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  • 2022.12.24

それは人生の理想形ではないか──『マダミス狂気山脈』『リアル脱出ゲーム』脳

世界は、自分の手で克服可能か?

もと「ぼくのりりっくのぼうよみ」にして、現在Diosを率いるたなか。大のゲーム好きなたなかのゲーム脳の内側とは──

Photo By タマイシンゴ (Tamaishingo)

それは人生の理想形ではないか──『マダミス狂気山脈』『リアル脱出ゲーム』脳

クリエイター

この記事の制作者たち

一時期リアル脱出ゲームにめちゃくちゃハマっていた。狭い部屋に閉じ込められ、その中を捜索して謎を見つけ出して解くことで脱出するというアレだ。公演ごとにストーリーがあり、時には沈みゆく豪華客船、ある時は囚人として、プレイヤーは謎に向き合う。

とくに印象深いのは「君は明日と消えていった」だった。ぼくりりの曲がエンディングに使われているのもあるが、ストーリーが良すぎてやばいのだ。亡くなったはずの幼なじみの女の子からある日手紙が届いて、その謎を解いていくと思わぬ真実を発見するという、マジ感動系のリアル脱出ゲームだ。

そこから爆ハマりして、いろんな友達を誘って週1の頻度で通っていた。

※3P目以降には、マダミス「狂気山脈」のネタバレを含みます

目次

  1. 世界そのものを服従させる──リアル脱出ゲームのこと
  2. リアル脱出ゲームにおける秩序のルール
  3. 世界を自分の手で克服する、という欲望
  4. 「マダミス」初体験ながら……
  5. 「リアル脱出ゲーム」と「マダミス」決定的に異なる点

世界そのものを服従させる──リアル脱出ゲームのこと

リアル脱出ゲームのいちばん好きなところは、不条理でないところだ。

隠された手がかりを適切に探し出し、見つかった情報を丁寧に整理して考えれば、絶対に解けるようにつくられている。制作者によってとてつもなく考えてつくられた公演なので、論理的破綻がないのだ。

現実でぼくらが向き合う課題は、そういう風にはできていない。様々な人間の思惑が絡み合って、時には天候に左右されたりもするし、俯瞰して分析しきることができない、世界のあり方をコントロールすることなんてできない。カオスの結果として出力された現実に対処するような生き方しかできない。

もちろんその中で自分の願望を実現するために努力する、行動することは大切だ。だけど、100点の正解はどこにもない。別の選択肢を選んだ場合の世界を覗き見ることはできない。

どれだけ優れたアイディアでも、世間に出すタイミングとずれていればまったく評価されなかったり、批評的にはぜんぜん良くないものが多くの人に支持されたりする。すべてが数字で管理できるような、意味通りの秩序は世界に存在し得ない。

人間の気分みたいな曖昧なゆらぎの積み重ねで出来上がっているものに、どうにかして首輪をつけて飼い馴らすのがぼくらの社会だ。すこし吠えたりもするが、なんとか決められたルートで散歩させている。

正解を出す爽快感というものを味わいにくい世界にぼくらは暮らしている。リアル脱出ゲームの世界では、正解が決まっている。目の前の世界の裏側にはたしかに制作者がいて、あらゆる記述、あらゆる物体に彼ないし彼女の意図が反映されている。そういう意味で「公正な」勝負である。

そこに至る道はいくつかあれど、確たる正しさが閃きや理屈で導き出せることの喜びといったら。世界の構造を理解し攻略するというのはある意味で、世界そのものを服従させるということだ

リアル脱出ゲームにおける秩序のルール

脱出ゲームには秩序がある。ということはつまり、定番の構造・型のようなものがある。映画でいう3幕構成みたいに。それを理解してから脱出成功の確率がめちゃ上がった。

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