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  • 2022.12.22

バズの欲望からの退避 ダ・ヴィンチ・恐山のDiscord「みんなで集まりま専科」を考える

想像してみてください……
……ここは学校のクラブにも、ゲーミンググループにも、世界規模のアート・コミュニティにも参加できてしまう場所。あるいは、身近な友達とのんびりするだけでもOKな場所。毎日話して、いっぱい集まることが、もっと簡単になる場所なのです。 ──Discord ホーム画面より

バズの欲望からの退避 ダ・ヴィンチ・恐山のDiscord「みんなで集まりま専科」を考える

クリエイター

この記事の制作者たち

インディペンデントカルチャーを支えるプラットフォーム・Discordを探訪する本連載。

ときどき、筆者は人に会うと「なんのサーバーに入ってる?」と聞くことがある。誰かのサーバー一覧を覗くことは、誰かの本棚を眺めるようなものでなかなか楽しい。

背表紙から「意外とミステリも読むんだな」など知れるように、「hyperpop結構聞いてるんだな……お、けっこうオーセンティックなところまで……」とか、想像を膨らませれば人となりまで連なる嗜好の一端を、参加するサーバーに見るわけである。

上のようなリサーチは、筆者の周囲のゲームファンや音楽好き、また一般大学生などに行っているが(おおかた10代から20代の日本人男性に限られるし、リサーチといえるほど厳密なものではない)、十人十色のバラついた嗜好を横断して、頻繁に目にするサーバーがある。

それは「みんなで集まりま専科」というサーバーだ。

目次

  1. Discordサーバー「みんなで集まりま専科」とは何か?
  2. “フラットだった頃のインターネット”は今どこに?
  3. 文化実践は「小文字の為政者=鯖主」の手に
  4. アルゴリズム的「面白さ」にもう飽きた
  5. 「参加文化」──ファンコミュニティが生み出すもの
  6. 「インターネット的」はドアの向こうに

Discordサーバー「みんなで集まりま専科」とは何か?

実に3万5千人ほどの"みんな"が"集まって"いるこのコミュニティは、ライター/小説家のダ・ヴィンチ・恐山品田遊(以下、恐山)が主宰している。一体どんなサーバーなのか、まずは主宰の言を引いてみよう。

さて、さっぱりわからない。連載の初回で念を押したように、Discordサーバーは双眼鏡で覗くことのできない、独自の生態系を持つ孤島だ。背表紙だけを見て理解したつもりになる者への誹りは、ここでも有効である。

では「みんなで集まりま専科」の"目次"をパラパラと眺めてみよう。そこには100以上のチャンネルが乱立している──「いいアイデア」「人工の知能」「いらない写真」「アイのドル」「麻雀」「ニュー速vip」「全身かじり虫」「逆転マリモ」……。

いや、なおさらわからない(目次だけ読んで知ったふりをする者も同様に愚かだ)。

筆者の印象を述べれば、ここには、かつてあった“特定のインターネット文化を覆っていたある種のトーン”が共有されている。そのヒントとなり得るのは、前回DJ SHARPNEL(敬称略)が指摘した「インターネット・ベースの関係性」であるように思う。

大まかに言ってしまえば、国内のインターネット・コミュニティ史において、mixiからTwitter・Facebookへの移行は「プライベート」から「パブリック」への転換であり、スマホを媒介にすべてが開かれ、接続される変容だった(事実として、一定のプラットフォームに情報が収斂することでそれが果たされた)。

そんな中登場したDiscordはプライベートな密室であり、あたかも時代を逆行するように見えるが、たとえばmixiと異なるのは、構築される関係性の多くが「インターネット・ベース」にある点にある。

その意味において、「みんなで集まりま専科」は実に「インターネット的」であるといえよう。現実のソーシャルグラフを転写するわけでもなく、趣味的領域のコンテクストを前提とするわけでもなく、「インターネット的なトーン」を共有することで緩やかな連帯を形作っている。

──では、「インターネット的」とは何か? 本稿では、Discord文化にも纏いつくその曖昧なワードを精査すべく、恐山に話を伺った。

“フラットだった頃のインターネット”は今どこに?

まずは恐山について来歴を確認しておこう。

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「挨拶をするな」「個の認識をするな」特殊な恐山サーバーの規律