメールの一文には「小松成彰さんは、日本の魔女団体に所属しながら音楽をされている方」だと。まず「魔女って男もなれるんだ」と思い、そのあと「魔女?」となった。YouTubeのタイトルなら絶対に「宗教2世VS魔女」。ただ、内容はとても真面目だ。
ぶっちゃけた内容というよりは、2人が普段していること、考えていることについて素の状態で話している。だから余計にぶっちゃけている部分もあるが、それはさておき。
以下、小松さんプロフィールの抜粋(※詳細は欄外)。
横浜中華街で占い師としてキャリアを積み徐々に魔術・魔女術の実践に興味を持つ。2014年に東京リチュアル主催魔術男子逸脱グランプリにて、雨乞い部門、悪魔召喚部門で優勝。2019年より現代魔女術実践家・谷崎榴美が設立した現代縄文魔女術実践集団UPHYCA(以下「ウフィカ」)に女性以外の人たちを受け入れる『ふたたま講(Two spirits Ko)』が発足したのをきっかけに、UPHYCAに参入し現在に至る。社会において周縁に位置する魔女。その魔女のコミュニティの中でもさらに周縁に位置する男性の魔女。そのような二重の周縁の重なり合う場所から現代魔女・魔術シーンを見つめ、日々、実践、模索をおこなっている
小松成彰
──聞きたいことが渋滞しているのですが、お二人の出会いから順を追って聞かせてください。
Itaq 小松さんと知り合ったのはTwitterです。
そもそも小松さんが所属している魔女の団体にも興味があって。『Chants』というアルバムにそれが受け継がれているということで、石神井にある小松さんのご自宅に行かせてもらってお会いしました。
祭壇を見せていただいたりとかして、「ちょっと曲をつくってみますか」と。それで、小松さんが温めていたアコギのリフのアイディアがあって、iPhoneのボイスメモを使ってその場で録りました。それが最初の出会いですね。
──話を進める前に、まず「魔女」について解説をお願いしたいです。そもそも魔女である小松さんは普段どういう生活をされているのでしょうか?
小松成彰 普段はヘルパーの仕事をしています。精神・知的障害のある方の、重度訪問介護の支援制度を利用した自立生活の支援ですね。
それ以外の活動としては、ヒプノセラピー……“催眠療法”というものがあるんですけど、それはリラックスした状態で自分が(潜在的に)思っていることだったり自分の想像力だったりを発揮してもらって、クライアント本人にいろいろ話してもらう、という形で進めていくセラピーです。私はその資格を持っているので、それを自宅の一室、Itaqさんが来てくれた祭壇がある部屋でやっています。
魔女については、なかなか言葉だけじゃ説明できないところが多いんですよね……。まず私が男性である、ということがあります。魔女の歴史を見ていくと男性の魔女は普通にいるのですが、同時に、魔女という文化に初めて触れるとき、男性でも「魔女」と呼ぶのかっていう違和感は当然あると思います。なので私自身も、どこまでいっても完全に内部の人間ではないという意識はどこかで持っていますね。
Itaq ああ、白人がヒップホップやるときの気持ちみたいな。
小松成彰 そうかもしれないですね。魔女って世界的にもマイノリティで、そのなかの男性というのは、二重の意味で……なんというかすごい周縁というか。そういう二つの周縁の重なり合う場所から世界を眺めているのが私という感じです。
魔女は一人一宗派とも言われていて、魔女の数だけ魔女のイメージや世界観があると言っていいと思います。だから、魔女とは何かを一言で説明するのはとても困難です。なので、例えばインスタで魔女と検索するといろんな魔女に関する画像とか出てくるんですけど、そういうのを見てもらって、まず雰囲気を感じてもらう方がいいかもしれないと思います。
──魔女になる条件のようなものはあるのですか?
小松成彰 魔女になるのに必要な条件というのはありません。誰でもなれると考えています。以前会った魔女のDennisは「私は魔女だ」と3回唱えたら、あなたは魔女だと言っていました。
ウフィカ(小松さんが所属する魔女団体)に関しては、成人でインターネットが扱える人であればOKです。そのほかに個人的に重要だと思うことは、心身の健康を保つ努力をすることですね。これはすごい大事だと思います。やっぱり自分の霊的な感覚にアクセスしていく中で、サイキック状態になって心身のバランスが崩れるというのはあることなので。
──成人済みでインターネットを使えるというのは、それほどハードルは高くない気がするのですが。
小松成彰 ウフィカではメンバーを「巫女」と呼ぶのですが、新しくウフィカの巫女になりたい場合は募集期間があって、それは通常、夏至と冬至の「ひあそび講」の後の数週間と定められています。
募集期間にその条件に当てはまる人は、その後「炎の夢を見る」という課題が与えられます。この「炎の夢を見る」というイニシエーションを通過するまでは仮入団状態となります。
──小松さんは炎の夢を見たんですか?
小松成彰 自分の体験で言うと、炎が左目に入ってくるイメージの夢でした。これは「自分の中では」という話でよくて、「こういう炎じゃないとダメ」みたいな条件はありません。
※ひあそび講 年に二度の巫女のつどい。冬至と夏至にひらかれる会。うたしぐさ占いと手仕事などを行う。未来半年間の神託文を受け取り、過去半年分の神託文を振り返る。講後の数週間が新規巫女の募集期間となる
小松成彰 自分の中で魔女は“DIY宗教”というか……例えば日々の生活の中で、ちょっと悲しい気持ちになったり、または自分の中でお祝いしたい気持ちになったりとか、いろんな気持ちが湧くことがありますよね。そういうときに自分でその気持ちにアプローチする方法や儀式──その気持ちを昇華する行為ならなんでもいいんです──を自分でデザインして、実際にやってみることができるのが、魔女の面白いところです。
ウフィカに関して話すと、日本を含む環太平洋火山帯文化全域の女性の古の宗教を再構築することを目指しています。また、ウフィカの手仕事のモチーフの多くは縄文土器からインスパイアされました。集まった巫女たちによって自然と宗教がデザインされていく感覚というのは自分にとってとてもしっくりときたんです。
そして、自分は縁あって今、ふたたまの巫女としてウフィカに参加していますが、ここが私の魔女の道の最終地点ではないとも感じています。サンプリングという言い方でいいのかはわからないんですが、自分の好きなものや興味のあることを少しずつパッチワークして──折衷派と言ったりするんですけど──自分なりの魔術的な世界観をつくっていくのはこれからもずっと続けていくと思います。
──不謹慎な例かもしれませんが、パチンコを打つ前に喫茶店でナポリタンを食べると勝てるというジンクスを持っている人がいるとします。そういうジンクスとその「DIY宗教」は、何が違うんでしょうか?
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